投稿日 2022/01/09

LINE ミニアプリ活用事例に学ぶ、マーケティング DX の実現方法


今回のテーマは、DX とマーケティングです。

✓ この記事でわかること
  • LINE ミニアプリの活用事例2つ
  • 本質は 「顧客接点のデジタル化による価値創出」
  • 顧客接点のデジタル化とは?
  • どんな価値が生まれたのか?
  • マーケティング DX として学べること

興味深かった LINE のビジネスでの活用事例をご紹介し、マーケティングと DX に学べることを解説しています。

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

LINE ミニアプリの活用事例


ご紹介したいのは、LINE ミニアプリを使った活用事例です。DIGIDAY の記事からです。

LINE ミニアプリで 「効率化」 する、日本の飲食企業たち - 「ムゲン食堂」 と 「廚 菓子 くろぎ」 の場合|DIGIDAY

出典: DIGIDAY

では、どんな活用事例かを見ていきましょう。

行列とキャンセル問題の解消


以下は記事からの引用です。

2020年11月にオープンした 「廚 (くりや) 菓子 くろぎ」 は、東京・芝大門にある完全予約制の日本料理屋 「くろぎ」 などを運営する株式会社 KUROGI による和菓子カフェだ。同店舗で LINE ミニアプリの順番待ちシステムを導入したのは、夏になると人気のかき氷を求めて 100 人もの行列ができてしまうことがきっかけだった。

紙による記帳を採用していた際は、顧客の案内や行列の整備をするスタッフが必要であったこと、人的ミスが起きてしまうこと、さらに、待ち時間が読めずにキャンセルしてしまう顧客が多かったことなどが課題だった。90 組のうち 30 組がキャンセルする場合もあったという。

同システムは、顧客が店舗前に設置されたタブレットに人数を入力し、QR コード付きの整理券を発券。自身のスマートフォンで QR コードを読み取ると LINE ミニアプリが起動し、待ち状況が確認できる。入店できる時間が近づくと、LINE を通じてリマインドを受け取れる仕組みだ。清藤氏は、「カフェのメインターゲットが 20 ~ 30 代の女性なので、メールやショートメッセージよりも手軽で確実に、しかも無料で通知が送れる LINE は魅力的だった」 と話した。

導入後は、キャンセル率が従来の 30% から 15.8% へと大幅に減少。行列整備に必要だった人手も約 0.5 人分減らすことができ、「期待以上の効果が見られている」 という。

店内注文でお客さんの 「すいません」 を不要に


続けて、もう1つの LINE ミニアプリ活用事例もご紹介します。

京都・河原町に2020年8月にオープンした中華酒場 「ムゲン食堂」 が導入したのは、LINE ミニアプリのテーブルオーダーシステム。

紙のメニュー表についている QR コードを顧客がスマホで読み取ると、メニュー画面が表示されそのままテーブルで注文ができる。「写真付きで見やすく、注文履歴が確認できるところも便利だ」 と谷村氏。店舗側にとっても、「メニューの変更や情報更新もスムーズにできる」 と評価する。

 (中略)

モバイルオーダー導入後の1番の効果は、「顧客の『すみません』という言葉が不要になったということ」 と谷村氏。「我々の店舗は2階層なので、特に口頭注文だと、顧客が『すみません』というタイミングを聞き逃さないようスタッフがスタンバイし、顧客が注文に迷っている時もテーブルで待つ必要があった。

モバイルオーダーだと、顧客が都合のいいタイミングで注文でき、スタッフの待ち時間もない」 。注文受付業務が大幅に効率化できたことから、配置スタッフ数も従来の 6 人から 4 ~ 5 人に減らすことができた。

友だち登録数の増加


LINE ミニアプリの導入により、別の効果もありました。

2社とも LINE 友だちの獲得数が増加したとのとこです。お客さんが LINE ミニアプリを開いたとき、LINE 公式アカウントを友だち追加するオプションを表示しているので、そのまま友だち登録もしてくれるわけです。

来店促進への活用


友だち登録によって、LINE でのコミュニケーションにも活用しています。

 「廚 菓子 くろぎ」 では、 LINE 公式アカウントから新商品の案内を送信し、新商品の写真に 「メニューの詳細はこちら」 というテキストリンクをつけて案内をしています。

またお得なクーポン配信もして、来店や販促としても LINE を活用しています。


LINE ミニアプリ導入の本質


では、ここまで見てきた LINE ミニアプリの活用事例について、本質は何かを掘り下げてみます。

結論を一言で言えば、LINE ミニアプリ導入の本質は 「顧客接点のデジタル化による価値創出」 です。

顧客接点のデジタル化


順番に説明していくと、顧客接点とは今回の例で言えば、お店に来てくれた時 (行列も含む) 、店内での接客、LINE で送られてきた新メニューやクーポンを見ている時です。

以前はアナログで対応していたり、そもそもやっていませんでした。LINE ミニアプリを導入し、デジタルに変えたことで次で見ていくような価値につなげたのです。

価値創出


LINE ミニアプリ導入で生まれた価値は、大きく2つです。

1つ目はお客にとっての価値です。

✓ お客さんへの価値
  • 店の外で何十分も行列に並ばなくていい
  • 順番が来れば LINE で通知が来てすぐにお店に入れる
  • 店内が混雑していて店員に注文がしにくい状況でも、スマホの LINE から簡単に注文できる
  • お得な情報や新しいメニューが LINE に届く

もう1つの価値は、店側の従業員にとってです。

✓ お店への価値
  • 行列を整理する人手をかけなくてよく、お客からの注文は LINE で入り、その分の時間を他のことに使える
  • LINE でのお客との直接のコミュニケーションから再来店につなげたり、ファンにもなってもらえる

以上のように、LINE ミニアプリを導入し、顧客接点のデジタル化から価値を生み出しているのです。


学べること


では最後に、LINE ミニアプリ導入事例から学べることを整理してみましょう。

LINE の事例には、DX とは何か、DX を進める意味合いに学びがあります。というのも、ご紹介した事例は 「マーケティング DX 」 と見ることができるからです。

今回の文脈も踏まえると、DX の本質は 「事業や経営のコア領域をデジタル化し、ビジネスモデルを進化させること」 です。

事業のコア領域とは、ご紹介した事例に当てはめれば、サービス業での顧客接点です。具体的には、来店や店内での食事体験、普段からの情報発信やコミュニケーションのところです。

コア領域をデジタル化したことで、顧客体験と業務プロセスを進化させました。DX によって事業と人も変わり成長し、価値創出につなげています。

この意味で DX とは価値を提供するための手段です。LINE 導入などのデジタル化を目的にするような 「手段の目的化」 にならないよう注意が必要です。


まとめ


今回は、LINE ミニアプリでの活用事例から、マーケティングや DX に学べることを見てきました。

最後にまとめです。

LINE ミニアプリ活用の効果
  • お店の前に並ぶ行列とキャンセル問題の解消
  • 店内注文の効率化 (店員への 「すいません」 を不要に)
  • 友だち登録者へのコミュニケーション (例: 新メニュー紹介やクーポン配信)

LINE ミニアプリ導入の本質
  • 顧客接点のデジタル化による価値創出
  • サービス業の根幹である顧客接点に LINE を導入し、お客にも店側にも価値を生んでいる

学べること
  • DX とは、事業や経営のコア領域をデジタル化し、ビジネスモデルを進化させること
  • LINE ミニアプリ導入事例は 「マーケティング DX 」 と見ることができる
  • DX は価値提供の手段であり、「手段の目的化」 になってはいけない


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。