投稿日 2022/07/30

先行投資が実を結んだ 「アカマル屋鮮魚店」 に学ぶ、差異化からの価値創出の方法

出典: PR TIMES

今回のテーマは、差異化からの価値創出です。

おもしろいと思った居酒屋チェーンの新業態のお店を取り上げ、マーケティングに学べることを見ていきます。

✓ この記事でわかること
  • SANKO の鮮魚店と居酒屋を併設する新業態のお店
  • 先行投資が実を結んだ新店舗
  • SANKO が差異化を実現できた理由
  • 差異化からお客さんへの価値を生む方法

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

SANKO の新業態のお店


居酒屋チェーン 「金の蔵」 などを運営する SANKO MARKETING FOODS が、新業態 「アカマル屋鮮魚店」 をオープンしました (2022年4月) 。

居酒屋に鮮魚店を併設し、近所の人が立ち寄るきっかけにしてもらい店内飲食以外の売上も狙っています。

大衆酒場 アカマル屋鮮魚店の店内 (出典: PR TIMES

以下はリリースからの引用です。

 「鮮魚直売 アカマル屋鮮魚店」 は、当社が水産業に関わる沼津や浜松から産地直送の鮮魚を販売する新ブランドの鮮魚店です。現地の競りで目利きした鮮魚や水産加工品を直接消費者へ販売し、魚食文化の復興、産地の認知向上を目指した取り組みの一貫になります。

また、産地直送の鮮魚と生まぐろをメインに、商品開発や調理法にこだわり、抜群の鮮度だからこそできる素材を生かしたメニューが満載の 「大衆酒場 アカマル屋鮮魚店」 が併設になります。

差異化の源泉


SANKO の鮮魚店と居酒屋を併設するスタイルは、他の飲食店にはない珍しいお店の形です。

ここから掘り下げたいのは、なぜ SANKO が独自の新業態を出せたかです。

SANKO が新業態のお店を出す背景や狙いについて、日経の記事でも紹介されています。

同社は2020年から沼津我入道漁業協同組合 (静岡県沼津市) と提携した。同漁協の正組合員になることを視野に漁業に携わるなど、水産事業に参入している。

新店ではこの調達ルートを生かし、現地で取れた魚をその日のうちに店舗に直送して提供する鮮度の良さが売りだ。

SANKO は、漁協を通じて得られた新鮮な魚 (食材) の調達力、新鮮な魚料理を提供する仕組み、魚の目利きや扱い方などのノウハウを活かしています。

これらは、畑違いの漁協の世界に飛び込んだからこそ得られたものです。漁協との提携が新業態の布石としてあり、先行投資がようやく新業態として実を結んだわけです。

お客への価値を生んでいるか


さらにもう1つ深掘りしたいのは、差異化したことが、最終的なエンドユーザーであるお客さんへの価値につながっているかです。

仮に他の競合プレイヤーがやっていない差異化ができたとしても、お客さんにはメリットがなく売り手の自己満足な独自化では意味がありません。差異化はお客さんへの価値提供の手段で、決して目的ではないのです。

SANKO の話につなげると、SANKO は新業態という差異化によって、次のような価値を来店客にもたらそうとしています。

併設する鮮魚店では、食材としての魚や総菜などを販売して地域住民の内食需要を取り込む狙いだ。漁協を通じた新鮮な魚の調達力を生かす。

店舗開発を担う山口誠氏は 「最近は料理動画の需要が増えており、珍しい魚を扱える当社は動画投稿者の需要もつかめる」 と話す。周辺に多い個人飲食店向け販売も期待できるほか、居酒屋のみと比較して大きい魚でも丸1匹仕入れられ、鮮度が高い品を低価格で提供できる。

 (中略) 

居酒屋と鮮魚店を同時に扱う独自性を店舗体験にも生かす。居酒屋のカウンター席からは職人の手さばきや、販売している鮮魚を見ることができ、鮮魚店からも居酒屋の様子を見られる設計だ。

学べること


では最後に、SANKO の話からマーケティングに学べることを整理してみましょう。

次のような問いかけを自分 (たち) にすることで、お客さんへの価値創出のヒントになったり、チェックポイントにも使えます。

✓ お客への価値創出のための問いかけ
  • 将来のために今から何に投資をするか (今やっていることは将来の自分を助けるか) 
  • 差異化の源泉として、自分たちは何を持っているか
  • その差異化によってお客さんへの価値を生んでいるか

これらの問いかけが、今回の学びとして残しておきたいことです。


まとめ


今回は SANKO の新業態のお店から、マーケティングに学べることを見てきました。

最後にまとめです。

差異化からのお客さんへの価値提供
  • 差異化したことが、お客さんへの価値につながっているかが大事
  • 仮に差異化ができたとしても、お客さんにはメリットがなく売り手の自己満足な独自化では意味がない
  • 差異化はお客さんへの価値提供の手段で、決して目的ではない

価値創出のための問いかけ
  • 将来のために今から何に投資をするか (今やっていることは将来の自分を助けるか) 
  • 差異化の源泉として、自分たちは何を持っているか
  • その差異化によってお客さんへの価値を生んでいるか


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。