投稿日 2022/08/02

話題の 「ヤクルト1000」 に学ぶ、「二段階の認知施策」 を成功させる方法


今回は、マーケティングの 「認知」 がテーマです。

おもしろいと思ったヤクルトの人気商品と施策を取り上げ、マーケティングに学べることを見ていきます。

✓ この記事でわかること
  • ヤクルト1000 に長蛇の列
  • イベントスペース出店の狙いは認知向上
  • 二段階の認知
  • フェーズを見極めての戦略と実行

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

ヤクルト1000 が買えないと話題に


こちらの記事を読みました。

話題の "ヤクルト1000" に長蛇の列 日本橋駅に突如出店 ─ そのワケは?|ITmedia

出典: ヤクルト

以下は記事からの引用です。

ヤクルトが販売する乳酸菌飲料 「Yakult (ヤクルト) 1000」 と 「Y1000」 が、飛ぶ鳥を落とす勢いで売れている。乳酸菌シロタ株が約1000億個配合されており、SNS ではよく眠れる、寝起きがすっきりするなどの口コミが連日投稿されている。

ヤクルト1000 と Y1000 は、まとめて語られることが多いが、実は別商品だ。主にヤクルトの宅配センターや "ヤクルトレディ" が販売しているものがヤクルト1000 で、小売店経由で販売しているものが Y1000 。特に小売店向けの Y1000 は手に入りづらい状況が続いており、「売り切れている」 「どこで買えるのか」 という声もあがっている。

記事では、ヤクルトが、東京メトロ銀座線の日本橋駅の構内にあるイベントスペースに出店したことが紹介されていました。日本橋駅では、ヤクルト1000 を求める人が連日列をなしているようです。

ヤクルトの広報担当者によれば、ヤクルト1000 の認知向上になればという意図で出店しているとのことです。

* * *

ではここからは、マーケティングの 「認知」 をテーマに掘り下げていきます。


二段階の認知


言いたいことの結論は、認知には二段感があるということです。

ヤクルト1000 の話からの学びは、認知のフェーズを分けてマーケティングや販促施策をやっていく重要性です。

一段階目の認知


最初の一段階では、あえて規模は追わずに、まずは必要最低限の範囲で知ってもらいます。小さく始めて、いけると判断すれば後から大きくするアプローチです。

例えば一部のお客さん、地域エリアや期間を限定して訴求し、商品やサービスを使ってもらいます。使い勝手などの評価をしてもらい、商品・サービスを改善し磨いていきます。

より良い商品にし、生産から供給、販売の仕組みや体制を整えます。あえて一部に限定して、その中で認知率を高めます。

二段階目の認知


次のフェーズの二段階目は、一段回目で 「良い商品」 「提供体制の構築」 をやった上で、大々的に認知施策を展開します。

一段回目の認知施策で始めたことがテストケースになり、「これならいける」 と判断できれば、大きくするためにアクセルを踏んでいきます。

ヤクルトはどっち?


ヤクルト1000 の駅構内のイベントスペース出店は、ここまで見てきた認知の二段階において、まだ一段階目なのか、それとも二段階目の規模を拡大しているのかは正確にはわかりません。

イベントスペースという場所や期間を限定しているので、まだ小さく始めているという状況とも言えるし、すでに 「どこで買えるのか」 と声があるくらいなので、さらに広く認知を取りにいっているのかもしれません。

別の記事で 「増産していく」 と報じられていたので、いよいよのフェーズだと私は見ました。

売り切れ続出のヤクルト 「Y1000」 、7月をめどに増産へ 安定供給なるか|ITmedia


現状把握からの戦略と実行を


では最後に、ヤクルトからの学びを整理してみましょう。

大事なのは 「認知において、今はどのフェーズなのかを見極めることです。

いきなりのフルスロットルでの認知拡大は諸刃の剣です。認知率を高めても、もし商品のクオリティや供給体制が追いついていないと逆効果です。こうなってしまったら、後から挽回するのは認知施策よりも相当なリソースが必要になります。

現状を適切に理解し、

  • 人々に愛されるくらい良い商品になっているか
  • 生産量や在庫は十分か
  • 供給体制やアフターサービスは整っているか

を前提として把握することが重要です。

認知はマーケティング施策において最初の関門です。施策の前提として、現状への理解と、何のためにどこまで目指すのかの 「目的とゴール」 を定めて、戦略と実行に入ると良いでしょう


まとめ


今回はヤクルトの話題を取り上げて、マーケティングに学べることを見てきました。

最後にまとめです。

二段階の認知施策
  • あえて規模は追わずに必要最低限の範囲で知ってもらう。商品改善や生産・供給の仕組みを整える
  • 一段回目で 「良い商品」 「提供体制の構築」 をやった上で、大々的に認知施策を展開する

現状理解からの戦略と実行
  • いきなりのフルスロットルでの認知拡大は諸刃の剣。商品のクオリティや供給体制が追いついていないと中で認知率を高めても逆効果
  • 後から挽回するのは、認知施策よりも相当なリソースが必要になる
  • 認知施策の前提として現状理解と 「目的とゴール」 を定めて、戦略と実行に入ろう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。