投稿日 2022/08/06

ユニクロとマルニのコラボに学ぶ、既存客と新規客の両方を獲得する方法


今回のテーマは、顧客獲得です。

おもしろいと思ったユニクロとマルニのコラボレーションから、マーケティングや商品開発に学べることを見ていきます。

✓ この記事でわかること
  • ユニクロとマルニのコラボ服
  • コラボの狙い
  • ユニクロだけでは難しかった2つの理由
  • マルニの役割は 「お墨付き」 
  • 変化をつくり既存客と新規客の両方を獲得する方法

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

ユニクロとマルニのコラボ


ユニクロが、イタリアのラグジュアリーブランド 「MARNI (マルニ) 」 と開発したコラボ商品を発売しました (ニュースリリース (2022年4月) はこちら) 。

出典: WWD

コラボ服の特徴


マルニは1994年に誕生したラグジュアリーブランドです。

特徴は、形式にとらわれない自由な発想や型破りなデザインです。素材や色使いが大胆で、プリントやフォルムも独特です。

ユニクロとマルニのコラボレーションは今回が初めてで、ユニクロの素材の品質の高い服とマルニの独特な色使いやスタイルを融合させた服になっています。

マルニと組んだ狙い


今回のコラボの仕掛け人の方へのインタビュー記事に、コラボの経緯や狙いが書かれていました。

コラボプロジェクトを率いた、ユニクロの R&D 統括責任者である勝田幸宏ファーストリテイリンググループ執行役員へのインタビューです。

WWD: 色柄を得意とするブランドとして、「マルニ」 に注目したということか。

勝田: 色や柄の表現はとても難しい。特に柄表現についてはその難しさを常々実感している。

柄はアートそのもの。ユニクロ社内のグラフィックデザイナーももちろん日々努力しているが、柄というアートの領域に踏み込む以上は、そこに長けた、その領域で生きているブランドやデザイナーと組むべき。それで 「マルニ」 が真っ先に思い浮かんだし、「マルニ」 以外にはアプローチしていない。

実際に取り組んでみて、色柄の使い方は真似できないし、真似をしようとしても無理だなと改めて強く感じた。柄も配色のセンスも、見様見真似でできるようなものではない。今回のプリント柄は全て、コラボのために手描きで製作してもらった。

ユニクロとして、これまでも柄の使用で他社と協業することはあったが、「マルニ」 は柄や色という二次元だけでなく、シルエットやシェイプといった三次元にも定評があるブランド。シルエットやディテールを含め、洋服全体としての完成度をお互い突き詰めることができた点で、非常に意義がある。

役割分担


コラボ服を作るにあたり、服の機能とデザインで明確な役割分担がありました。

先ほどの記事にあったように、ユニクロにとっては、

色柄の使い方は真似できないし、真似をしようとしても無理だなと改めて強く感じた。柄も配色のセンスも、見様見真似でできるようなものではない

機能性を得意とするユニクロと、高いデザイン性のセンスと技術を持つマルニのコラボは両者の強みを活かしています。

ユニクロだけでは難しかったコラボ


マルニとのコラボ服は、ベーシックを基調とするユニクロの服にはない大胆なデザインです。


ユニクロだけでは実現が難しいものです。

難しいとは2つ意味があります。インタビュー記事で語られていたように、ユニクロだけでは目指す技術レベルには達していませんでした。

もう1つ別の難しさがあり、仮に技術を持っていたとしても、今回のような斬新な服をユニクロが出す判断ができたかどうかです。というのは、ユニクロのベーシックな服とはデザインが違いすぎて、今までのイメージと全く異なる服を出したとしても、消費者には受け入れられない可能性があるからです。

ここに、マルニとのコラボの意味があります。


既存客と新規客の獲得


イタリアのラグジュアリーブランドで、斬新なデザインが特徴のマルニとのコラボなら、ユニクロが今までにない奇抜とも言える服を出してきても、違和感はありません。

お墨付きの役割を与えるマルニ


むしろ限定コラボ商品でだからこそ、これまでと全く違うイメージで大胆なデザインの服を作れるわけです。マルニはユニクロに新しいイメージを加えるための 「お墨付き」 のようなものです。

コラボ相手としてマルニという印籠を掲げることで、ユニクロにスパイスを与えています。

たとえとして続けると、今までは薄味で、家庭料理のような和食を中心に提供してきた飲食店が、期間限定で香辛料たっぷりの辛口料理を他店とのコラボメニューで出すイメージです。

コラボではないと、いきなり味が180度変わりお客さんは戸惑うでしょう。しかし、コラボなら 「あの店のメニューが再現されたスパイシー料理もたまにはいいよね」 となります。

常連客は、いつもとは違う限定メニューを食べたくなり、これまでに一度も来たことがない辛い料理が好きな人も新しく食べに来てもらえます。

ユニクロの狙い


これと同じことがユニクロとマルニのコラボ服でも起こります。

ユニクロの既存客だけではなく、マルニのような服が好きで普段はユニクロで服を買わない人 (新規客) も、ユニクロに来店してくれます。コラボ服だけではなく、ユニクロのベーシックな服も手にとってもらうことが期待できるのです。


まとめ


今回はユニクロとマルニのコラボを取り上げ、マーケティングに学べることを見てきました。

最後にまとめです。

✓ コラボで変化をつくる
  • 今までの商品やブランドイメージと全く異なることを急にやると、お客さんには受け入れられない可能性がある
  • しかし期間限定で他者とのコラボでやると違和感はない。コラボ相手は新しいイメージを加えるための 「お墨付き」 のようなもの
  • 既存客はいつもとは違う限定コラボ商品を欲しくなり、新規のお客さんにも新しく手にとってもらえる


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。