出典: ハナノヒ
今回のテーマは戦略です。
おもしろいと思った花のサブスクサービスを取り上げ、戦略やマーケティングに学べることを掘り下げます。
✓ この記事でわかること
- 日比谷花壇のサブスク 「ハナノヒ」
- わざわざ実店舗で受け取ってもらう狙い
- 「点」 ではなく 「線」 と捉えよう
- 美しくて 「わかりみ深い戦略」 のつくり方
よかったら最後までぜひ読んでみてください。
日比谷花壇のサブスクサービス
こちらの記事を読みました。
サブスクで3万人獲得 - 日比谷花壇の成功要因は実店舗にあり|日経クロストレンド
リード文を引用すると、
日比谷花壇 (東京・港) の花のサブスクリプション 「ハナノヒ」 。3万人の会員を獲得したブランドの成功要因は、競合他社と違って実店舗で花を受け取ることによる "体験の厚み" だ。
ハナノヒの公式サイトはこちらです。
実店舗で受け取ってもらう狙い
一般的に花のサブスクは利用者の自宅に毎週や隔週の頻度で配送され、直接受け取るかポストに投函されます。実店舗で受け取る日比谷花壇のサブスク 「ハナノヒ」 は、めずらしい形式です。
なぜハナノヒは、実店舗まで花を取りに来てもらっているのでしょうか?
日比谷花壇がハナノヒのサービスを開始した理由は、日常的に、もっと気軽に花を楽しんでもらいたかったからだという。
これまでの花は、誕生日や記念日に贈る 「特別なギフト」 という印象が強く、自分のために購入する人は少なかった。また、「自宅に花を飾ってみたいが、そのためにわざわざ花屋に行くのはハードルが高い」 という人も多かったという。
日比谷花壇のビジネスソリューション事業本部 ホームユース事業推進室 マネージャーの谷真由美氏は、「花や花屋をもっと身近に感じてもらい、気軽に購入できるシステムをつくりたかった」 と話す。
(中略)
「配達ではなく『実店舗で受け取る』形式にした理由は、実際に花屋を訪れてより多くの花に触れてほしかったから。店頭に並ぶ四季折々の花々から、季節を感じてほしかった。店頭では、プラン以外の切り花やグリーン、花瓶や花持ち剤などを一緒に購入してくれる人も多く、花への関心を深めてもらえていると感じている」 (谷氏)
結果はどうだったか
実店舗で花を受け取るようにした結果について、続けて記事から見てみましょう。
サービス開始後に意外だったのは、女性だけではなく男性も多数利用してくれたこと。
利用者の約 10% は 30 ~ 40 代の男性で、自分用に契約した人もいれば、配偶者に頼まれて契約した人もいるようだ。会社の昼休みを利用して花を受け取りに来る人も多いという。
仕事の休憩時間や、家事の合間など "隙間時間" を活用して利用できるのもハナノヒの魅力だ。
(中略)
実店舗で受け取る形式にしたことで、利用者からは 「家にこもりがちな with コロナの生活を豊かにしてくれた」 「リモートワークで部屋に引きこもっていたけれど、ハナノヒのおかげで散歩をする機会ができた」 といった声が寄せられるという。
新型コロナ禍で気分が落ち込みがちな生活者に、心理的な潤いを提供するというサービスの本質的価値が評価されたのだろう。
学べること
では、ハナノヒから何が学べるかを掘り下げていきましょう。
次につなげる布石
ハナノヒは、日比谷花壇のサービス全体で見た時に 「布石」 の役割を果たしています。
1回で花を1本から選べるリーズナブルなサブスクのプランもあり、ハナノヒは日常生活で花に接する人を増やし、花のライトユーザーの受け皿になっているわけです。
ハナノヒがおもしろいのは 「その先」 が設定されていることにあります。
日比谷花壇の実店舗にハナノヒの利用者に来てもらい、サブスクの花以外にも季節ごとの花を楽しんだり、さらにはお店でもお花を買ってもらうことにつなげています。通常の花のサブスクは自宅に送られてくるので、それ以上の 「花との接点」 は増やせません。
ここがマーケティングの観点でうまいと思えるところで、ハナノヒはサブスクのユーザーの来店と購入増が仕組みとしてできています。
一見すると非合理、よくよく見ると合理的
ハナノヒから学べることを一般化して表現すると、全体像をより広く見る重要性です。
サブスク単体で見れば、実店舗で受け取ってもらうのは、利用者からすると使い勝手が良いとは言えません。わざわざお店に足を運ぶという手間が発生するからです。
しかし実店舗に来ることのポジティブな側面に注目すれば、利用者は気分転換やちょっとした運動になったり、日比谷花壇のお店で色々な花に接することで日常生活に彩りが生まれます。
日比谷花壇にとっては、ハナノヒを入口に花のライトユーザーからヘビーユーザーになってもらえることが期待できます。
戦略の観点では、ハナノヒには 「ある部分だけで見れば非合理だが、全体で見れば合理的である」 が実現されていて、美しく 「わかりみ深い戦略」 があります。
ちなみにこのような戦略の話は ストーリーとしての競争戦略 (楠木建) という本に詳しく書かれているので、よかったら読んでみてください。
まとめ
今回は日比谷花壇のサブスク 「ハナノヒ」 を取り上げ、マーケティングに学べることを見てきました。
最後にまとめです。
✓ わかりみ深い戦略とは
- 「ある部分だけで見れば非合理だが、全体で見れば合理的である」 があると、ストーリーのある美しい戦略になる
- 商品やサービスを単体として 「点」 では見ずに、全体像をより広く見て 「線」 で捉えよう
- 点では非合理でも、線にすると合理的になればわかりみ深い戦略になる
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