投稿日 2023/08/25

売場を変えると何が起きる?松屋銀座店のフロア改善に学ぶマーケティング

#マーケティング #売場 #前向きな変化


お客さんのニーズを満たすために、どのような商品や売場が良いのでしょうか?

今回は松屋銀座店のフロアレイアウト改装の事例から、この問いへのヒントをぜひ一緒に探っていきましょう。

百貨店の紳士服売場がユニセックスに



松屋銀座店が、紳士服の売場を改装しました。紳士服売場の約半分のスペースを男女兼用であるユニセックスをコンセプトに新しく変えました。

新たな売り場に切り替えることで年間の売上高は改装前の1.7倍を目指す。

従来は男性向けのアパレル売り場だった5階のおよそ半分を改装した。男女複合型のアパレル12店が出店した。アパレルだけでなくゴルフウエアやインテリアも販売する店もある。

 (中略) 

1つのショップ内で男女両方の商品を取り扱うことで、試着の際は互いのコーディネートを確認し合えたり、フロアの移動時間や買い物の待ち時間を減らせたりすることができる。また女性がメンズアイテムを着用するなど、性別に関係なく好きな商品を選んで買いたいという客のニーズにも対応する。

百貨店が得意とするギフト需要の取り込みも目指す。男女別の売り場だと 「異性のフロアに入るのは緊張してしまう」 といった声があった。男女複合型の売り場であれば異性向けの商品も気軽に選びやすくなる。

先行開業した店では自社カード会員の女性が購入したメンズアイテムの売上高は前年比 8% 増と伸びた。また改装したフロアの区画の売り上げも好調で、男女問わず人気を集めている。

学べること


では、松屋銀座店のフロアを改装しユニセックス路線を強化した事例から、学べることを掘り下げていきましょう。

売場の変化からの連鎖


売場が変わるとは、単に物理的な変化が起こるだけではありません。商品の種類やレイアウトが変わると、来店するお客さんが変化します。変化は連鎖していき、商品の選び方や買われ方も変わります。

松屋銀座店の例を見てみましょう。紳士服フロアの半分をユニセックスをコンセプトにした売場に改装したことで、来店するお客さんが変わりました。以前よりも多くの女性が訪れ、またカップルや夫婦で一緒に来店するケースが増えました。

商品の選び方や買われ方が変わることも見受けられました。

ユニセックスをコンセプトにした売場では、1つの店で男女兼用の商品を取り扱うことで、女性の買い物中に男性が居づらさを感じず、手持ち無沙汰ではなくなりました。また、お互いのコーディネートを確認しながら試着することができるなど、待ち時間や異なるフロアを移動するの軽減につながっています。

打ち手の変化と顧客行動の連動


松屋銀座店の事例から学べることは、マーケティングの手法を変えるとそれが連動して、お客さんの行動や心理に影響を及ぼすということです。

よって、新しい打ち手を試みる前に、施策がお客さんにどのような影響を及ぼすかを予測し、それが望ましい変化なのかどうかを、お客さん目線で設計することが重要です。

マーケティングの役割


マーケティングの役割は、お客さんや生活者の 「前向きな変化」 を起こすことにあります。

マーケティングとは広告などのコミュニケーション活動がメインだと思われがちですが、マーケティングの 4P (Product, Price, Place, Promotion) の観点からすると、広告や販促の Promotion 以外にも今回のような売場となる Place からも、お客さんの変化を引き起こすことができるのです。

売場を変えるのは顧客体験に直接つながる施策です。お客さんのニーズ、奥にある心理や価値観を理解し売場や商品に反映させることで、お客さんの買い物体験が向上し、その結果として売上の増加につながるのです。


まとめ


今回は松屋銀座店のフロア改装の事例から、学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

  • お客さんのニーズや価値観を理解し、それにもとづいて売場や商品を適応させることで、購買体験の向上と売上の増加を図れる

  • マーケティングの役割は 「お客さんの前向きな変化」 を起こすこと

  • 新しいアプローチを実行する前に、起きるであろう変化は何か、望ましいものなのかをお客さん視点で見極め評価しておくことが大事


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。