投稿日 2022/07/31

スーツサイズをおすすめする体組成計。「目的の手段化」 からのメリット創出


今回のテーマは、お客さんへのメリットをどうやって生み出すかです。

おもしろいと思った、はるやまとタニタの新サービスからマーケティングに学べることを見ていきます。

✓ この記事でわかること
  • スーツサイズをおすすめする体組成計 (はるやまとタニタの新サービス) 
  • はるやまとタニタのそれぞれの狙い
  • 売り手と買い手の認識のギャップ
  • 「目的の手段化」 でお客さんと目線をそろえ、価値を提供しよう

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

はるやまとタニタの新サービス


こちらの記事を読みました。

乗るとスーツサイズ分かる体組成計 はるやま商事とタニタの秘策|日経クロストレンド

裸足で乗り両手でグリップを握ると30秒ほどで測定完了 (出典: 日経クロストレンド

測定後には健康データを表示。「おすすめ商品」 ボタンから商品写真を見ることもできる (出典: 日経クロストレンド

スーツなどを売っているはるやまの店舗に、タニタの新技術を搭載した専用の体組成計を導入するとのことです。

体組成計にお客さんが乗ると体重や体脂肪率、基礎代謝量などが測定され、それをもとに首回り、おなか回り、胸囲、ゆき丈、ヒップ、太もものサイズを推定して算出するようです。

体組成計が測定と推定の結果からおすすめのスーツサイズと、はるやまの商品を提案します。

では、この新サービスについて、はるやまとタニタにとってのそれぞれの狙いを見ていきましょう。

アナログのデジタル化


まずは、はるやまからです。

はるやまに限らず、一般的にお店でお客さんに商品や服のコーディネートをすすめるのは、店員が目で見て判断した情報からです。スーツのためのお客さんのサイズ測定も、店員がメジャーで測っていました。

いずれも店員スタッフの技術、経験やセンスという属人的な能力に頼る方法です。

タニタとの共同サービスは、タニタの体組成計のデータをおすすめ情報に使います。これまでは店員がアナログでやっていたことを、デジタルに置き換える取り組みです。

お客さんにとってのメリットは?


業務プロセスや作業をデジタル化することで、はるやまには業務を効率化できるメリットがあります。

一方のお客さんにとっては、ここだけを見れば必ずしもメリットにはなりません。店員が手動でやるか (アナログか) 、デジタルかの違いでしかないからです。

お店でわざわざ靴を脱いで体組成計に乗る手間、通常のメジャー測定ではわからない体重や体脂肪率の数字が店員に知られてしまう気恥ずかしさもあるでしょう。

これらを上回るメリットがないと、お客さんは体組成計には乗りません。想定されているお客さんのメリットは、体重などの数字から自分の体の状態がわかること、自分にぴったりのジャストサイズの服やコーディネートをおすすめしてもらえることです。

今までの店員からのおすすめ以上に良い提案であれば、お客さんへの価値になります。

タニタの目的、お客の目的


では次に、タニタにとっての意味合いを掘り下げてみましょう。

タニタの狙いは、自社の新技術が入った体組成計を使ってもらうことです。

よくある表現で 「手段の目的化」 がありますが、逆の発想である 「目的の手段化」 になれるかがポイントです。

タニタにとっては体組成計を使ってもらうことが目的でも、はるやまや来店客には体組成計そのものは手段です。はるやまは業務効率化やおすすめ商品を提案するため、お客さんは健康状態や自分に合う商品を知ることが目的です。


学べること


学びとして一般化すれば、自分たちにとっては目的のことでも、「お客さんやエンドユーザーには目的のための手段にすぎない」 という認識を持つ重要性です。

自社の目的に固執しすぎると、売り手と買い手 (お客さん) との認識のギャップが大きくなります。これを防ぐために 「目的の手段化」 から、お客さんと同じ目線にそろえてお客の文脈に合う価値を提案することが大事です。


まとめ


今回は、はるやまとタニタの新サービスを取り上げ、マーケティングに学べることを見てきました。

最後にまとめです。

売り手と買い手の認識ギャップ
  • 今回の事例では、タニタ (売り手) の目的は体組成計を使ってもらうこと。はるやまへの来店客は健康状態や自分に合う商品を知ることが目的
  • 自分たちの目的に固執しすぎると、売り手と買い手 (お客さん) の認識ギャップが大きくなる

目的の手段化
  • 自分たちにとっては目的でも、「お客さんやエンドユーザーには目的のための手段にすぎない」 という認識を持つことが大事
  • 「目的の手段化」 から、お客さんの文脈に合う価値を提案しよう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。