脳トレ手芸シリーズ (出典: @Press)
今回のテーマは、顧客理解です。
おもしろいと思ったシニア向けの 「脳トレ手芸シリーズ」 を取り上げ、マーケティングに学べることを掘り下げます。
✓ この記事でわかること
- シニア向けの脳トレ手芸シリーズ
- アプリではなく、フィジカルにしている理由
- 「売り手の合理 ≠ お客さんの合理」
- 本当の顧客視点からのマーケティングとは?
よかったら最後までぜひ読んでみてください。
シニア向けの脳トレ手芸
以下は、日経新聞のコラム記事からの引用です。
手芸用品大手、ユザワヤ商事 (東京・大田) の 「脳トレ手芸シリーズ」 が50代、60代の女性に好評だ。
2020年12月の発売以来、第1弾 「クロスステッチ刺繍 (ししゅう) キット」 と第2弾 「編み物キット」 の累計販売数が約2万6000個となった。同社によれば従来品の4倍規模とのことで、縮小気味の手芸市場では異例のヒットだ。
脳トレ手芸シリーズ (出典: @Press)
アプリには苦痛を感じて続かない
脳トレとしてスマホのアプリを使っていないのは、シニア層のことを配慮しているからです。
手芸が脳トレにもなる点だ。千葉県柏市の斉藤由美子さん (仮名, 61歳) は 「長男が誕生日に贈ってくれたのをきっかけに始めた。もともと手芸は好きなので楽しいことを続けるとボケ防止にもなるというのがうれしい」 と語る。
脳トレとは 「脳を鍛えるためのトレーニング」 である。効果を上げるには、パソコンやスマートフォンなどのアプリでそれなりの負荷を脳にかけなければならない。ところが、高齢になるにつれ、この負荷を苦痛に感じて中断する人が多い。
そこでスマホなどで脳トレに取り組む代わりに、日常生活のなかで自分が好きなことに取り組むと、自然と脳が鍛えられ、継続もされやすいと考えられる。
「自己復活消費」
手芸での脳トレには、昔やっていた馴染みのあることのほうが始めやすく、続けられるという狙いについて、もう少し記事から見てみましょう。
昔やっていたことにもう一度取り組み、自分らしさを取り戻そうとする消費を筆者は 「自己復活消費」 と呼んでいる。こうした消費形態はおおむね50代以降に見られる。脳トレシリーズが好評な理由の1つは、この消費形態を後押ししている点だ。
自己復活消費は子育て終了や退職などを機に時間の拘束から解放されると起こりやすい。また50代になると、老眼など感覚器の衰えや認知機能の衰えで、新しいことに取り組むのがおっくうになっていく。このため新しいことより昔慣れ親しんだことの方が取り組みやすくなる。
学べること
では、今回の話題から学べることを整理していきましょう。
見ている景色の違い
問題意識として持っておきたいのは、 商品開発やマーケティングにおいて、自分たちの見ている景色を前提に考えたり、決めていないかです。
知らないうちに 「自分たちが良いと思うもの = お客さんにとって良いもの」 としていないでしょうか。
必ずしもそうではないんですよね。
お客さんの合理
シニア向けの脳トレに当てはめれば、アプリを前提に施策を考えてしまうのは自分たちには良いことでも、お客さんにとってそうとはかぎりません。
脳トレをするのにアプリやパソコンを使いたくない、手芸などの物理的なほうがいいということには、シニアの人にはちゃんと理由があるわけです。
お客さんにはお客さんの都合や文脈があります。例えば、スマホのアプリではやがては苦痛を感じ中断してしまう、あるいは 「自己復活消費」 という昔に自分がやっていたことをもう一度やり、あの頃の自分に戻り追体験したいという気持ちです。
これらがお客さんが持っている文脈、見ている景色なのです。
本当の顧客視点からのマーケティング
もしお客さんのことを非合理に思えるとしたら、それはまだお客さんを十分に理解しきれていない状況にほかなりません。
最後にまとめとして、本当の顧客視点とは何かの整理です。
✓ 顧客視点からのマーケティング
- 自分たちの合理 (バイアス) を捨てる
- ターゲット顧客の立場になり、お客さんと同じ文脈を理解し、同じ景色を見る
- お客さんの合理に沿った戦略や打ち手につなげる
マーケティングで大切にしたいことです。
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