SNS とリアルを行き来し、情報を独特な感覚で取り込む Z 世代。彼ら・彼女らに対するマーケティングはどんなアプローチが効果的なのでしょうか?
今回は、Z 世代に自社商品を自分ごと化してもらうためのポイントを探っていきます。
Z 世代の情報接触の特徴
若者の SNS やテレビ番組、ニュース等への情報への接触を見ていきましょう。
SNS への常時接続と受け身
特徴的なのは、SNS への接触態度と活用方法です。
出典: MarkeZine
森永: 私は博報堂 EY メディアパートナーズ メディア環境研究所で、若者の研究もしております。
(中略)
森永: 続いて Z 世代とメディアについて話していきたいと思います。Z 世代に聞き取り調査をしたところ、SNS 活用態度の特徴は3つありました。
一つ目は、SNS に常時接続していて、どんなメディアにアクセスするにも SNS がベースになっていることです。SNS は情報行動のホームポジションで、SNS 経由でテレビを見たり、ネットニュースを見たり、雑誌・新聞を買ったりしていることがわかりました。
森永: 二つ目が、日常的なメディアと能動的なメディアがこれまでの世代と逆転していること。上の世代にとっては家でつきっぱなしだったテレビやラジオが、日常的に触れて目に入ってくるメディアで、インターネットは 「わざわざ見に行く」 能動的なメディアです。一方、Z 世代は SNS が日常的なメディアで、テレビやラジオはわざわざ情報を取りに行くメディアになっています。
そして三つ目は、上の世代の反省でもありますが 「インターネット = 能動的メディア」 だと思いこんでいたことです。2000年代の中盤に 「これからデジタルネイティブ世代が育つぞ」 と上の世代が想像していたのは、能動的にデジタルを使いこなす恐るべき子どもたちでした。ところが今調査してみると、本当のデジタルネイティブ世代は、すごく受動的にネットを見ている様子でした。
Z 世代は SNS に常時接続し、情報行動のベースにしています。
テレビやラジオに対しても SNS 経由で接触することが多いようです。従来にあった 「ネットへは能動的に接するもの」 という捉え方と実は逆で、Z 世代はネットに対しては受動的な姿勢でネットを見ています。
「なじんできた」 という感覚
Z 世代が流行をいかに察知しているか、ヒット商品をどうやって知るかも興味深かったです。
森永: 「そういえば最近、色々な人が言っていた」 「よく見た・聞いた気がする」 という、自分の身の回りに対象が 「なじんで」 きたときにヒットしていると感じるようです。となると、今までの広告事業は 「アテンションを取る」 ことを重視していましたが、Z 世代には 「アダプテーション (なじむ) 」 までのコミュニケーションが大事になってきます。
森永: また、この人々がオンライン至上主義ではないことも発見でした。実はネット常駐型の人こそ、リアルやオフラインの関係を重視し、様々なメディアを見て情報のバランスを取ろうとする傾向があるのです。
出典: MarkeZine
注目したいのは、気になる情報が 「なじんできた」 という感覚です。
「そういえば最近、色々な人が言っていた」 「よく見たり聞く気がする」 と感じ、自分の身の回りの 「コミュニティ」 や 「界隈」 から情報が自然と入ってくると、その情報や商品が流行っていると認識するわけです。
Z 世代へのマーケティング
ではここまでを踏まえて、Z 世代に向けたマーケティングをどのように行えばいいかを掘り下げていきましょう。
アテンションからアダプテーションへ
従来の広告戦略では 「アテンション (注目) 」 をいかに早くを集めるかが重視されていました。
しかし、先ほどまで見てきたように若者の情報接触や流行の捉え方からは、Z 世代へのマーケティングでは、アテンションを一気に取るよりも 「アダプテーション (なじむ) 」 が大事です。
伝えたいメッセージや情報が溶け込むように、自然に受け入れられる状態をつくり出すわけです。
「なじんできた」 をつくる
アテンションからアダプテーションにシフトするとしても、マーケティングでやることの起点は変わりません。
マーケティングのはじまりは顧客理解です。お客さんの置かれた環境、行動と心理への深い理解です。表面的なニーズだけでなく、奥にある望みや不満、何に価値を見出すかの価値観までを捉えます。
若者が、流行り始めている情報を自分も気にしだしたり、ヒットしていると感じ始めるのは、自分のごく近い範囲でよく見聞きする状況になってからでした。背景には SNS に常時接続し、ネットへの情報は受け身の姿勢で接する情報取得行動があります。
こうした行動や心理を持つ人が多い Z 世代へのマーケティングは、正面から大量の情報を浴びせるのではなく、ふとした時に気づいてもらえるような存在感を出すことがポイントです。お客さんの横にいて寄り添っているようなイメージで、自然と情報を 「なじんできた」 という状態にもっていくのです。
具体的なマーケティング手法
では 「なじませるマーケティング」 を具体的に考えてみましょう。
たとえば、想定のお客さんが自然と触れられるようなコンテンツを作成し、日常的に使う SNS やアプリ上で表示させるといいでしょう。情報が自然と 「なじんでくる」 をつくり出すことで、お客さんの意識に自然と情報が入り込んでいくようにします。
また、インフルエンサーやリアルな友人などが商品やサービスについて話すシチュエーションをつくれると効果的です。自分が信頼する人からの情報は、より説得力のあり記憶に残りやすい形で情報が伝わります。
こうしたアプローチから、Z 世代にとって商品やサービスの情報が 「なじんできた状況」 をつくるマーケティングを展開するといいでしょう。
まとめ
今回は Z 世代の情報接触や流行への捉え方から、学べることを見てきました。
最後に学びのポイントをまとめておきます。
- Z 世代は SNS に常時接続し、ネットの情報には受け身の姿勢で接している。テレビやラジオの情報は SNS 経由で接触。オンライン至上主義ではなく、リアルやオフラインを行き来し、様々なメディアを見て情報のバランスを取ろうとする傾向がある
- Z 世代は 「そういえば最近、色々な人が言っていた」 などと、自分の身の回りから気になる情報が 「なじんできた」 という感覚になったときに流行やヒット商品を認識しはじめる
- マーケティングの起点は顧客理解。Z 世代の独特な行動や心理を理解し、情報を自然と 「なじんできた」 と感じる状況をつくるアダプテーションがポイント
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