投稿日 2022/08/03

旅行店員の 「PDCA 接客術」 に学ぶ、お客さんが買った後のフォローで接客力を高める方法


今回のテーマはお客さんとのコミュニケーション方法です。

おもしろいと思った旅行会社の店員の方を取り上げ、販売やマーケティングに学べる 「PDCA 接客術」 を解説します。

✓ この記事でわかること
  • 買うのを迷うお客さんの背中を押す接客術
  • お客さんの旅行体験を自分の資産に
  • 丁寧なフォローで接客力を高める 「PDCA 接客術」 とは?

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

旅行会社 販売員の接客


日経新聞に阪急交通社の販売員の方を紹介する記事がありました。

新型コロナウイルスの影響で大きなダメージを受けた阪急交通社は、海外旅行の本格再開で業績回復を目指す。

コロナ以前には一般的な社員の2倍ほどの売り上げを記録し、社内トップクラスの販売員だった西宮トラベルセンターのカウンター販売員、乾沙織さん (45) は、「海外旅行にいきたがっているお客様を、ようやくご案内することができる」 と意気込む。

お客の背中を押す体験談


この販売員の方の接客術を詳しく見てみましょう。

現代はネットでも旅行の手配ができる時代だ。そんな中、乾さんは 「店舗に来てくれたからこそ、より満足度の高い旅行にしたい」 と考えている。乾さんの武器は持ち前の 「話し好き力」 。利用者の旅行先だけでなく、利用者自身に対して関心を高く持つ。雑談を通して 「なぜ旅行に行きたいか」 といった話をヒントに、よりニーズに合うプランを提示する。

そして、旅行先の決断を迷う客の背中を押すのが体験談だ。「旅行の魅力は、そこでしかできない体験をすること」 と話す乾さんは、自身が行った場所はもちろん、別の利用客から聞いた体験談も披露する。実際に行った人の体験を楽しく話すことで、利用者がより旅行への期待感を膨らませてくれる。「そんなワクワク感が、旅行後の『また利用したい』という気持ちにもつながる」 。

過去の利用者の体験を話せるのは、「売って終わり」 にせず、利用者から感想や思い出を丁寧にききとってきたからだ。旅行後もコミュニケーションを取ることで、行った人ならではの現地の魅力や、意外な注意点を知れる。これが、お客様目線の提案につながっているという。

お客の体験を自分の資産に


接客方法でおもしろいと思ったのは、体験談をうまく活用しお客さんの決断を後押ししていることです。

先ほどの記事の引用で最後のところをもう一度見てみると、

過去の利用者の体験を話せるのは、「売って終わり」 にせず、利用者から感想や思い出を丁寧にききとってきたからだ。旅行後もコミュニケーションを取ることで、行った人ならではの現地の魅力や、意外な注意点を知れる。これが、お客様目線の提案につながっているという。

自分の旅行だけでは行く場所は限られますが、接客したお客さんの旅行のエピソードを積極的に集めることで体験談を充実させています。

自分の旅行経験ではありませんが、別のお客さんの接客の中で 「あるお客さんの話ですが」 と伝えれば旅行先の提案として十分に使えるネタになります。

つまり、お客さんという他人の旅行体験を自分の中にストックし資産に変えているのです。


学べること


ではここまで見てきた阪急交通社の販売員の方から、学べることを掘り下げていきましょう。

提案の検証


阪急交通社の販売員の方はツアーなどの旅行商品を 「売って終わり」 ではなく、買ってもらった後にもコミュニケーションをしています。ここに学びがあります。

これは一般的な話としてですが、お客さんに商品やサービスを買う前に勧めることはあっても、買ったお客さんが使ってみて実際のところはどうだったかまではフォローはあまりされないです。

お客さんへの提案内容 (例: こういう便利さがある, 使うとこんな価値が得られる) が、本当にそのお客さんにも当てはまるかは提案時点ではわかりません。提案とはいわば仮説にすぎないからです。

PDCA 接客術


仮説は検証されて初めて答えかどうかがわかります。お客さんが商品・サービスを使った後に実際にどうだったかを訊くことで、提案という仮説の検証ができるわけです。これを実際にやっているのが阪急交通社の販売員の方です。

自分や他のお客さんの旅行体験は確かに事実ではあるものの、目の前の接客中のお客さんにとってはこれから行く旅行の話です。体験談と同じことが当てはまるとは限りません。そこで旅行に行った後に感想や思い出を丁寧に話を聞き、仮説検証をやっているわけです。

一言で表現するなら 「PDCA 接客」 です。提案という仮説を検証し、仮説をブラッシュアップさせて別のお客さんへの提案につなげ、このサイクルを何度もまわしています。

汎用的に販売やマーケティングにも参考になるお客さんとのコミュニケーション方法です。


まとめ


今回は阪急交通社の方の接客術をご紹介し、学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

✓ PDCA 接客術
  • お客さんへの提案内容 (例: こんな価値がある) が、本当にそのお客さんにも当てはまるかは提案時点ではわからない
  • お客さんが商品・サービスの利用後に話を聞くことで、提案という仮説の検証ができる
  • 商品を 「売って終わり」 ではなく、買ってもらった後にもコミュニケーションを取り 「PDCA 接客」 をやってみよう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。