出典: 食品新聞
今回のテーマは 「お客さんへの価値をどうやって高めるか」 です。利用シーンの 「不」 を解決する価値創出という話です。
おもしろいと思った食用油から、マーケティングに学べることを掘り下げていきましょう。
✓ この記事でわかること
- 利便性と環境対応を両立する食用油 「スマートグリーンパック」
- 開発への問題意識
- メーカーが見落としがちなこと
- 利用シーンをヒントに価値を高めよう
よかったら最後までぜひ読んでみてください。
J - オイルミルズ 「スマートグリーンパック」
ご紹介したいのは J - オイルミルズの食用油です。
ラインナップのシリーズ名は 「スマートグリーンパック」 と言います。
出典: 食品新聞
スマートグリーンパックの特徴は紙容器を採用しデザインを工夫したことで、使いやすく廃棄もしやすいことです。
好調な売上
以下は日経新聞からの引用です。
J - オイルミルズの紙パック容器の食用油 「スマートグリーンパック」 シリーズが好調だ。
プラスチック容器と比べて賞味期限が長く、サラダなどの料理に使う小口と揚げ物など調理に使う大口の2つの注ぎ口をつけて用途で選べるようにした。3月に対象の油種を拡大。4月には同シリーズの売上高が前月比4倍に伸長したという。
開発の背景
スマートグリーンパックの開発にあたっての問題意識は 「利便性とコストの優位性がないと続かない」 というものでした。
従来の食用油は、大口の注ぎ口が1つ付いたプラスチック容器が一般的だ。ごみ区分では 「その他プラスチック容器」 にあたり、リサイクルできる通常のペットボトルとは扱いが異なる。
スマートグリーンパックは捨てやすさや使いやすさを追求し、容器を紙で作った。酸素侵入を防ぎ遮光性に優れた素材を使用して油染みがないように工夫。菜種が原料のキャノーラ油やごま油などは賞味期限をこれまでの1年から2年に伸ばせるという。
容器の側面には、廃棄時にたたみやすくする折りたたみ線を入れたほか、「ここを持つ」 というオレンジ色のマークを付けた。マークには凹凸加工を施し、注ぐときに持ちやすくした。「小さくたためて燃やすごみに入れられるため、容器の処分が楽になった」 などの反響があったという。
注ぎ口にもこだわった。サラダなどに少量かけられる小口と、揚げ物時に量を注ぐ大口の2つの用途で使えるように構造を工夫した。
ただ油は粘性が高く、特に小口で液だれを防ぐのが難しかった。色や材質、形状などを20パターン以上試し、最終的に注ぎ口に 「返し」 を付けて液だれしないようにした。「5000回くらいはひたすら注いだ」 (宮崎氏 (引用者注: 開発に携わった油脂事業統括部家庭用事業部の宮崎朋江氏) ) という。
学べること
スマートクリーンパックから学べるのはお客さんへの価値をどうやって高めるかです。
デザインからの価値提供
J - オイルミルズは食用油容器のパッケージデザインを新しくし、利便性と環境対応の両立を目指しました。これにより商品のエンドユーザーである消費者に価値をもたらしています。
✓ 消費者への提供価値
- 持ちやすく、大口と小口の2つがあり、用途ごとに油を注ぎやすい
- 液だれしにくい
- 使い終わったら捨てやすい
見落としがちな顧客の 「不」
一般的にメーカーが注力するのは商品の中身です。食用油に当てはめれば味、成分、香り、保存可能期間などです。
もちろんこうした商品の品質面は重要ですが、一方で見逃しがちになるのは商品を利用する時や利用後に生じている使い勝手、特に不便や面倒などの 「不」 です。
食用油の場合は、
- 大きいサイズで、容器に取ってがないことによる持ちにくさ
- 注ぎ口が大きすぎて、ドバッと油が一度に出てしまう
- 油が液垂れし容器がぬるぬるしてしまう (毎回ふかないといけない)
- 使い終わる前に賞味期限を迎えてしまう。もったいないので期限後も使うが、あまりいい気持ちにならない
- 捨てるのは 「その他プラスチック」 なので、リサイクルできずもったいないと感じる
- 容器が大きいので、そのままだとゴミ箱の中でスペースを取り、他のゴミが入らなくなる
こうした台所での 「不」 が消費者の家庭では生じてしまっているわけです。
J - オイルミルズは、パッケージのデザインを新しくした 「スマートグリーンパック」 によって問題解決をしています。
利用シーンにヒントあり
お客さんの使い方、使っている状況には価値提供につながるヒントがあります。
メーカーの仕事は、製品を作って売って終わりではありません。
- 自社商品は誰がどのように使っているのか
- 利用中、利用後で不都合なことはないか
- それらはどのように解決できるか
これらが価値につながる問いかけです。
まとめ
今回は食用油の 「スマートグリーンパック」 を取り上げて、マーケティングに学べることを見てきました。
最後に学びのポイントをまとめておきます。
✓ お客さんの利用シーンにヒントあり
- 売り手が見逃しがちなのは、商品の利用中や利用後に生じている不便や面倒さ
- メーカーの仕事は、製品を作って売って終わりではない
- 自社商品は誰がどのように使うか、利用中や後で不都合なことはないか、それらはどのように解決できるかを自分たちに問いかけ、お客さんへの価値につなげよう
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