投稿日 2022/07/22

サントリーほろよい CM に学ぶ、ブランドの本質と、利用シーン描写からのブランディング


今回のテーマは、ブランドです。

おもしろいと思ったサントリー 「ほろよい」 の CM から、マーケティングやブランドに学べることを見ていきます。

✓ この記事でわかること
  • サントリーほろよいの CM
  • CM の狙いは特定シーンでの純粋想起
  • ブランドの本質とつくられ方
  • 共感される利用シーン描写からのブランディング (CM に学べること) 

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

サントリー 「ほろよい」 の CM


ご紹介したいのは、サントリーのアルコール飲料 「ほろよい」 の CM です。



 「ほろよい飲んで、なにしよう?」 


CM では、部屋でお酒を飲みながら思い思いに過ごす女性の姿を、実写とアニメの2つのバージョンで描いています。ヘッドホンを付けてスマホで動画を見たり、雑誌を読んだり、ゲームに夢中になったりと、楽しんでいる時に 「ほろよい」 を飲んでいます。

コピーは 「ほろよい飲んで、なにしよう?」 です。

CM が提案しているのは、おうち時間で自分の好きなことをやる、例えば映画を見たり、ゲームをしたり、雑誌を読んだりしている時に、酔いすぎない 「ほろよい」 を飲みませんかというメッセージです。

 「〇〇 の時には "ほろよい" 」 というイメージ


ほろよいの CM の狙いは、家で自分の好きなことをする時間に、お供として 「ほろよい」 を選んでもらうことです。

CM では、おうち時間を女性が楽しんでいる時に、自然と側に 「ほろよい」 があることを描いています。

お客さんになってほしい生活者の頭の中で、「◯◯ の時には "ほろよい" 」 とシチュエーションと商品がつながることを目指しています。◯◯ の中には自分の好きなことが入ります。

マーケティングの言葉で表現すれば、特定のシチュエーションでの純粋想起を狙っています。何もヒントなしに 「◯◯ の時には… 」 の後に、ほろよいを思い出してもらえる状態です。


ブランド化を描いた CM


あるシチュエーションが、その人にとって大切な時間であったり、毎日の習慣になっていて、その時に商品やサービスが使われれば、お客さんと商品・サービスとの結びつきが強くなります。絆のようなものが生まれ、商品・サービスがブランド化された状態です。

ほろよい のCM は、ブランドができていくプロセスを映像にしています。

ブランドとは


マーケティングの観点からブランドについて補足をすると、ブランドとは 「お客さんからの好ましい感情が伴った商品やサービス」 です。

好ましい感情とは例えば、好き、共感、満足、誇り、憧れ、応援したい気持ちです。こうした感情が深いほど強いブランドです。ブランドは数式の足し算で表現ができ、「ブランド = 商品 + 感情」 です。

ブランドでもう1つ大事な捉え方は、ブランドとはあくまでお客さんの頭の中にある価値イメージや信頼です。この意味で、売り手は直接ブランドをコントロールすることはできず、間接的に働きかけをすることになります。

ブランドのつくり方


 「働きかけ」 というのが、ブランドに ing がつくブランディングです。

ほろよいの CM からは、ブランドをどうやって構築するかも学びがあります。

結論から言えば、ブランドができる流れは、「体験 → 感情移入 → 価値イメージ形成 → ブランド化」 です。何かしらの体験がベースになり、体験時や後に好ましい感情が生まれ、商品やサービスの価値イメージとも結びつき、1つ1つの体験の蓄積の結果としてブランドができあがります。

ほろよいがブランドになる描写


CM では 「ほろよい」 の体験をリラックスしているおうち時間で、様々な体験を30秒で実写とアニメの2つのバージョンで描いています。先ほどの流れ 「体験 → 感情移入 → 価値イメージ形成 → ブランド化」 をうまく見せています。

商品やサービスがブランドになれば、積極的な選ばれ方をされます。「これでいい」 という消去法的なものから、「これがいい」 という能動的な指名買いのようになります。言葉にすると 「てにをはレベル」 の違いですが、「これで」 と 「これが」 の違いはブランドの観点では大きいです。


学べること


では最後に、ほろよいの CM から学べることを整理してみましょう。

商品やサービスをアピールする時には、商品の機能などの特徴だけではなく、使ってほしい 「利用シーン」 を描くと良いです。相手 (見込み客) に共感される利用のシチュエーションを見せれば、自分が使うイメージが具体的になり、商品・サービスが自分ごと化されます。

このように商品やサービスを使うシーンをリアルに伝えれば、相手の頭の中で商品の疑似体験が起こります。ブランドはユーザー体験からできるので、共感できる利用シーンに併せて商品を見せて伝えることは、短期的な売上だけではなく、長い目で見ればブランディングにもつながるのです。


まとめ


今回はサントリーの 「ほろよい」 の CM を取り上げ、マーケティングに学べることを見てきました。

最後にまとめです。

ブランドの本質
  • ブランドとは 「お客さんからの好ましい感情が伴った商品やサービス」 。好ましい感情とは例えば、好き、共感、満足、誇り、憧れ、応援したい気持ち
  • ブランドは、お客さんの頭の中にある価値イメージや信頼
  • ブランドができるのは、「体験 → 感情移入 → 価値イメージ形成 → ブランド化」 。体験時や後に好ましい感情が生まれ、商品やサービスの価値イメージとも結びつき、1つ1つの体験の蓄積の結果としてブランドができあがる

利用シーン描写からのブランディング
  • 商品やサービスを訴求する時には、使ってほしい 「利用シーン」 を描くと良い
  • リアルな利用シチュエーションに共感されれば、相手の頭の中で商品の疑似体験が起こる
  • 共感できる利用シーンに併せて商品を見せて伝えることは、長い目で見ればブランディングにもつながる


ニュースレターのご紹介


マーケティングのニュースレターを配信しています。


気になる商品や新サービスのヒット理由がわかり、マーケティングや戦略を学べるレターです。

マーケティングのことがおもしろいと思えて、今日から活かせる学びを毎週お届けします。

レターの文字数はこのブログの 2 ~ 3 倍くらいで、その分だけ深く掘り下げています。ブログの内容をいいなと思っていただいた方には、レターもきっとおもしろく読めると思います (過去のレターもこちらから見られます) 。

こちらから無料登録をしていただくと、マーケティングレターが週1回で届きます。もし違うなと感じたらすぐ解約いただいて OK です。ぜひレターも登録して読んでみてください!

最新記事

Podcast

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

ブログ以外にマーケティングレターを毎週1万字で配信しています。音声配信は Podcast, Spotify, Amazon music, stand.fm からどうぞ。

名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。