投稿日 2023/08/05

おしぼり需要予測アプリ。マーケティングを成功させる 「アイデアの解像度」 を上げる方法

#マーケティング #波及効果 #解像度


アイデアからの効果やインパクトを最大限に引き出せていますか?
そうではなく、自分のアイデアに何かが足りないと感じているでしょうか?

今回はおしぼりの需要予測アプリに学ぶ、アイデアの可能性を引き出す 「アイデアの解像度の高め方」 を掘り下げます。

おしぼり需要予測アプリ


取り上げたいのは、AI を実装した飲食店向けの 「おしぼりの需要」 を予測するアプリです。

おしぼりの貸出事業を手がけるキホク (松山市) は、人工知能 (AI) を使って店舗ごとのおしぼりの需要を予測するスマートフォン向けアプリを開発した。過去のおしぼりの消費量などから、配達前に必要な本数を予測して効率を高める。

 (中略) 

キホクでは配達員の研修に約2週間かけていたが、店の住所や納品・回収の場所などの情報も盛り込み、スマートフォン1台で初心者でも効率よく配達できるようにする。

店舗に確認しに行かずに需要が読めれば、工場での生産量を調整したり配送車に積み込むおしぼりの数を最適化したりできる。同社は配送行程全体で1割以上の時間を節約できると試算する。

こちらのアプリはキホクの自社内への恩恵があるだけではなく、様々な波及効果が期待できるサービス事業になる可能性を秘めています。

蓄積した需要動向のデータを活用して、新規出店者に助言する新たなサービスも検討する。

 (中略) 

将来は全国の同業他社へのサービス展開も視野に入れる。ゴミ袋や割り箸などの販売も手がけており、浮いた時間を店舗との意思疎通に充てて新たな需要の開拓につなげる。

キホクは松山市や愛媛県今治市の飲食店を中心に約1000軒の契約店を抱えており、おしぼりの需要動向のデータを活用した新たなビジネスも模索する。例えば、おしぼりの需要動向の推移から地域ごとの飲食店の出店余地を分析して、開業希望者に対して助言することなどが想定される。

アイデアの波及効果


キホクのおしぼり需要予測アプリの事例が教えてくれるのは、1つのアイデアが幅広い波及効果を生むことの可能性です。

キホクの需要予測アプリの場合は、期待できる効果は自社の工数削減だけではなく、既存のお客さんの満足度向上、新規のお客さんの獲得です。

まず、自社の工数削減という観点から見てみましょう。AI によるおしぼり需要予測は、配送効率の向上を可能にします。配送車への積み込み数の最適化や配送行程全体で1割以上の時間を節約します。同じ仕事をより少ない時間で、より少ない労力ででき、企業としての生産性の向上、コスト削減が実現します。

次に、既存のお客さんへの影響です。データを元に最適なおしぼりの数を提供することで、お客さんはいつでも必要な数のおしぼりを手に入れられます。

また、割り箸やゴミ袋などの商品の追加購入や、新規出店に適した場所の提示など、おしぼり需要予測アプリはお客さんに対する付加価値を提供します。お客さんの満足度を向上させることにつながるのです。

3つ目が新規のお客さんの獲得です。おしぼり需要予測アプリは、他の同業者に対しても有用なサービスになります。新たな顧客層を開拓し、事業を拡大するチャンスが生まれます。

おしぼりの需要予測アプリは、以上のように1つのアイデアから恩恵が波及しています。

* * *

アイデアを形にし効果を生むためには、「アイデアの解像度」 を高めることが重要になります。

ではどうすれば解像度を上げられるのでしょうか?


アイデアの解像度を上げる方法


タイトル名が 解像度を上げる - 曖昧な思考を明晰にする 「深さ・広さ・構造・時間」 の4視点と行動法 (馬田隆明) という、ズバリの本に書かれていることが参考になります。


解像度を高めるためには 「広さ」 「深さ」 「構造化」 「時間軸」 の4つの視点が有効です。

 「広さ」 は、アイデアがもたらす影響がどの程度の範囲に広がるかを見つめる視点です。全体を俯瞰し、アイデアがあらゆる方向にどのように影響を及ぼすかに目を向けます。

 「深さ」 ですが、アイデアが一つの領域にどの程度深く影響を及ぼすかを考えます。具体的な場面やシチュエーションを思い描き、その詳細にまで深掘りします。

 「構造化」 は、アイデアがどのようにしてその効果を生み出すのかのメカニズムを理解します。「広さ」 と 「深さ」 をかけ合わせたイメージです。アイデアが事業やマーケット、お客さんといかに関わり、どんな結果を生むのかを構造的に把握します。

そして 「時間軸」 。アイデアが時間とともにどのように展開していくのかを捉える視点です。直近だけでなく、中長期的な視野でアイデアの影響を考えるといいでしょう。

以上の4つの視点を活用することで、アイデアの可能性への解像度が上がり、効果的なマーケティングを行うことにもつながります。ご紹介したキホクの事例はその一例ですが、自分たちのビジネスやマーケティングでも同様のアプローチを試してみることで、きっと成果が得られるはずです。


まとめ


今回は、飲食店向けのおしぼりの需要を予測するアプリを取り上げ、アイデア発想術に学べることを掘り下げました。

アイデアの解像度を高めるには 「広さ」 「深さ」 「構造化」 「時間軸」 の4つの視点を活用するといいです。

  • 広さ: アイデアの影響範囲を俯瞰する
  • 深さ: そのアイデアが特定の領域にどれほど影響するかを掘り下げる
  • 構造化: アイデアがどのように効果を生むかの背後のメカニズムを理解する。「広さ」 と 「深さ」 をかけ合わせたイメージ
  • 時間軸: アイデアが時間と共にどう展開するかを見る。中長期視野が重要

4つの視点を活用することで、アイデアの可能性を引き出せます。


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。