投稿日 2023/08/23

英語学習アプリ abceed 。お客さんの 「前向きな変化」 を生むマーケティング

#マーケティング #価値提供 #前向きな変化


マーケティングの役割とは何でしょうか?

それは、お客さんの 「前向きな変化」 を起こすことです。では、そのためには何が必要なのでしょうか?

今回は英語学習アプリの事例から、どうすればお客さんの心の琴線に触れ、お客さんの態度や行動の変化を起こせるかを掘り下げます。ぜひ一緒に学んでいきましょう。

洋画を英語アプリで活用


出典: PR TIMES

英語学習アプリ 「abceed (エービーシード) 」 を開発する Globee (グロービー) が、洋画を英語教材として活用する新サービスを開始しました。映画のフレーズや単語の解説、ブックマーク機能、メモ機能などが用意されています。

 「Listen, would you have drafted me in the first round? (質問だ。君なら俺を指名したか?) 」 。ブラッド・ピット主演の映画 「マネーボール」 の序盤に出てくる重要シーンだ。主人公は将来を嘱望 (しょくぼう) されながら活躍できずに引退し、貧乏球団のゼネラルマネジャーとしてチームの再建に取り組む。目を付けた他球団のアナリストの分析力を見極めるため、過去の自分への評価を問い掛けた。

学生時代に 「would」 と 「have」 の用法を学んだものの、使いこなせず今日に至る人も多いだろう。このシーンの解説ボタンを押すと、「仮定法過去完了を使ったセリフです。(もし君に選ぶ権利があったら) 俺を指名したか?と聞いています」 と説明が出てくる。単語や文法だけでなく口語表現の解説もあるため、字幕だけでは分かりにくい点も学べる。

学べること


では英語学習アプリ 「エービーシード」 の事例から、学べることを掘り下げていきましょう。

ニーズの先にある体験


マーケティングでは、お客さんのニーズを満たすことが基本です。

今回の事例から学べるのは、ニーズを叶えた先にさらに 「豊かなユーザー体験」 をご褒美のように用意することで、お客さんの最初の期待を上回る満足感を生み出せるということです。このような体験は、お客さんに新鮮さや感動をもたらします。

英語学習アプリ 「エービーシード」 は、こうした体験を重視するアプローチを取り入れています。グロービーの幾嶋社長は次のように言っています。

グロービーの幾嶋研三郎社長は 「かたい内容の教材だと腰が重くなる人もいるが、映画などのエンタメは日常のなかに自然に入り込んでいる」 と話す。

アプリは 「あなたにおすすめ」 「人気ランキング」 などの項目ごとにコンテンツが並ぶ。ネットフリックスやアマゾンプライムといった動画配信サービスで見慣れた光景だ。ユーザーが使い慣れた操作性にすることで、学習という心理的なハードルを取り除く。

引用した中にあった 「映画などのエンタメは日常の中に自然に入り込んでいる」 という言葉が象徴するように、お客さんが実は望んでいるのは、ただ英語力を上げるだけではなく、学習過程も楽しむことです。

有名な人気映画を観るという体験を通じて、お客さんは楽しみながら語学学習ができ、結果的に英語力も向上するという当初のニーズも満たします。

行動分析学の応用


ここで補助線としてご紹介したいのは 「行動分析学」 です。

行動分析学は心理学の1つで、人の行動パターンを科学的に解析し、その背後にあるメカニズムを明らかにする学問です。行動後に 「メリットが生まれる」 または 「デメリットがなくなる」 ことが行動を起こす動機を見出します。

人が行動を起こす・起こさないを整理すると、

✓ 行動をする
  • (その行動をすると) メリットがあるから
  • (行動すれば) デメリットがなくなるから

これを逆に捉えれば、行動を起こさないのは、

✓ 行動をしない
  • (それをやっても) メリットがないから
  • (やってしまうと) デメリットがあるから

このように 「メリットのある・なし」 「デメリットのある・なし」 という視点で行動の見返りを捉え、具体的に何が動機となって行動するかを掘り下げるのが行動分析学です。

ちなみに行動分析学では、見返りが行動後60秒以内に発生すると、行動を呼び起こす影響が大きいとされます。

エービーシードの場合、英語学習に取り組むと洋画コンテンツが見られるというメリットが用意されているので、お客さんは英語学習アプリを立ち上げて学ぶという行動を取りやすくなるわけです。

マーケティングの役割


学びを一般化すると、行動後の適切なメリットを設計し、お客さんの成功をサポートすることで、自社サービスの利用を促しエンゲージメントを高められます。

マーケティングの役割は、お客さんの 「前向きな変化」 を引き起こすことです。そのためには、お客さんのニーズ、顧客インサイト (普段は無意識下にある奥にある本音) 、何に価値を見出すかの価値観までしっかりと理解し、心の琴線に触れる働きかけから態度や行動の変化につなげることが大事です。

マーケティングはお客さんの表面的なニーズを満たすだけでなく、期待以上の価値を提供することによってお客さんの満足を上げるのです。


まとめ


今回は英語学習アプリ 「エービーシード」 の事例から、学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

  • マーケティングの役割はお客さんの 「前向きな変化」 を起こすことにある

  • そのためには、お客さんのニーズ、顧客インサイト (普段は気づいていない奥にある望みや不満などの心理) 、何に価値を見出すかの価値観まで理解することから

  • 深い顧客理解にもとづいて、心の琴線に触れるアプローチを通じて態度や行動の変化を起こそう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。