投稿日 2022/08/16

ランドセルを 90% 軽くする 「さんぽセル」 を開発した小学生に学ぶ、問題設定からの価値提供


今回のテーマはユーザーへの価値提供の方法です。問題設定からの価値提供へという話です。

話題の 「さんぽセル」 を取り上げ、商品開発やマーケティングに学べることを見ていきます。

✓ この記事でわかること
  • さんぽセルの開発秘話
  • きっかけは 「廃校舎にゲーム部屋をつくりたい」 から
  • 開発した小学生たちに学べること (問題設定からの価値提供) 

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

さんぽセルが誕生した理由


こちらの記事を読みました。

大人たちから1000件超の猛批判 ランドセルを体感で 90% 軽くする 「さんぽセル」 が誕生した理由|ITmedia

出典: PR TIMES

ネットでも話題になっていた 「さんぽセル」 です (さんぽセルの公式サイトはこちら) 。

以下は記事からの引用です。

そもそも、「さんぽセル」 はどのような経緯で生まれたのか。考案されたのは21年8月だ。

栃木県日光市にある廃校舎 「旧野口小学校」 に夏休みで集まった小学生たちによって考え出された。その子どもたちにきっかけを与えたのが地域の子どもたちの面倒を見ていた、大学3年生の太田旭さん (引用者注: 小学生と 「さんぽセル」 を共同開発した会社 「悟空のきもち THE LABO」 の方) だ。太田さんは、「全てのきっかけは『廃校舎にゲーム部屋を作りたい』という子どもの要望だった」 と振り返る。

 (中略) 

廃校舎にゲーム部屋を作るには、ゲーム機本体のほか、それを大画面で映し出すテレビやプロジェクターが必要だ。廃校舎を利活用する取り組みの一環とはいえ、そのお金はどこにもない。「それで、どうすればそのお金が集められるか、子どもたちと一緒に考えることにしたんです」 (太田さん) 
さんぽセルを開発した小学生 (出典: PR TIMES


売上は何のため?


あらためて考えさせられたのは 「何のためにお金を得たいのか」 でした。

お金を稼ぐこと自体を目的とするよりも、得たお金を何に使うのかが大事なんですよね。

 「さんぽセル」 の開発のきっかけは廃校舎にゲーム部屋をつくり、大画面のプロジェクターで遊びたいという子どもらしい動機からでした。ゲーム部屋をつくるのにはお金が必要で売上を上げるのは最終目的ではなく、始めから手段だったわけです。

どうすればお金を集められるかへの子どもたちの答えが 「さんぽセル」 でした。


まずは解く問題の設定から


さんぽセルの開発のアプローチで良いのは、子どもたち自身に身の回りの困りごとを問いかけたことです。

糸口として、太田さんは小学生達から 「今何に困っているのか」 ということを聞き出していった。「困りごとを解決する」 のが、マーケティングの鉄則だからだ。

太田さんはこう続ける。「それで出てきた困りごとが、『ランドセルが重い』というものだったんです」 

お客さんの問題を解決するのはあらゆるビジネスに共通することです。

開発のスタート地点が 「自分たちのつくりたいものをつくる」 の前に 「何に困っているのか」 だったわけです。


問題設定からの価値提供


自分たちの困りごとである 「ランドセルが重い」 を問題として設定し、この問題に対する子どもたちの出した解決策が 「ランドセルにタイヤを取り付ける」 でした。

ランドセルは肩で背負うものという常識を外し、タイヤをつけて転がして運ぶというのは斬新な発想です。

発案初日には、廃校舎にあったキャスター付き椅子の脚部分を使ったプロトタイプを作成 (出典: PR TIMES

さんぽセルの開発アプローチから学べるのはイシューから始める重要性です。

 「さんぽセル」 が売上を得ることが最終ゴールではなかったことも併せると、次のような順番になっていることが大事です。

✓ 問題設定からの価値提供
  • 目的の明確化
  • 問題の設定
  • 解決方法の策定
  • (問題解決による) 価値の提供

ユーザーに価値が生まれるのは使う商品やサービスによって他にはないうれしさ (問題解決) があるからです。

価値につながるかはユーザーが抱えてしまっている困りごとを見極め、何を解くべき問題として設定するかにかかっています。問題設定が的確なほど解決する商品・サービスを使う人には 「そうそう、こんな商品が欲しかった」 となります。

価値提供のもとになっているのは問題設定にあります。


まとめ


今回は小学生が開発した 「さんぽセル」 を取り上げ、学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

✓ 問題設定からの価値提供
  • ① 目的の明確化 (Why から始める) 
  • ② ユーザーの困りごとを見極め、解くべき問題として設定
  • ③ 自分たちならではの解決方法を策定
  • ④ 問題解決による価値の提供
  • 問題設定が的確なほど、解決する商品・サービスを使う人には 「そうそう、こんな商品が欲しかった」 となる


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。