今回のテーマは、マーケティングでの顧客理解です。
✓ この記事でわかること
- [事例 1] レノボの期間限定 b8ta ポップアップストア
- [事例 2] 化粧品ブランド 「セフォラ」 のデジタル施策
- 2つの事例の共通点とは?
- マーケティングに学べること
おもしろいと思った2つの事例をご紹介し、共通する本質を掘り下げます。そこからマーケティングに学べることを解説していきます。
よかったら最後までぜひ読んでみてください。
レノボの期間限定ポップアップストア
1つ目の事例でご紹介したいのがレノボのお店です。こちらの記事から。
レノボが Z 世代にアピール - b8ta 内の期間限定ストアで情報収集|日経クロストレンド
b8ta での体験型店舗
レノボ・ジャパンが2021年12月1日に、レノボのノートパソコンを体験できる 「Yoga ポップアップストア」 をオープンしました。
12月31日までの期間限定で、場所は東京・新宿の 「b8ta Tokyo - Shinjuku Marui」 の中でした (b8ta はベータと読みます) 。
ポップアップストアを限定オープンした狙いは、普段は家電量販店にあまり足を運ばない若年層のブランド認知と向上とのことです。
来店者の声を活用
以下は日経クロストレンドの記事からの引用です。
b8ta ストアでの展示は、マーケティング上でも大きなメリットがある。
b8ta ストアからは、来店した客の年齢層や製品のどこに興味を持ち、どう試していたのか、どんな質問や感想があったのかなどのフィードバックが、店員を通じてレノボ側にもたらされる。天井カメラなどの定点観測から、どの製品を何分間触っていたのかなどのデータも提供される。
それらの情報を家電量販店にフィードバックすることで店頭販売に役立てたり、製品開発の参考にしたりすることができる。
「家電量販店によく来るようなお客さんのデータはわれわれも分かっていたが、b8ta ストアには、家電量販店に来ないようなお客さんが来る。そうしたお客さんのデータも取れるところが非常に大きい」 と越智氏は言う。
パソコンに詳しくない人や家電量販店にあまり足を運ばないような人、Z 世代を中心とした若い人などが、パソコンのどこに興味を持つのか、購入の決め手になるポイントはどこにあるのか、それらを探るのに b8ta ストアが適しているというわけだ。
レノボの狙いは、b8ta ストアへの来店者の声を商品開発やマーケティング、そして販売にも活用することです。
化粧品 「セフォラ」 のデジタル施策
続けて2つ目の事例です。フランスの化粧品ブランド 「セフォラ」 です。
知られざるデジマの達人・フランスのコスメ専門チェーン 「セフォラ」 の戦略を知っておくべき理由|DIAMOND Chain Store
出典: WWD
顧客とのつながりを重視
以下は DIAMOND Chain Store の記事からの引用です。
セフォラは自社のウェブサイトで “A leader in prestige omni-retail (オムニリテールのリーダー) “ を標榜しており、実際にデジタルを活用した顧客体験の向上に力を入れている。
そのなかで同社が重視するのは 「顧客とのつながり」 であり、「ポイントプログラム」 「コミュニティ」 「インフルエンサー」 の3つを核として、そこから取得した顧客データをビジネス上の資産として有効活用している。
まず、誰もが入れるポイントプログラム 「ビューティ・インサイダー (Beauty Insider) 」 は、単純に購入金額に対しポイントを付与するというものではない。購入金額に応じて 3 段階にランクが上がり、ランクに応じたセール時の割引率アップや購買時により多くのサンプルを貰えるなどの特典に加え、最上位ランクの “ROUGE (ルージュ) ” では限定イベントや先行販売などに参加できるようになる。
コミュニティの有効活用
セフォラはコミュニティをつくり、顧客の声を注意深く見ています。
再び引用です。
ビューティ・インサイダーの会員になると、専用アプリやウェブサイトを介してセフォラの 「コミュニティ」 に入ることができる。「オイリースキン (脂性肌) 」 「ドライスキン (乾燥肌) 」 「メンズメイクアップ」 といったさまざまなテーマのコミュニティがあり、それぞれで肌の悩みや化粧の仕方などについてユーザー同士で議論がなされている。
こうした場は得てして、声の大きな一部の熱狂的ファンがブランドや商品に対する愛、知識をひけらかす場と化してしまうケースも多々あるが、セフォラは 「よくある悩み」 ごとにグループ化することで、ユーザーが建設的に語れる場を提供している。
ここで重要なのは、これらのコミュニティが単なるユーザー同士の交流の場になっているわけではなく、書き込みの内容を通じてセフォラ側が 「顧客の悩み」 「商品の感想」 などのデータを取得している点である。これらのデータはウェブサイト上での商品レコメンドの手法や店舗でのコンサルティングの内容に生かされており、最終的に顧客体験の向上につながっているのである。
2つの事例の共通点
ここまでご紹介した、レノボとセフォラの共通点を掘り下げてみましょう。
共通するのは、直接の顧客接点を積極的につくり、顧客理解を深め、商品開発やマーケティングに活かしていることです。
レノボは、リアル店舗の b8ta (ベータ) に期間限定のポップアップストアをつくってまで、また、セフォラは手間のかかるコミュニティを運用しています。
リアルやデジタルを駆使しながら、既存顧客や見込み顧客の本音を少しでも知ろうとしているのです。
学べること
では最後に、2つの事例から学べることを整理してみましょう。
まとめると学びは2つです。
✓ マーケティングに学べること
- 直接の顧客接点をつくり、顧客の望みや不満、本音を理解する
- 顧客理解に基づいて、商品開発やマーケティングを展開する
それぞれ順番に補足しますね。
顧客接点からの顧客理解
顧客理解を受け身ではなく、自ら能動的に取りに行く姿勢が大切です。
また相手に訊く場合も、「何が欲しいですか?」 や 「これは買いたいですか?」 と尋ねても、本音は見えてきません (答えてくれない) 。そうではなく、振る舞いの観察、行間の読み解きや解釈から自分たちが自ら答えを見出すことが大事です。
そのためには、顧客が自ら話してくれたり、発信したくなる環境設計をするといいです。
例えばレノボのポップアップストアでは、顔認証機能、目線で操作する機能、席を離れるときに画面を自動ロックする機能などを体験できます。実際に使ってもらうことで、お客さんはパソコンのどこに興味を持つのか、購入の決め手になるポイントはどこにあるのかを見極めます。
セフォラは 「よくある悩み」 ごとにグループ化したコミュニティを作り、ユーザーが建設的に語れる場を提供しています。
顧客理解の活用
顧客を理解することは、全体プロセスで見ればまだ道半ばです。
理解した顧客ニーズやインサイトをビジネスに活かすところまでいけるかです。商品開発やコンセプトに反映する、リニューアルの参考にする、マーケティングコミュニケーションに取り入れるなどです。
顧客理解の情報は貴重ですが、一方で持っているだけでは宝の持ち腐れです。情報は活用し、マーケティングの成果につなげてこそなのです。
まとめ
今回はレノボとセフォラのリアルとデジタルの施策を取り上げ、学べることを見てきました。
最後にまとめです。
マーケティングに学べること
- 直接の顧客接点を能動的につくり、コミュニケーションから顧客の望みや不満、本音を理解する
- 顧客理解に基づいて、商品開発やマーケティングを展開する
顧客接点からの顧客理解
- 受け身ではなく、自ら能動的に取りに行く姿勢が大切
- 顧客が自ら話してくれたり、発信したくなる環境設計をする
- 振る舞いの観察、行間の読み解きや解釈から自分たちが自ら答えを見出そう
顧客理解の活用
- 顧客を理解することは、全体像で見ればまだ道半ば
- 顧客理解の情報は貴重だが、持っているだけでは宝の持ち腐れ
- 理解した顧客ニーズやインサイトを、商品開発やコンセプトに反映する、リニューアルの参考にする、マーケティングコミュニケーションに取り入れよう
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