投稿日 2022/10/15

大胆な CM 事例2つ。マーケティングコミュニケーションやプレゼンで 「足る」 をつくる重要性


今回のテーマは、コミュニケーションです。

おもしろいと思った CM を2つご紹介し、マーケティングに学べることを掘り下げます。

✓ この記事でわかること
  • 0秒チキンラーメンの大胆な CM
  • 自虐的な日清紡の CM
  • 2つの CM の共通点から学べること

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

0秒チキンラーメンの CM


1つ目にご紹介したい CM は、0秒チキンラーメンの新 CM である 「チキンかじり虫」 編です。高橋ひかるさんが起用された CM です。


高橋ひかるさんは一言もしゃべらず、ただひたすら 「0秒チキンラーメン」 をかじり続ける1カット映像です。

その分、サウンドにこだわりを感じるんですよね。

具体的には、

  • かじる時の 「ザクッ」 という音
  • タイミングよく入るナレーションの 「子どものおやつに!」 「おつまみに!」 「塩分 50% オフ!」 「そのままかじる専用!」 
  • BGM は NHK の歌 「おしりかじり虫」 をチキンラーメン版に替えた 「チキンかじり虫」 が流れる

このように、かなり緻密に CM 構成が設計されています。

高橋ひかるさんの食べている表情がさすがの演技もあり、ついつい見入ってしまう CM です。


日清紡の企業 CM


続けてご紹介したいのは、日清紡ホールディングスのテレビ CM 「歌おう! ニッシンボー うま篇」 です。


CM の内容はこんな感じです。

中央の馬が 「ニッシンボー 名前は知ってるけど ~ ♪ 」 と歌い出し、左右の馬がコーラスとして参加。最後は、「ニッシンボー 何をやってるかは知らない ~ ♪ 」 と三頭がハモって終わります。ちなみに映像は CG です。

日経クロストレンドの記事によれば、この CM の視聴コアターゲットは就活の学生で、その親御さんや、大学生になる前の高校生、中学生や小学生とのこと。まずは企業名を覚えてもらうことに特化し、あえて事業内容の詳細は CM では触れていないのが興味深いです。


学べること


では、2つの CM の共通点から学べることを掘り下げていきましょう。

足るをつくる


0秒チキンラーメンと日清紡の2つの CM で共通するのは、あえて全てを言っていないことです。意図的に 「足る」 をつくっています

情報の送り手が余白をつくることで、受け手にはどこか余韻が残ります。車のハンドルの 「遊び」 のようなものが生まれ、余裕があることで受け手は情報を消化しやすくなります。

マーケティングコミュニケーションへの学び


特にテレビ CM のような時間的な長さの尺が15秒や30秒で決まっている場合には、言いたいことの全てを詰め込みすぎないことが大事です。

CM に限らず、マーケティングコミュニケーション全般に言えることです。

売り手である伝える側は、えてして多くを伝えようとしがちです。自分たちが持っている商品知識、ブランド知識などの伝えたいことが山ほどあるからです。

世の中やお客さんに伝えたい気持ちが強いほど、全てを盛り込んでしまいます。しかし受け手 (ターゲットとなるお客さん) の立場になると、情報が多すぎると一度では受けきれず消化できません。

そこで重要なのは、目的に立ち返り、伝えるべき本当に大事な情報を見極め、あえて言わない内容は覚悟を持って捨てることです。ここには戦略的な判断が求められます。

プレゼンへの応用


ここまでのマーケティングコミュニケーションへの学びは、ビジネス全般にも示唆があります。

例えばプレゼンにも応用できます。プレゼン用スライドに、自分の言いたいことの全てを入れていないでしょうか?

受け手への情報過多なプレゼンにしないために、次のことをやってみるといいです。

✓ プレゼンで 「足る」 をつくるために
  • 必ずしも必要ではないスライドは末尾の付録パート (Appendix) に移動させる
  • 本編のスライドでも文字や図でぎっしりになっていれば、情報量を思い切って減らす
  • 1スライド1メッセージを徹底する (1スライド2メッセージになっていれば、スライドを2つに分ける) 

以上のような 「足るをつくる」 を、プレゼンでもぜひやってみてください!


まとめ


今回はおもしろいと思った CM を2つ取り上げ、学べることを見てきました。

最後にまとめです。

✓ コミュニケーションの余白設計
  • 伝える側はえてして多くを伝えようとしがち。しかし受け手は情報が多すぎると一度では消化できない
  • あえて全てを言わず、意図的に 「足る」 をつくるといい
  • 目的に立ち返り、伝えるべき本当に大事な情報を見極める。あえて言わない内容は覚悟を持って捨てよう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。