投稿日 2022/07/20

全員がもらえないコストコ会員誌。供給量絞りマーケティング

出典: コストコ

今回は、あえて供給量を絞ることによってお客さんへの価値をつくるという話です。

おもしろいと思ったコストコの事例を取り上げて、マーケティングに学べることを見ていきます。

✓ この記事でわかること
  • コストコの会員誌 「コストココネクション」 
  • あえて一部の会員にしか渡さない狙いとは?
  • 損して得取れな 「供給量絞り」 
  • 限定した特別感からの価値創出

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

コストコの会員誌


こちらの記事を読みました。

無料の会員誌がフリマアプリで売れる? コロナ禍で強さを見せたコストコのブランド戦略に迫る|DIAMOND Chain Store

コストコの会員誌 「Costco Connection (コストココネクション) 」 が人気を集めているとのことです。


コストココネクションはコストコ会員向けに隔月で年に6回発行される雑誌です。

興味深いのは紙の会員誌はコストコ会員の全員ではなく、一部会員にのみ渡されていることです。

コストコ倉庫店での会計時に配布されるが、「会員であれば全員が配布対象になるというわけではない」 と、担当者は話す。明確な基準については公開していないが、購入額や来店頻度などが一部判断基準となるようだ。

コストココネクションは紙媒体の発行と同時に Web 版も公開され、会員・非会員に関わらずバックナンバーを含めて自由に閲覧することができる。それにも関わらず、「実物 (紙媒体) を手に入れたい」 というコストコファンが多く見られることが特徴だ。

 「コストココネクションをもらう方法」 を独自に探ったブログなどが存在しており、またフリマアプリに出品されているケースも目立つ。

コストココネクションの内容は大きく3つのテーマがあります。

✓ コストココネクションのテーマ
  • コストコ商品のあるライフスタイルの提案。例えばクリスマスやバレンタインデーなど季節イベント向けのレシピ
  • 開発コンセプトなどを交えた商品紹介
  • コストコの企業理念のアピール

海外の卵料理レシピ (出典: DIAMOND Chain Store

電源タップや電球を紹介 (出典: DIAMOND Chain Store

コストココネクションの役割は会員誌を通じて食品・非食品を問わず広く商品を紹介し、さらに特別感を演出することでコストコの幅広い品揃えによりハマってもらうことです。たとえ一部の会員でも優良な会員の方々に読んでもらい、コストコへの来店や購入を促す狙いです。


コストココネクションの意味合い


結論から言うと、コストココネクションの本質は 「紙の会員誌のプレミアム化」 と見ました。

コストココネクションは無料で Web 上にも公開されており、Web ではコストコ会員ではなくても読めます。

そんな中で紙の会員誌は会員の全員ではなく、一部会員のみに渡すことで希少性を生み出しています。

この 「誰もがもらえるわけではない」 という特別感からプレミアム化しているわけです。「紙のコストココネクションの実物を手に入れたい」 というコストコファンがいたり、コストココネクションをもらう方法を紹介するブログ、メルカリで300円とかでに出品されています。

もともとコストコ自体が会員にならないと買い物ができないお店です。さらに紙の会員誌で限定感を出し、コストコ会員でいることのステータス感や購入意向を高めているのです。


学べること


では最後にコストココネクションから学べることを整理してみましょう。

一言で表現すれば、学びは 「供給量をあえて絞り、価値を高めよう」 です。

需要に対して求められる未満の商品やサービスしか供給しないことは、普通に考えれば機会損失です。

コストココネクションはこの原則に反することを意図的にやっています。供給量を絞り入手できた人に特別感を演出しているわけです。会員誌を楽しんでもらうだけではなくコストコへの来店や購入につながり、中には会員誌が欲しいがためにコストコで買いものをする人もいるでしょう。

紙の会員誌が欲しい人の全員に行き渡らない弊害はあるものの、コストコ全体で見ればお客さんのコストコ愛を深められたり、来店・売上増に貢献する 「損して得とれ」 ができているのです。

コストココネクションからの学びは 「自社商品・サービスの供給量を時にはあえて絞り、限定感や特別感をつくり出し、ファンでいてもらえるお客さんとの絆を深めよう」 です。


まとめ


今回はコストコの会員誌を取り上げ、マーケティングに学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

✓ 供給量絞りからの価値創出
  • 需要に対して求められる未満の商品やサービスしか供給しないことは機会損失が起こる
  • しかし時には供給量をあえて絞ることで入手した人には限定感や特別感を持ってもらい、ファンでいてもらえるお客さんとの絆を深めよう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。