投稿日 2022/08/31

カラオケ店で高機能ミシン貸し出しが人気。マーケティング近視眼と存在意義の捉え方

#マーケティング #マーケティング近視眼 #存在意義


今回のテーマは 「存在意義をどう捉えるか」 です。

おもしろいと思ったカラオケ店のサービスから、マーケティング近視眼と存在意義という視点で学べることを見ていきましょう。

✓ わかること
  • カラオケ店でミシンの貸し出しが人気に
  • 「マーケティング近視眼」 からの示唆
  • 高い次元での存在意義を捉える重要性

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

カラオケ店での高級ミシンの貸し出し


出典: ITmedia

以下は読売新聞の記事からの引用です。

カラオケ 「JOYSOUND (ジョイサウンド) 」 を提供するエクシング (名古屋市) 子会社のスタンダード (東京都) は、名古屋市内の店舗で高機能ミシンの貸し出しを始めた。

コロナ禍で利用が落ちこむカラオケ店に、新規の顧客を呼び込む狙いがある。

反響はどうだったかと言うと、

1回1000円 (税込み, 別途室料と1ドリンクの注文が必要) でエクシングの親会社のブラザー工業 (名古屋市) 製の高機能ミシン 「parie (パリエ) 」 が利用できる。販売価格14万円前後の刺しゅうもできる本格的なミシンで、アイロンや布切りハサミなども貸し出している。

当初はコスプレ愛好家らの利用を見込み、池袋 (東京都豊島区) の店舗で2月25日から期間限定で先行開始したが、周りを気にせず裁縫に没頭できると主婦や高校生に好評で、延べ約200人が利用。今回、名古屋市や大阪市など3店舗へのサービス拡大を決めた。

学べること


今回の話から学べるのは自分たちの存在意義をより高い次元で捉える重要性です。

補助線としてマーケティングで有名な話をご紹介させてください。

マーケティング近視眼


 「マーケティング近視眼」 と呼ばれるもので、1960年にセオドア・レビットが提唱した概念です。

マーケティング近視眼の例で出てくるのが鉄道会社なのですが、昔はアメリカでの人や物の移動手段には鉄道が使われていました。しかしその後は自動車や航空機が発達し、鉄道に取って代わっていきました。

鉄道会社はあくまで鉄道という手段にこだわり、お客さんの移動ニーズを捉えられなくなりました。後発の会社が自動車での輸送会社や飛行機での航空会社として成長し、一方の鉄道会社は衰退していったのです。

鉄道会社は自社の事業定義を 「鉄道事業」 と捉え続けました。もし 「総合的な輸送事業」 と存在意義を設定していたら、鉄道会社は違う未来を築いたかもしれません。

この鉄道会社の話が 「マーケティング近視眼」 の説明として用いられ、セオドア・レビットは次のように指摘しています。

鉄道会社は自社の事業を、輸送事業ではなく、鉄道事業と考えたために、顧客をほかへ追いやってしまったのである。事業の定義を誤った理由は、輸送を目的とせず、鉄道を目的と考えたことにある。顧客中心ではなく、製品中心に考えてしまったのだ。

because they assumed themselves to be in the railroad business rather than in the transportation business. The reason they defined their industry incorrectly was that they were railroad oriented instead of transportation oriented; they were product oriented instead of customer oriented.
Marketing Myopia, HBR, July-August 1960

カラオケ店の存在意義の捉え方


ここでカラオケ店でのミシンの貸し出しの話につなげます。

マーケティング近視眼からの教訓とも併せるとカラオケ店の自己定義をどう捉えるかです。学びとしたいのは 「存在意義をより高い次元で捉える大事さ」 です。

カラオケ店は一般的にはカラオケサービスの提供をしています。しかしより高い次元から抽象化すれば、カラオケ店とは 「防音対策や軽食も用意された個室で、自宅や公共の場ではやりにくいことができる場や機会」 を提供しています

カラオケ店でミシンを貸し出すことも、自己認識を 「カラオケサービスの提供」 としているだけでは奇をてらった打ち手に見えます。ですが 「自宅や公共の場ではやりにくいことができる機会の提供」 と捉え直せば、カラオケ (大声で好きなだけ歌うこと) と、ミシンの貸し出し (裁縫の音を気にせず好きなだけできる) は一貫性があります。

自分たちは何者なのか


カラオケ店でのミシン貸し出しの事例からあらためて考えさせられたのは 「自分たちは何者なのか」 を本質にまで立ち返る重要性です。

目の前のことにとらわれているとよく言えば集中できている状態ですが、視野が狭くなっていると言えます。マーケティング近視眼で見たように事業が衰退する要因になります。

自分たちがやっていること、やろうとしていること、お客さんに提供していることの本質的な価値は何か。適宜でもいいので目の前のやっていることから立ち止まり、高い次元から存在意義を見つめ直してみるといいです。


まとめ


今回はカラオケ店でのミシンの貸し出しとマーケティング近視眼の話から、マーケティングに学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

マーケティング近視眼
  • 昔はアメリカでの人や物の移動手段には鉄道が使われていた。しかしその後、自動車や航空機が発達し鉄道に取って代わった
  • 鉄道会社は輸送ではなく鉄道という手段にこだわったために、鉄道会社は衰退した
  • もし鉄道会社が存在意義を 「総合的な輸送事業」 と捉えていたら、鉄道会社は違う未来を築いたかもしれない

高い次元での存在意義
  • 目の前のことにとらわれていると、視野が狭くなっている状態
  • お客さんに提供していることの本質的な価値は何かを、高い次元から存在意義を見つめ直してみよう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。