投稿日 2022/08/27

食べごろ予測サービス coro-eye 。「お客のお客までの成功」 に貢献するカスタマーサクセス


今回のテーマは、カスタマーサクセスです。

おもしろいと思ったサービスを取り上げ、マーケティングで学べることを見ていきます。

✓ この記事でわかること
  • 食べごろ予測サービス coro-eye
  • coro-eye の提供価値
  • カスタマーサクセスを実現する方法 (学べること) 

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

食べごろ予測サービス coro-eye


ご紹介したいのは、果物の食べごろを予測するサービス 「coro-eye (コロアイ) 」 です (詳細はこちら) 。

出典: サトー

特徴は、果物を切らずにそのまま専用の測定機に載せるだけで、果物の 「硬め」 「食べごろ」 「柔らかめ」 になるタイミングがわかります。

仕組みは、果物に微小な振動を当て、果物の現状の硬さを特定し、食べごろの期間を予測するとのことです。

coro-eye の提供価値


日経新聞に coro-eye を紹介する記事がありました。

食べごろ期間が印刷されたラベルには QR コードが付いており、スマートフォンで読み取り設定すると LINE で食べごろを通知することもできる。果物の硬さの度合いから自らが食べたいと思う日にちを事前に設定する。産地の様子や果物のおすすめの食べ方などについても紹介している。

サトー HD (引用者注: coro-eye の製造販売会社) は21年7月下旬、全国の生産者を集めて青果などを販売するルミネが定期開催している 「ルミネアグリマルシェ」 で食べごろ予測サービスを試験的に導入した。測定機を使い桃の食べごろ予測を実演した。

棚ごとに 「もう少し先」 「ちょうど今」 と食べごろの時期を分けて販売したところ、比較的 「きょう食べたい」 と買っていく消費者が多いことが分かった。

ルミネの担当者は 「科学的根拠に基づいた『食べごろ』は付加価値にもなりうる。また食品ロスの対策にもつながるのではないか」 と話す。

coro-eye の提供価値を整理すると、次のようになります。

✓ coro-eye の提供価値
  • 見た目ではわからない食べごろタイミングがわかる (自分の好みにあった果物が選べる) 
  • 果物ごとに売れやすい商品の状態 (熟し具合い) がわかる
  • QR コードを読み取る動機を自然につくれる

それぞれの補足


1つ目の提供価値の 「見た目ではわからない食べごろタイミングがわかる」 とは、お客さん (消費者) への直接のメリットです。

見た目や硬さだけでは、果物の食べごろは判断しにくいですよね。人によっても食べごろは違うので (例: 柿の硬めが好きな人 / 熟した柿が好きな人) 、自分が食べたいタイミングを客観的に知ることができます。

2つ目の 「果物ごとに売れやすい商品の状態がわかる」 は、売り手への価値です。

1つ1つの果物に今の状態情報が付いているので、どの状態の果物が売れたかをまとめれば、果物ごとの売れ筋が見えてきます。発注や店舗での商品管理、店頭での商品紹介にも活かせます。食品ロスを防げるというのもメリットです。

3つ目の価値は、coro-eye が QR コードをお客さんが自ら読み取ることのきっかけになります。

一般的に色々な商品に QR コードが付いていますが、消費者からはほとんどがスルーされているのではないでしょうか。自分もそうで、わざわざスマホを取り出し QR コードを読み取ろうとまで思うことは滅多にありません。

一方の coro-eye は、自分の好きな食べごろかがわかり、奥にあるであろう買い物で失敗したくない (食べごろでない物を買いたくない) 気持ちを回避する動機があるので、自然と QR コードを読み取ってもらえそうです。

QR コードからアクセスした先に、産地情報、果物のおすすめの食べ方、他の商品の紹介をするなど、店頭での販促やお客さんとのコミュニケーションにも使えます。


学べること


では最後に学べることを整理してみましょう。

お客のお客の成功


coro-eye からは、カスタマーサクセスの観点で学びがあります。お客さんの成功に貢献するというカスタマーサクセスを、より広い視野で捉えて実現する重要性です。広い視野からとは、直接のお客さんのさらに先にいる 「お客のお客」 にまで広げることです。

coro-eye に当てはめれば、coro-eye を売っている先はデパートやスーパーなどの小売です。小売の先にいる 「お客のお客」 とは、お店に来る買い物客 (一般消費者) です。

先ほど coro-eye の提供価値を整理したように、coro-eye は小売だけではなく消費者にもメリットをつくり出しています。

起点は顧客定義から


あらゆるビジネスの起点になるのは、「自分たちのお客さんは誰なのか」 の顧客定義からです。

お客さんは、狭い意味では直接お金を得ている相手ですが、カスタマーサクセスを実現するためには、直接のお客さんと同じ目線になるようにし、一緒になって 「お客のお客の成功」 を実現していくことがポイントです。それが自社の直接のお客の成功になり、結果として自社の成功につながるからです。

お客さんの定義を広く捉え、自分たちは誰の成功に貢献したいのか・するのかを明確にすることの重要性を、coro-eye からあらためて考えさせられました。


まとめ


今回は果物の食べごろ予測サービス coro-eye を取り上げ、マーケティングに学べることを見てきました。

最後にまとめです。

✓ 「お客のお客」 までのカスタマーサクセス
  • あらゆるビジネスの起点になるのは、「自分たちのお客さんは誰なのか」 の顧客定義
  • 自分たちのお客さんを 「お客のお客」 まで広げ、直接のお客と同じ目線で一緒になってその先にいる 「お客のお客の成功」 を実現していこう
  • お客のお客が成功すれば、自社の直接のお客の成功になり、結果として自社の成功につながる


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。