投稿日 2022/10/01

人気の 「白くて丸いマッサージチェア」 に学ぶ、顧客定義を広げる差別化戦略


今回のテーマは、顧客定義と差別化戦略です。

おもしろいと思ったマッサージチェアを取り上げ、マーケティングに学べることを見ていきます。

✓ この記事でわかること
  • 白くて丸いマッサージチェアが増えている
  • 設置企業のニーズ、利用者のニーズ
  • 「お客さんのお客さん」 にでベネフィットを提供し、差別化しよう

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

白くて丸いマッサージチェア


こちらの記事を読みました。

進化がすごい! 「白くて丸いマッサージチェア」 を生んだ、圧倒的な差別化戦略|ITmedia

出典: ITmedia

以下は記事のリード文の引用です。

最近、街にマッサージチェア 「あんま王」 が増えている。無重力感覚をうたう機能や、包み込むような丸いデザインが印象的なマッサージチェアだ。

設置場所は増加を続け、銭湯・温泉などの温浴施設だけではなく、大型ショッピングモールや空港、ネットカフェ、コインランドリーなどへも設置されている。

生まれた背景について、記事から続けて見てみましょう。

これまで、他社製品も含めて施設に置くマッサージチェアは大半が黒で、それ以外も茶色など暗い色が中心だった。その理由はヘアカラーや洋服の色がマッサージの圧でレザーに移ってしまうことが多いからだ。

 「ぐりぐりとマッサージされる中で (色移りの) すじが付いてしまい、不衛生感が出てしまいます。しかし、黒はそうした跡が目立たないので、ほとんどのマッサージチェアは黒だったんです」 と城田裕之会長は説明する。

 「われわれは黒が普通だと思っていたのですが、商業施設や温泉・ホテルなどから『 (黒い製品は) 景観が悪い』『ロビーに置きづらい』との声が出てくるようになったんです。これまで真っ白のマッサージチェアはあまりなかったので、勝負をかけました」 (城田裕之会長) 

そうした要望により、あんま王4はシリーズで初めて白いカラーに挑戦した。ただし、人が多く触れる部分は黒のレザーで統一。顔周りの壁を高くし、外側に白色を採用した。

 (中略) 

 「『白だったら導入したい』という施設もあり、新しい導入にもつながっています。黒も用意していますが、あえて黒がいいというのはネットカフェぐらいで、商業施設などではほとんどが白を導入しています」 (城田裕之会長) 

設置企業のニーズ


白色で見た目からの設置のしやすさ以外にも、設置企業からのニーズがありました。

一部のチェア利用者が、マッサージチェアを不適当に占領する問題を解消したいという要望です。

音声機能も強化した。「お金を入れてください」 「ご利用ありがとうございました」 「次の方にお譲りください」 といった音声を状況に応じて流すように設定できる。これの機能は、提供施設の声から生まれた。

 「これはずばり、居座り防止機能なんです。『ベンチ代わりに使われている』『たまり場になるから置きたくない』といった声を施設から聞いていました。お客から『ずっと座っている人がいるからどかしてほしい』とクレームを受けている施設もあったんです。この機能を使うと、座ってお金を入れない場合は15秒や30秒ごとに『お金を入れてください』とアナウンスを続ける設定もできます。すると、なかなか強固なメンタルを持っている方でない限り居座りはできなくなるわけです」 (城田充晴社長) 

利用者のニーズ


マッサージチェアを使う生活者にも、これまでのマッサージチェアには不都合なことがありました。

まわりの人に、マッサージ中の自分の顔を見られてしまうという恥ずかしさです。

包み込むように丸いビジュアルも最新機種のこだわりだ。人の往来が多い場所で利用する際に、「外から見られたくない」 という声に応え、顔周りを深く包み込むようなデザインに加えて、フェースフードを備え、下すと外から完全に顔が見えないようにした。

こうした人がまるで個室の中に入り込むようなデザインも、他の製品との差別化ポイントになっている。
フェイスフードを下ろすと利用中に顔を見られる心配はない (出典: ボディワークサービス


顧客定義と差別化


ここまで見てきたように、マッサージチェアの 「あんま王」 は設置企業と利用者 (生活者) の両方のニーズに対応しています。

直接のお客さんであるチェアの設置企業だけではなく、その先のマッサージチェアの利用者 (設置企業にとってのお客さん) のニーズも汲み取っているわけです。

ビジネスの根幹は 「自分たちのお客さんは誰か」 です。

お客さんの定義をどこまで広げるかで、今回の話からの教訓は 「お客さんのお客さん」 にまで広げることの重要性です。

お客のお客の問題まで解決しベネフィットを提供できれば、直接のお客さんにも喜んでもらえます。直接のお客さんとのビジネス関係がより強化され、お客さんにとって自社はパートナーのような存在にまで高まります。

他社ではなく、自分たちが選ばれる理由がさらに強くなるのです。


まとめ


今回は白くて丸いマッサージチェアをご紹介し、マーケティングに学べることを見てきました。

最後にまとめです。

✓ お客さんのお客さんへのベネフィット提供
  • ビジネスの根幹は 「自分たちのお客さんは誰か」 。お客のお客にまでベネフィットを提供できれば、直接のお客さんにも喜んでもらえる
  • お客にとってのパートナーのような存在になり、他社ではなく自分たちが選ばれる理由がさらに強まる
  • お客さんの定義を 「お客さんのお客さん」 にまで広げてみよう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。