投稿日 2022/10/22

東京ヴェルディの公式ユニフォームに学ぶ、日常の利用からのブランディング


今回のテーマは、マーケティングのブランドです。

おもしろいと思ったサッカーの東京ヴェルディのリブランディングの取り組みをご紹介し、マーケティングに学べることを掘り下げます。

✓ この記事でわかること
  • 東京ヴェルディのリブランディング
  • 調和から共生する公式ユニフォーム
  • ブランドの本質とは
  • 日常でのユーザー体験からのブランディング

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

東京ヴェルディのリブランディング


サッカー J リーグの東京ヴェルディの公式グッズが人気を呼んでいるとのことです。

サッカーチーム、東京ヴェルディの公式グッズが人気だ。2020年の物販の売り上げは18年比で倍増した。スタジアムでしか着られなかった服を日常のファッションに昇華することでチームへの愛着が高まり、物販の好調につながった。同様のトレンドが大学アパレルでも起きている。

東京ヴェルディがリブランディング (ブランドの再構築) したのは創設50周年にあたる19年。様変わりした公式グッズの中でも注目はアパレルだ。胸元に V のエンブレムの刺しゅうを施すなどチームへの愛着を、あからさまなデザインではなく、抽象的に表現した。

チーム愛を生む仕掛け


東京ヴェルディの公式ユニフォームは、デザインに工夫を入れてリブランディングを展開しています。
ブランドの再構築を手掛けたのはアマダナスポーツエンタテインメント (東京・渋谷) 。熊本浩志社長はデザイン家電のアマダナの創業者だ。

意識したのは 「関係性のデザイン」 。デザインの力でコミュニティーのチーム愛を引き出し、エンゲージメントを高めるという意味合いだ。買っているのは服やグッズと、帰属がもたらす喜びや安心感だ。

調和し共生へ


ここまでの東京ヴェルディのユニフォームの話で興味深かったのは、ユニフォームのデザインです。試合観戦の時だけではなく、日常での普段着を想定してデザインされています。

先ほどの引用にあったように、

  • 胸元に V のエンブレムの刺しゅうを施すなどチームへの愛着を、あからさまなデザインではなく、抽象的に表現した
  • スタジアムでしか着られなかった服を日常のファッションに昇華することでチームへの愛着が高まり、物販の好調につながった

ユニフォームだけを目立たせるよりも、東京ヴェルディのユニフォームではないパンツやジャケット、キャップ、アクセサリー、シューズ、カバンなどと調和することを目指しています。

いわば共生の道を選んでいて、ユニフォームは着こなし全体での 「One of them の存在」 にしているのです。


ブランディングへの示唆


東京ヴェルディの公式ユニフォームの事例は、マーケティングのブランドで示唆があります。

ブランドの本質


そもそもブランドとは何かですが、ブランドとは 「お客さんからの好ましい感情が伴った商品やサービス」 です。

好ましい感情とは例えば、好き、共感、満足、誇り、憧れ、応援したい気持ちです。こうした感情が深いほど強いブランドです。ブランドは数式の足し算で表現ができ、「ブランド = 商品 + 感情」 になります。

ブランドでもう1つ大事なことは、ブランドとはあくまでお客さんの頭の中にある価値イメージや信頼です。この意味で、売り手は直接ブランドをコントロールすることはできず、間接的に働きかけをするしかありません。

ブランドのつくり方


 「働きかけ」 というのが、ブランドに ing がつくブランディングです。

ブランドができる流れは、「体験 → 感情移入 → 価値イメージ形成 → ブランド化」 です。

何かしらの体験がベースになり、体験時や後に好ましい感情が生まれ、商品やサービスの価値イメージとも結びつき、1つ1つの体験の蓄積の結果としてブランドができあがります。

特別な体験、日常での体験


ブランドはユーザー体験に好ましい感情が生じることでつくられます。

こう聞くと、ユーザー体験は何か特別なことでなければいけないという印象を抱くかもしれません。

しかし、必ずしも特別な体験だけとは限りません。

ここで東京ヴェルディの事例につなげると、ユニフォームは、推しのサッカーチームの試合観戦という特別な時だけではなく、普段着として日常的に着てもらうことを狙っています。日常でのユーザー体験は、確かに特別な時よりも好ましい感情は弱いかもしれませんが、1つ1つが積み重なることで、トータルで見れば感情移入は強くなります。

多様な接点でのブランディングを


特別な瞬間でのブランディングと、日常での体験からのブランディングの両方の視点やアプローチを持っておくと良いです。

いずれにおいても大事なのは、お客さんの立場になり、お客さんとの接点 (タッチポイント) で良い体験をしてもらうことです。この積み重ねの結果としてブランドができるのです。


まとめ


今回は東京ヴェルディの公式ユニフォームを取り上げ、マーケティングに学べることを見てきました。

最後にまとめです。

✓ ブランドのつくり方
  • ブランドとは 「お客さんからの好ましい感情が伴った商品やサービス」 。好ましい感情とは好き、共感、満足、誇り、憧れ、応援したい気持ち
  • ブランドは 「体験 → 感情移入 → 価値イメージ形成 → ブランド化」 の流れでできる
  • 特別な瞬間でのブランディングと、日常での体験からのブランディングの両方を持っておくと良い
  • いずれもお客さんとの接点 (タッチポイント) で良い体験をしてもらい、積み重ねの結果としてブランドができる


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。