投稿日 2022/07/21

人間洗濯機から着想を得た5万円のシャワー。消費者起点と世界観でヒット商品をつくる方法

出典: ミラブル

今回のテーマはヒット商品につながるアイデアのつくり方です。

おもしろいと思ったシャワーヘッドを取り上げ、開発背景やヒット理由を紐解きマーケティングに学べることを掘り下げます。

✓ この記事でわかること
  • 5万円のシャワーヘッドが人気に
  • 開発背景とヒット理由
  • 着想の原点は大阪万博の 「人間洗濯機」 
  • 価値を生むアイデアのつくり方

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

ミラブル zero


ご紹介したいのはシャワーヘッドの 「ミラブル zero」 です。


出典: &GP

5万円のシャワーがヒット


値段が5万円近くするシャワーですが、ヒットしているとのことです。

顔や髪だけでなく、歯も舌もシャワーできれいにする――。浴槽やシャワーヘッドなどを手がけるサイエンス (大阪市) が6月15日、新たなシャワーヘッド 「ミラブル zero」 を発売した。

5万円近い価格設定ながら発売前から注目を集めており、国内での販売目標としていた2023年3月末までに50万本の達成にも自信をみせる。

ミラブル zero は歯磨きのように口の中も洗えます。

出典: &GP

開発の背景


ミラブル zero の開発背景を見てみましょう。

今回発売した新商品 「ミラブル zero」 の最大の特徴は、リング状の水流で歯の隙間などを洗う機能を追加したことにある。創業者の青山恭明会長は 「お風呂で口をゆすいだりしている利用者は多い。シャワーに求められる機能は頭や顔だけにとどまらない」 と、開発の経緯を説明する。

サイエンスの商品は消費者の声から生まれた物が多い。シャワーヘッドのミラブルシリーズの商品化も、浴槽に取り付けて細かい気泡を発生させる製品の利用者から 「細かい気泡を顔にも浴びたいので、湯船に顔をつけている」 という声が多数寄せられたことがきっかけだった。消費者がシャワーに何を求めているのか。消費者の声から導き出されたのが 「口の中までシャワーで洗う」 という発想だ。

消費者起点のアイデア発想


ミラブル zero のコンセプトである 「口の中も洗えるシャワー」 はユニークですよね。

この発想は消費者の声がヒントになっています。お風呂で口をゆすぐ消費者が多いことがわかり、口内洗浄もできるシャワーという着想につながりました。

ここで大事なのは、消費者から直接的に 「口の中もすすげるシャワーが欲しい」 と言われたわけではないということです。口内洗浄まで可能なシャワーというコンセプトにしたのは作り手であるサイエンスです。アイデアのヒントは消費者からでしたが、最終的な答えは売り手が自ら見出したわけです。

原点は人間洗濯機


ミラブル zero は原点は昭和の1970年の大阪万博で展示された 「人間洗濯機」 だったとのことです。

青山会長が子どものころ、大阪万博で見た 「人間洗濯機」 。そのときに感じた 「未来の技術」 をシャワーヘッドの形で具現化したともいえる。
1970年の大阪万博で展示されたサンヨーの 「人間洗濯機」 (出典: 朝日新聞

衣服ではなく人間そのものを機械が洗うという当時の未来感が原体験になり、令和の現在で口の中も洗えるシャワーとして形になったのはおもしろいです。


価値のあるアイデアのつくり方


では学べることを整理していきましょう。

ユニークなアイデアをどうやって生み出すかにヒントが得られます。一言で表現すれば 「消費者起点 + 独自の世界観」 です。

消費者ニーズ、利用の仕方、隠れた望みや不満に向き合うことは大事です。マーケティングで大切なのはお客さんについての深い理解です。

ただし消費者起点になるだけでは十分ではありません。ともすると消費者に言われたことをただやっているだけになってしまいます。

ここで加えたいのが自分たちの独自の世界観を入れることです。

ミラブル zero の場合はかつての大阪万博であった人間洗濯機から着想を得ました。独自の視点があるからこそ単なる消費者起点ではないユニークなコンセプトができあがるのです。

お客さんへのメリットがあり、他にはない独自性が両立していること。商品やサービス開発、マーケティングにもアイデアを考える時に参考になる方法です。


まとめ


今回は口内洗浄もできるシャワーヘッド 「ミラブル zero」 を取り上げて、マーケティングに学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

✓ 価値を生むアイデアをつくる方法
  • 消費者ニーズ、利用の仕方、隠れた望みや不満に向き合うことは大事。ただし、消費者起点になるだけでは十分ではない
  • 消費者起点に、自分たちの独自の世界観や着想を入れてみるといい
  • お客さんへのメリットがあり、他にはない独自性があるという2つを両立させよう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。