投稿日 2022/08/22

胡蝶蘭の回収・再育成サービスに学ぶ、カスタマーサクセスの全体最適化


今回はカスタマーサクセスの全体最適化という話です。

おもしろいと思ったサービスから、マーケティングや商品開発に学べることを見ていきましょう。

✓ わかること
  • 胡蝶蘭の回収・再育成サービス
  • サービス開発の背景 (問題設定) 
  • カスタマーサクセスとは
  • 利用シーンを広く捉えての 「カスタマーサクセスの全体最適化」 を解説

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

胡蝶蘭の回収・再育成サービス


ご紹介したいのはヒカル・オーキッドという会社が始めた 「胡蝶蘭の回収と再育成をするサービス」 です。

サービス内容


以下は日経新聞の記事からの引用です。

コチョウラン専業大手のヒカル・オーキッド (和歌山県有田市) は、法人向けの贈答品として人気のコチョウランを回収・再育成するサービスを始めた。

開店祝いや記念パーティーが終わって用が済んでも廃棄物にせず、もう一花咲かせて新たな商品として再生させる。贈答用の花では珍しい環境負荷を抑える取り組みだ。

ヒカル・オーキッドの公式サイトには、SDGs への取り組みとして次のような説明がされています。


サービス内容をもう少し詳しく見てみましょう。

用済みとなった株を入れて同社に送り返すための専用の袋を同送。コチョウランは適切なケアで何年も生き続けるといい、届いた株は4カ月から1年程度かけて再育成し、新たな商品に生まれ変わらせる。

送り返す側に送料などのコストはかからないが、「3本立ち」 など複数の株が配置されている商品は1株ごとに解体して袋に詰め、返送する必要がある。花を支える支柱は竹製なので、家庭用ハサミで簡単に解体できる。

価格が3万3千円以上の商品には、配送時の段ボールを使って鉢ごと送り返してもらう回収クーポンも付けている。ただ大きな段ボールを保存しておく不便さも考慮し、袋による小分けの返送方法を導入した。順次、袋に入れる方式に切り替えていく方針だ。

使い終わった後の 「不」 に着目


サービスの開発背景が興味深かったです。

ヒカル・オーキッドが着目したのは、お祝いの場が終わり華やかに彩った胡蝶蘭が一転して嫌がられる存在になってしまう問題です。

華やかなコチョウランはお祝いの席を彩る定番商品だが、うたげが終われば廃棄物と化すことも多い。陶器の鉢や花を支える鉄の支柱などがあだとなり、廃棄するのも簡単ではなく、専門の廃棄業者がいる。

大量廃棄が問題視されることもあり、佐原宏社長は 「生産者にとってはとても悲しく、お祝いにコチョウランを贈る文化自体を否定された気がしたこともある」 と語る。

回収と再育成のサービスの狙いは宴の後に残念な気持ちになるという 「不」 の解消です。


学べること


胡蝶蘭の回収と再育成のサービス事例から学べるのはカスタマーサクセスです。

カスタマーサクセスとは


カスタマーサクセスを日本語に直訳すれば 「お客さんの成功」 です。ビジネス用語としてのカスタマーサクセスの意味は、お客さんの成功とは何かを掘り下げ見極めた本質的な成功に貢献することです。

カスタマーサクセスで大事なのは、売り手と買い手には 「成功への認識のギャップ」 があると理解することにあります。

というのは売り手は商品やサービスが売れた時点で成功です。一方の買い手が成功を手にするのは商品を買った後に使ってベネフィットを得た時です。

このように売り手と買い手で 「成功が起こるタイミング」 の認識が異なるわけです。認識ギャップを埋めるのがお客さんの成功に貢献するカスタマーサクセスなのです。

カスタマーサクセスの全体最適化


ここで胡蝶蘭に話を戻します。

従来は胡蝶蘭を飾り終えれば自分で廃棄する必要があり、手間やお金がかかっていました。胡蝶蘭を飾っている間は 「お客さんの成功」 ができていても、使用後の廃棄の顧客体験には 「不」 が存在します。これでは成功とは言えません。

胡蝶蘭の回収・再育成サービスは、お客さんが胡蝶蘭を使い終わった後にもカスタマーサクセスを目指しています。

今回の学びとして残しておきたいのは、お客さんの利用シーンをより広く捉え、使用中だけではなく使用後にも目を向け 「全体最適でのカスタマーサクセス」 を実現する重要性です。


まとめ


今回は胡蝶蘭の回収・再育成サービスを取り上げ、カスタマーサクセスをキーワードにマーケティングに学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

✓ カスタマーサクセスの全体最適化
  • カスタマーサクセスとはお客さんの成功とは何かを掘り下げ、見極めた本質的な成功に貢献すること
  • お客さんが自社商品を使っている時は 「お客さんの成功」 ができていても、使用後の顧客体験に 「不」 が存在すれば成功とは言えない
  • お客様の利用シーンをより広く捉え、使用中だけではなく使用後にも目を向けて 「全体最適でのカスタマーサクセス」 を実現しよう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。