お客さんはどんなことを求め、何に心が動かされるのでしょうか?
お客さんが商品やサービスを選ぶとき、何が決め手になるのでしょうか?
今回のキーワードは、マーケティングの重要な概念である 「顧客インサイト」 です。
生活者やお客さんの奥にある気持ちや価値観までを理解し、どう価値提案につなげればいいかを掘り下げます。ぜひ一緒に学んでいきましょう。
欲望からの顧客理解
お客さんや生活者の 「欲望」 に注目することで、顧客理解を深めていくという方法が興味深かったです。
電通の消費者研究プロジェクト 「DENTSU DESIRE DESIGN (DDD) 」 が取り入れているアプローチです。
消費者インサイトとは、顕在化されたニーズの奥にある潜在的ニーズの、さらに奥に存在する消費者の深層心理を解明することです。消費者本人が自分でも気づいていないような "ホンネ" であり、論理的に説明できない "何となくの感覚" といったところでしょうか。
(中略)
そんな消費者の心の奥底にあるインサイトを見つける一つの手段として、私たちは 「欲望」 に着目。インサイト発掘の再現性を高めるために、欲望を可視化・定量化し、ある程度フレームワーク化することを目指しています。欲望は、無意識的に、かつ確実にその人の行動に影響を与えており、欲しい、買いたいといった消費行動においても、人を突き動かす原動力になっていると考えているからです。
(中略)
たとえば、「何を購入したのか?」 「それをどうして買ったのか?」 と質問しても、対象者が深層心理を語ってくれることはなかなかありません。そこで、『心が動く調査』では、「この1ヵ月間に、お金を払って買ったり / 利用した体験で、心が満たされたり、テンションが上がったり、感動・刺激を受けたりなど、良い気分・気持ちが得られた買い物や消費体験はありましたか?」 というように、購入したものの中から 「心が動かされた商品やサービス」 を聞いています。
その上で、購入理由を直接的に聞くのではなく、『どんな気持ちや、どんな自分になりたくて、購入・利用しましたか。こんな気持ちや欲求が満たされたい、こんな自分になりたいと期待したなど、できるだけ詳しくお知らせください』と、心が動いた消費体験について自由に詳細に語ってもらうようにしています。これによって、対象者は進んで 「自分語り」 をして下さるようになりました。
学べること
ではここまでの話を踏まえ、生活者やお客さんの顧客インサイトをどうやって発掘し、価値提案につなげればいいのかを掘り下げていきましょう。
マーケティングとは
そもそもマーケティングとは何でしょうか。マーケティングは 「お客さんから選ばれる理由をつくる活動全般」 です。
選ぶという行為をするのはお客さんです。お客さんが商品やサービスを選ぶのは、何かしらの価値を見出したからです。
選ばれる理由をつくるために重要なのがお客さんの理解です。どんなことに価値を見出しているかの価値観、どんな心理からどのような行動を起こし、最終的に選んでいるのかを見極めます。
目指す顧客理解のレベル
目指すべきお客さんの理解の深さは 「顧客インサイト」 までです。
顧客インサイトとは 「お客さんを動かす隠れた気持ち」 を指します。「心のツボ」 や 「心のホットボタン」 と呼ぶこともあります。
顧客インサイトは、お客さん自身が普段は気づいていない、あるいは気づいていても人には伝えるほど言語化できていなかったり、もしくは人に言うのは恥ずかしいと感じる本音です。心の琴線に触れる何かが起こり心のホットボタンが押されると、態度は変わり行動にも影響を与えます。
顧客インサイトの発掘方法
では、どうやってこの顧客インサイトを見出すのでしょうか?
欲望に焦点を当てるのが1つのアプローチです。お客さんに直接的に購入理由を訊くのではなく、「どんな気持ちで商品やサービスを利用したのか」 や 「どんな望みをかなえたいか」 、「どんな自分になりたいと期待したか」 などお客さんの感情に焦点を当てます。
お客さんが進んで 「自分語り」 をするようになれば、お客さんが本当は何を求め、何を欲しているのかという 「欲望」 が見えてきます。そこから深層心理としてある顧客インサイトを探るのです。
顧客インサイトから価値提案へ
ただし、顧客インサイトを発見したとしても、まだ道半ばです。
後半に残っている大事なプロセスがあります。見出した顧客インサイトをもとにつくる、お客さんへの具体的な価値提案に変換するステップです。
価値提案とは、お客さんの顧客インサイトという欲望を満たすものです。
価値提案をつくるには、
- お客さんの顧客インサイトは何か
- 自社の商品やサービスがお客さんの望みを満たすのか
- 他社はできないことか
- どのようなメッセージにすればお客さんの心をつかめるのか
これらを掘り下げ、つなげることがポイントです。
価値提案がお客さんの心の琴線に触れ心のツボを押せば、マーケティングで目指す 「お客さんから選ばれる状態」 にできるのです。
まとめ
今回はお客さんや生活者の 「欲望」 に注目するというアプローチを取り上げ、学べることを見てきました。
最後に学びのポイントをまとめておきます。
- マーケティングは、お客さんから選ばれる理由をつくる活動全般
- お客さんの理解で目指すのは顧客インサイトまで。顧客インサイトとは 「お客さんを動かす隠れた気持ち」 。心のホットボタンが押されると態度は変わり、行動にも影響を与える
- 発見した顧客インサイトから具体的な価値提案につなげる。お客さんの心の琴線に触れ心のツボを押すことができれば、マーケティングが目指す 「お客さんから選ばれる状態」 になる
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