今回のテーマは、ターゲット顧客の設定です。
おもしろいと思った音声配信サービスを取り上げ、マーケティングに学べることを見ていきます。
✓ この記事でわかること
- 推しチームの実況解説に特化した音声配信 ｢チアホン｣ とは？
- 開発の背景と狙い
- 実況の当たり前を変えたサービス
- 嫌われる勇気 (学べること)
よかったら最後までぜひ読んでみてください。
音声配信サービス ｢チアホン｣
ご紹介したいのは、スポーツ観戦に特化した音声配信サービスの ｢チアホン｣ です (公式サイトはこちら) 。
出典: チアホン
スポーツ観戦に特化
以下は、チアホンを取り上げている日経新聞の記事からの引用です。
パナソニックホールディングス (HD) がスポーツ観戦に特化した音声配信サービス ｢チアホン｣ の提案に力を入れている。
観戦現場からスマートフォンを介して実況や解説などを楽しめる。来場満足度につながると訴求し、様々なスポーツの事業者に導入を促す。事業者との接点を増やし、音響映像設備など他商材の販売につなげる狙いもある。
開発の狙い
チアホンの開発の背景や狙いについて、記事から見てみましょう。
｢試合会場は選手と最も距離が近いのに、ほしい情報が入ってこない｣ 。チアホンは、パナソニック HD BTC イノベーション室主幹の持田登尚雄 (としお) さんの素朴な疑問から生まれた。テレビなどでの視聴と違い、現場の試合観戦では解説などの情報がなくもったいないと感じていた。
そもそも、解説内容にも不満があった。公共向け放送では各チームや選手の情報を偏りなく配信する必要があり ｢好きなチーム視点だと物足りない｣ (同) 。サッカーの日本代表戦で実況者が ｢日本頑張れ｣ と応援するように、偏りのある放送があっても良いのではないかと考えた。
スタジアムなどの会場でスポーツ観戦をしていて、｢自分が知りたい情報がない｣ という不満を、副音声ラジオのような音声配信サービスで解消することをチアホンは目指しています。
当たり前を変えての価値提供
一般的に公共放送では、実況や解説の内容には中立性が求められます。チアホンは、この ｢実況での当たり前｣ を変えていておもしろいです。
配信者はチームを想定するので ｢思い切り自チームに寄った中身｣ (持田氏) にできる。例えば4月に傘下チームのガンバ大阪の試合で配信した際は、解説者に同チームスタッフや元選手の武井択也氏を招いた。チームの裏話を披露したり、募集した質問に武井氏が答えたりするなどガンバファン向けの内容にした。
解説した武井氏は ｢普段の解説とは違って、ガンバ寄りの話ができてやりやすかった｣ と話す。試験配信した試合では、利用者の9割近くが ｢観戦が楽しくなった｣ ｢また利用したい｣ と回答するなど、ファンからの満足度も高いという。
中立性を重視しすぎると嫌われることはないかもしれませんが、一方で ｢帯に短し襷に長し｣ のような誰にも響かないものになってしまいます。
スポーツ観戦の試合会場では、自分の推しのチームを応援し気持ちが盛り上がっているのに、実況や解説が対戦相手も公平に扱う内容だと、高いテンションに水を差されます。ここを問題と捉え、解決するのがチアホンです。
チアホンは、スポーツ観戦に盛り上がれて推しチームへの一体感が高まり、欲しい情報が聞ける価値を提供します。
学べること
では最後に、チアホンからから学べることを整理してみましょう。
一言で表現するなら、学びは ｢皆から好かれるのは辞めてみよう｣ です。考えうる全員からではなく、特定の人だけに喜ばれることを意図的にやってみるわけです。
目標とする商品や事業規模が成り立つことが前提ですが、狭い範囲でよいので ｢自分たちが本当に良いと思うもの｣ を喜んで使ってくれる人だけに絞り、狭いが深く響くことを狙う発想をしてみると、マーケティングへのヒントになります。
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