投稿日 2022/11/03

具なし中華まん 「すまん」 。引き算からの余白設計と、共創マーケティング

出典: 井村屋

今回のテーマは、売り手と買い手の共創からの商品開発やマーケティングです。

おもしろいと思った中華まんを取り上げ、マーケティングに学べることを掘り下げます。

✓ この記事でわかること
  • 具が入っていない中華まん 「すまん」 
  • 主役を外し、脇役を抜擢させた商品
  • 消費者との共創マーケティング
  • 引き算からの余白設計 (学べること) 

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

中華まんの具がない 「すまん」 


ご紹介したいのは、井村屋のユニークな中華まん 「すまん」 です。

出典: 井村屋

特徴は具が入っていないことです。

商品名の 「すまん」 の意味には、「素 (す) の中華まん」 の他に、「肉まん・あんまんの井村屋がつくるのに具が入ってなくてすまん!」 という意味合いも入っているようです。

EC で完売


ITmedia の記事には、「すまん」 について次のように書かれています。

井村屋が2020年に発売した、具なし中華まん 「すまん」 の売り上げがじわじわと増えている。

EC 限定の第1弾は約2カ月で完売。第2弾を21年に販売したところ、出荷量は約4倍に増えて第1弾同様に完売となった。

開発のきっかけ


具が入っていない 「すまん」 が生まれたきっかけは、井村屋の公式 Twitter に寄せられた消費者の声でした。

SNS チームの担当者は、「最初に『肉まんの生地だけが食べたい』という Tweet があったのは14年です。その後も、同じような声を SNS で度々見かけていました」 と説明する。

ギョーザの場合、スーパーで皮だけが販売されており、自宅で消費者は好きな具を包んで楽しんでいる。そうしたことから、具なしの中華まんにも商機があるのではないかと考えたという。

消費者との共創


 「すまん」 の開発やマーケティングで注目したいのは、SNS で消費者に共有したことにあります。

先ほどの ITmedia の記事によれば、例えば、開発部とのやりとりをリアルタイムで公式 Twitter で発信し共有したとのことです。

また、500人にすまんをプレゼントし、アレンジ案を SNS に投稿してもらうキャンペーンも実施しました。応募者が投稿したアレンジレシピに井村屋の社長が目を通している様子も Twitter に投稿するなんてこともしたそうです。

アレンジレシピ 「くまちゃん」 (出典: ITmedia

メーカーと消費者が共につくっていくという共創が実現しています。

想定外のニーズの掘り起こし


中華まんの具をなくしたことで、これまでは捉えきれなかったニーズを見出しました。

すまんを発売してみて、どのような反響があったのか。

 「自分だけの ●● まんがつくれる」 という喜びの声が多くあったのは想定内だった。

一方、意外だったのは 「皮だけで食べてみたかった」 という反響が思いのほか多かったことだ。担当者らは、「肉まんと同じ感覚で、おやつとしてすまんを食べる」 「朝食時に、食パンと同じような感覚で食べる」 といった利用がされているのではないかと分析する。

学べること


ではここからの後半では、「すまん」 から学べることを掘り下げていきます。

一言で表現をすれば、学びは 「引き算によって参加できる余白をつくってみよう」 です。

ポイントは2つで、「引き算」 と 「余白」 です。

引き算の商品開発


 「すまん」 は、具という中華まんの主役をあえて取り除いています。中華まんの皮という、いわば脇役だったものを主役に抜擢したわけです。

普通の中華まんの主従関係を逆転させ、さらに今までの主役 (具) をなくしてしまう、中華まんの常識を変えるくらいの大胆な引き算があるのです。

参加できる余白


具という主役をなくしたことで、「すまん」 には余白が生まれました。

ここで言う余白とは、大きく2つの意味があります。

✓ 余白の意味
  • 食べ方やレシピの募集などマーケティングコミュニケーションの工夫の余地
  • 消費者にもそのまま食べる以外にも、自分の好きなようにアレンジを楽しめる機会

商品開発だけでなく、発売後も続くメーカーと消費者、つまり売り手と買い手のコラボレーションが生まれ、他にはないユーザー体験がもたらされているのです。

未完での共創マーケティング


今回の事例は、共創での商品開発やマーケティングにヒントがあります。

最初からつくり込みすぎず、あえて未完成の状態で出すというアプローチです。

完成度が高いことは一般的には良いことですが、別の捉え方をすると、もうそれ以上は発展の余地がないということです。

一方、意図的に余白をつくり、消費者やお客さんが参加できる 「遊び」 のようなものを用意しておけば、参加することで自分ごと感がより強くなるわけです。

引き算からの余白設計は、商品開発やマーケティングへの新しい切り口になります。


まとめ


今回は具なしの中華まん 「すまん」 を取り上げ、商品開発やマーケティングに学べることを見てきました。

最後にまとめです。

✓ 引き算からの余白設計
  • 完成度が高いことは一般的には良いが、もうそれ以上は発展の余地がないとも言える
  • あえて未完の状態で出せば、お客さんは余白に参加することで自分ごと感がより強くなる
  • 引き算の発想で、参加できる余白をつくり、共創での商品開発やマーケティングをやってみよう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 合同会社の代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。