商品の魅力をいかに引き出し、お客さんにその価値を知って理解してもらうためには、どうすればいいのでしょうか？
今回はこの問いについて、｢新しい切り口を提案し選ばれる理由をつくる｣ という視点で掘り下げます。マーケティングから新しい価値を生み出す秘訣を、ぜひ一緒に探っていきましょう。
アサヒ 颯
出典: FELICITY
ご紹介したいのはアサヒ飲料の ｢アサヒ 颯 (そう) ｣ です。華やかな香りが特徴の緑茶です。
過去のアサヒ飲料の新商品の中でも稀に見るヒット商品になりました。
アサヒ飲料が4月に発売した12年ぶりの緑茶飲料の新商品 ｢アサヒ 颯 (そう) ｣ が好調だ。発売1カ月で150万箱を売り上げ、同社のここ10年の新商品で最高のスタートを切った。
(中略)
｢今ある商品と似たような緑茶を出しても意味がない。市場全体を活性化する新しい緑茶を作りたかった｣ 。開発を担当したアサヒ飲料マーケティング二部お茶･水グループ プロデューサーの飯島宙子さんは語る。
緑茶市場は近年大きく成長していない。飲料総研 (東京･新宿) によると22年の緑茶市場は2億7500万箱で、18年比 2% 増にとどまっている。｢だからこそチャンスがある｣ と飯島さんはみる。
アサヒ飲料が1万2000人を対象に行った無糖茶に関する調査では、苦くなければお茶じゃないという声がある一方、｢苦くて飲めない｣ ｢もっと香りが欲しい｣ という意見もあった。｢これは新しい兆しなのではないか｣ (飯島さん) と考え、｢香りがおいしい緑茶｣ を新商品のコンセプトに掲げた。
学べること
では ｢アサヒ 颯｣ から、学べることを掘り下げていきましょう。
生活者の声からビジネス機会を発見
ビジネス機会を探す第一歩は、生活者やお客さんの声を聞くことです。新たな可能性を見つける貴重な情報源になります。
アサヒ飲料は無糖茶に関する大規模な調査を行い、｢苦くて飲めない｣ や ｢もっと香りが欲しい｣ という声を捉えました。新商品の開発の原点となり、新商品のコンセプトにつながったのです。
価値価値の新しい切り口
アサヒ飲料は新しい製品の開発にあたり、｢香りがおいしい緑茶｣ という新たなコンセプトを掲げました。味わいや見た目といった既存のお茶への価値観に対して、香りという新しい提案をしたわけです。
これが意味するのは、ユーザー体験への価値の切り口を変えたということです。香りも味わえる飲料体験を重視し、競合他社とは異なる独自の価値を提供しました。
選ばれる理由をつくる
アサヒ飲料が行ったアプローチは、勝負の土俵を変え ｢新しい選ばれる理由｣ をつくったということです。
味や見た目だけではなく香りを訴求することで、消費者の中で香りという視点もお茶を選ぶときの基準に新しく加わります。お客さんが商品をどのように評価するかの競争ルールそのものを変えたのです。
マーケティングの役割
マーケティングで目指すのは、商品やサービス、時にはカテゴリーに対するお客さんからの価値イメージを変え、より良い認識を持ってもらうことです。
お客さんがまだ気づいていない商品への魅力を見出し、お客さんの文脈に沿って意味づけをし、新しい価値を提案し、お客さんに価値をもたらすことが大事です。
アサヒ飲料は、｢アサヒ 颯｣ から香りを新たな価値基準として提案しました。お客さんの価値認識として ｢良いお茶は香りも華やか｣ に変えることを狙ってのことです。緑茶へのより良い価値イメージが ｢アサヒ 颯｣ に好調な売上をもたらしたのです。
まとめ
今回は ｢アサヒ 颯｣ を取り上げ、マーケティングに学べることを見てきました。
最後に学びのポイントをまとめておきます。
- マーケティングで目指すのは、商品やサービス、時にはカテゴリーに対するお客さんからの価値イメージを変え、より良い認識を持ってもらうこと。これを実現することでお客さんから選んでもらえる
- お客さんがまだ気づいていない商品への魅力を見出し、お客さんの文脈に沿って新しい価値を伝え、お客さんに価値をもたらそう
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