投稿日 2022/11/18

ごはん化で 「第四のごはん」 を狙うオートミール。ポジショニングのつくり方

出典: ITmedia

今回のテーマは、ポジショニングをどうつくるかです。

おもしろいと思ったオートミールのマーケティングを取り上げ、学べることを掘り下げます。

✓ この記事でわかること
  • オートミールのマーケティング課題とは?
  • 「第四のごはん」 ポジションを狙う
  • 既に使われている何と置き換わるのかという視点
  • ポジショニングに必要なのは 「独自性」 と 「メリット」 

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

オートミール


こちらの記事を読みました。

オートミールを茶碗によそって箸で食べる!? 日本市場を狙うケロッグの意外すぎる作戦|ITmedia

マーケティング課題


オートミールを知っている人は多いものの、食べたことがある人はまだまだ少ないというのが、ケロッグのマーケティング課題でした。つまり、認知と利用経験のギャップをどう埋めるかです。

記事から引用すると、

オートミールの認知度は約9割にまで上昇したものの、直近1年で食べたことがある人は約 10% と、認知度と喫食経験に大きな乖離があった。
出典: ITmedia

では、喫食経験者はどのようにオートミールを食べているかと言うと、

食べ方で見ると、おかゆやリゾットのようにして食べる人が 42% とオートミールの米化が浸透しつつある一方、おにぎりなど米と見立てて調理する人は 23% にとどまっていた。
出典: ITmedia

米化ではなく 「ごはん化」 


では、どうやってオートミールを食べてくれる人を増やせばいいのでしょうか?

オートミールをお米のような状態にして食べる 「米化」 ではなく、「ごはん化」 を目指すとのことです。「ごはんそのものとしてオートミールを食べてもらおう」 というのが、ケロッグのアプローチです。

そこで同社が着目したのが、"米化" ではなく、ごはんとして食べる、すなわち "ごはん化" だ。同社マーケティング本部ブランドマネージャーの西村香里さんは、「そこに市場拡大の余地があるのではないかと考えた」 と振り返る。

単なる米化ではなく、完全にごはんとして食べられる商品を作る。そこで開発したのが、茶碗によそって箸でたべる 「粒感しっかり オートミールごはん」 だ。「徹底的にこだわったのは、"ごはん" の食感と味わいをオートミールで再現することです」 (西村さん) 
出典: PR TIMES

記事では、オートミールを 「第四のごはん」 というポジションを狙うと書かれていました。

出典: ITmedia

ここまで見てきた内容をいったんまとめると、次のようになります。

  • オートミールの認知はあるが、食べたことがある人は少ない (ケロッグのマーケティング課題) 
  • 新たに 「粒感しっかり オートミールごはん」 を発売 (課題への打ち手) 
  • 米化ではなく 「ごはん化」 から、第四のごはんのポジションを狙う


学べること


それでは、ここからの記事の後半ではケロッグのオートミールの話から学べることを掘り下げていきましょう。

オートミールからは 「何と置き換わるのか」 というポジショニングのつくり方に示唆があります。

何と置き換わるのか


オートミールは今までは 「米化」 がされていました。

米化をする方法は大きく2つあり、茶碗一杯分を電子レンジで加熱するか、まとめて鍋で煮て蒸します。

米化の例はリゾットです。しかしリゾットは、一般的には献立で頻繁に登場するわけではなく、オートミールを食べる、つまり置き換えられる機会は限られます。

そこで 「米化」 ではなく 「ごはん化」 です。主食として食べられる白米の置き換えを狙うわけです。

ただし、 勝負をする相手の白米は主食の中でパンと 1, 2 を争う王者的な存在です。どうやって牙城を崩していけばいいのでしょうか。

消費者の認識のアップデート


マーケティングの観点からはまずは消費者の認識を変えるところからです。

オートミールを知っている人は9割いますが、食べたことがある人は1割というのが調査結果でした。

そこで、知っている人が 「オートミールはご飯の代わりに食べられるもの」 という認識を持ってもらうために、マーケティングから働きかけをしていくのが次の課題です。

売り物と売り場の連動


有効な手の1つは、オートミールをお米と一緒に並べて売り出すことです。

従来のシリアル売り場だけでなく、お米売り場での展開も実施する。

 「これまでオートミールを食べたことがない消費者にも、主食の選択肢の1つとして手に取ってもらえるようにしていきたいです」 (西村さん) 

今までのケロッグのオートミールでは実現は難しかったかもしれませんが、新商品の名前が 「粒感しっかり オートミールごはん」 と 「ごはん」 が入っているので、お米売場で売られていても違和感はありません。

前半で引用した記事のタイトルには 「オートミールを茶碗によそって箸で食べる」 とありましたが、オートミールをお米売場に置き、茶碗に入れてお箸で食べるイメージを添えるとより効果的でしょう。

オートミールを使った親子丼 (出典: PR TIMES

ポジショニングに必要なこと


とはいえ、作り手や売り手が一方的に伝えても、消費者が興味を持ったり自分ごと化しなければ、オートミールの 「第四のごはん」 という認識 (ポジショニング) はつくられません。

今まで食べたり買っていたものに比べて、新しくスイッチをするにはそれなりの理由が必要だからです。

スイッチ理由は大きく2つあり、独自性とメリットです。

他にはないオートミールならではの独自な何かと、そして既存のもの (白米や雑穀米など) と比べてオートミールにする価値があることです。

ポジショニングをつくるポイントは 「独自性」 と 「メリット」 です。


まとめ


今回はオートミールを取り上げ、マーケティングに学べることを見てきました。

最後にまとめです。

✓ ポジショニングのつくり方
  • ポジショニングをつくるには、まずはお客さんの認識を変えるところから
  • ただし、売り手が一方的に伝えても、買い手が自分ごと化しなければ狙うポジショニング (お客さんの認識のアップデート) はできない
  • 他にはない独自性をつくり、お客さんにメリット (価値) を提供し、新しいポジショニングを狙おう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。