投稿日 2022/11/15

なぜ時計修理の送付用箱にビスケットが?わかりみ深いマーケティング

出典: 修理工房

今回のテーマは、マーケティングコミュニケーションです。

おもしろいと思った、ある時計修理サービスをご紹介し、マーケティングに学べることを掘り下げていきます。

✓ この記事でわかること
  • 名古屋修理工房が送る1つのビスケット
  • わかりみ深いビスケットの意味
  • 共感につなげるマーケティングコミュニケーションの方法

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

時計を送る箱の中にあるビスケット


ご紹介したいのは、時計の修理サービスを行う名古屋修理工房の取り組みです。

修理する時計をお客さんから送ってもらうために、修理工房はまず梱包キットをお客さん宛に送ります。おもしろいのは、送付用の箱の中にビスケットが1つ入っていることです。

出典: 修理工房

このビスケットはロータス社のお菓子で普通に食べられるのですが、このビスケットには深い意味があります。

ビスケットが入っている理由


健康食品を頼むと別の試供品が入っていることがありますが、修理工房が入れているビスケットはロータス社のサンプル品ではありません。お客さんへの配慮です。

もしビスケットが割れていたら、送付用の梱包キットの配送経路で何かしらの問題があったことがわかります。例えば箱が乱暴に扱われたり、移動中に大きな衝撃があったということです。

ビスケットが割れていなければ経路に問題がないので、大切な時計を梱包キットに入れて送ってほしいという修理工房からお客さんへのメッセージなのです。

輪廻転生の象徴


ビスケットには実はもう1つ意味があります。

入っているビスケットはロータスという会社が作ったものです。

ロータスの和名は、植物の蓮 (はす) です。蓮は輪廻転生を象徴します。

一度壊れても修理をすることで再び命を吹き込み、使えるようにすることが自分たちの役割である。これを輪廻転生と重ね合わせているわけです。


お客さんへのメッセージの伝え方


名古屋修理工房のビスケットの話は、お客さんへの伝え方に示唆があります。

 「常識と芸術の間」 


1つ補助線としてご紹介したいのは、広告コピーってこう書くんだ!読本 (谷山雅計) に書かれていたことです。


それは、「優れた広告コピーは "常識" と "芸術" の間にある」 というものです。

ここで言う 「常識」 とは聞いても当たり前と思うこと、「芸術」 とは聞いても何を言っているのか意味がわからないことを指します。

優れた広告コピーとは見たり聞いたりした時に、「それは当たり前」 (= 常識) でもなく、「何を言っているのかわからない」 (= 芸術) でもなく、ちょうどその中間にあるというわけです。広告コピーを見た時に、「そういえばそうだね」 と思えるものです。

✓ 常識と芸術の間
  • それは当たり前 [常識]
  • そういえばそうかも [広告コピー]
  • わからない [芸術]

広告コピーの役割は、それを見た時に相手に気づきを与えることです。優れた広告コピーは、言われて初めて、普段は意識の下に眠っているものを呼び起こすわけです。

名古屋修理工房のビスケットは、常識と芸術の間にあるメッセージです。

わかりみ深さからの共感


一般的に、コミュニケーションは相手にわかりやすいほうがいいですよね。

マーケティングコミュニケーションでは、自分たちの特徴、強み、お客さんへの価値をいかに相手にわかりやすく伝えられるかが大事です。

一方で、ウィットに富んだ伝え方は、背後にある真意も伝われば、お客さんにとってはそれだけで少し特別な体験になります。

名古屋修理工房が、もし梱包キットの配送経路が問題ないことを堅苦しい証明書のような紙で入れていたり、自分たちがやっていることを 「輪廻転生です」 と直接的に言葉でのみ書いていれば、お客さんはどう感じるかです。

もちろん、全員がビスケットの意味合いをしっかりと理解してくれるわけではないでしょう。しかし理解してくれた人には、共感や愛着を抱いてもらえる。そんなマーケティングコミュニケーションがあってもいいですよね。


まとめ


今回は、名古屋修理工房の 「修理する時計を送る箱」 に入っているビスケットを取り上げ、マーケティングに学べることを見てきました。

最後にまとめです。

✓ わかりみ深い伝え方
  • 一般的に、コミュニケーションは相手にわかりやすいほうがいいが、時にはウィットに富んだ伝え方も有効
  • 全員ではないが、理解してくれた人には共感や愛着を抱いてもらえるので、わかりみ深いマーケティングコミュニケーションをやってみよう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 合同会社の代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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最も力を入れているのはニュースレターです。

名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。