投稿日 2022/07/13

徹底した子ども目線のキャンプ場。「Stay foolish」 からアイデアを生み出す方法


今回のテーマはアイデアを生み出す方法です。

子ども目線など良い意味で素人の視点になり、Stay foolish になることでアイデアをどうやって考えるかを見ていきます。

✓ この記事でわかること
  • 子ども目線を徹底するキャンプ場
  • 上級者の当たり前、初級者の不都合
  • 知らず知らずのうちに上級者目線になってしまう弊害
  • 「Stay foolish」 でアイデアを生み出す方法

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

異色なキャンプ場


日経新聞に異色なキャンプ場が紹介されていました。

子ども重視を徹底


以下は記事からの引用です。

自然あふれる高知では近年、スノーピークやモンベル (大阪市) などアウトドア大手が手掛ける宿泊施設が増えている。しかしロゴスの柴田茂樹社長 (66) は 「うちとは狙っている層が違う」 と余裕を見せる。

自信の源は徹底した子ども重視の発想にある。例えば、受付近くにはなぜか駄菓子を売るスペース。きなこ棒やアメなど数十円程度の駄菓子が150種類ほど並んだ本格的な売り場だが、「えんじょい本舗」 と書かれた看板や装飾品は 「グランピング」 から連想される洗練さやラグジュアリーさからは程遠い印象だ。

グランピングの宿泊コンテナには子どもも楽しめるようにカラフルな装飾を配置。イスやテーブルは自社製品で、就寝はベッドではなくあえて寝袋にすることで非日常感を演出した。

飲み物やソフトクリームを販売するカフェには低い位置に子どもだけが商品を受け取れる受け渡し口を設置。店員がソフトクリームを作る様子を間近で眺めることができる。
出典: 日経

 「幼稚な頭を持て」 


記事ではロゴスの柴田社長は 「流行のグランピングは大人は喜ぶけど、高級すぎると一緒に来た子どもが意外と冷めていることが多い」 とコメントしています。

そこで 「徹底した子ども目線になること」 を追求しているとのことですが、狙いについて記事から詳しく見てみましょう。

―― ロゴスパークは子ども視点が特徴的です。

 「高知県には他にも同様の施設があるので、個性を出す必要がある。小さな子どもが楽しめるキャンプ場はロゴスの真骨頂だ。子どもがワクワクしていたら、親は嫌でもついて行く。親が『高級なグランピングに行こう』と言っても、子どもに『ロゴスパークに行きたい』と言ってもらえるのが理想だ」 

―― 子どもが楽しめる発想はどこから生まれますか。

 「子どもは純真なので、ひき付けるのは本当に難しい。(米アップル創業者の) スティーブ・ジョブズ氏は『バカであれ (ステイ・フーリッシュ) 』と言ったが、社員には『幼稚な頭を持て』『子どもの脳細胞になって考えろ』と言っている」 

 「物理的に子ども視点になることも大事だ。ロゴスパークではカフェの横に子どもの目線で受け渡し口にもなる小さな窓を開けている。カフェを初めて経営した時に、子どもが背伸びしてカウンター越しにソフトクリームが巻かれるのをのぞき込んでいたのを見たのがきっかけだ。子どもはそれだけで楽しめる」 

学べること


ロゴスのキャンプ場の話から学べることを掘り下げていきましょう。

誰目線で捉えるか


考えたいテーマは 「お客さんを誰にするのか」 です。誰の目線になっての商品やサービスとするのかです。

ロゴスはキャンプ場の来場者において、普通は見落とされがちな子どもに焦点を当てています。従来からある 「キャンプとはこうあるべき」 という常識にとらわれず、子ども目線になって他とは違う独自のキャンプ場を実現しました。

慣れた人、とりわけその分野の上級者には当然のことでも、始めて間もない不慣れな初級者にとっては当たり前でなく難しいと感じることがあります。

キャンプに当てはめると、テントの組み立てが大変だったりバーベキューの準備がうまくできない、虫が嫌だと思うこともあります。また、大人には難なくできることも子ども向けに設計されていないと子どもはできないです。

上級者目線になってしまう弊害


売り手である商品・サービス提供者は、その領域には詳しいのでいわば上級者です。

自分たちが上級者である自覚がないままに商品やサービスを提供すると、商品・サービスを上級者のお客さんには満足してもらえても、初級者にはハードルの高い不満の残るものになってしまいます。

こうした状況が続くとお客さんの構成は古参の人ばかりになります。ロイヤルティの高い人が多いという良さはありますが、見方を変えればお客さんの新陳代謝が起こらずマンネリ化します。初めてのお客さんには敷居の高い雰囲気になり、新規のお客さんを逃してしまう機会損失が起きるのです。

ではどうすればいいでしょうか?

ロゴスの社長が言っていた 「幼稚な頭を持て」 にヒントがあります。

Stay foolish からのアイデア


スティーブ・ジョブズがかつてのスピーチで使った言葉 「Stay foolish」 について、ロゴスは自分たちの文脈で 「幼稚な頭を持て」 と解釈しました。

幼稚な頭になるとは初級者の目線になると捉えることができます。

この考え方は汎用的に使えます。自社の商品やサービスを全く初めて使う人には使いやすくなっているだろうか、小学生くらいの子どもにはどう見えるだろうかと見つめ直してみるといいです。良い意味での素人目線からおもしろいアイデアが生まれたりします。

自分 (たち) は知らず知らずのうちに 「上級者視点」 にとらわれています。自分では気づけない点にとらわれから脱する難しさがあります。

Stay foolish は直訳すると 「バカ者でいろ」 です。意味合いの解釈は色々とできます。

あなたにとっての 「Stay foolish」 は何ですか?


まとめ


今回はロゴスの異色なキャンプ場を取り上げて、マーケティングに学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

上級者目線にとらわれる弊害
  • 商品・サービス提供者はその分野での上級者。知らず知らずのうちに 「上級者視点」 にとらわれている
  • 上級者の自覚がないままに商品・サービスを提供すると、上級者のお客さんには満足してもらえても、初級者には不満が生まれる
  • 初めてのお客には敷居が高くなり、新規のお客さんを逃してしまう機会損失が起きる

Stay foolish からのアイデア発想
  • 直訳すると 「バカ者でいろ」 。意味合いは色々な解釈ができる
  • 自社の商品やサービスを全く初めて使う人には使いやすくなっているだろうか、小学生くらいの子どもにはどう見えるだろうかと見つめ直してみよう
  • おもしろいアイデアは良い意味での素人目線から生まれる


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。