投稿日 2023/08/02

お客さんからの 「選ばれる理由」 をつくる!飲料市場の空白を攻略したアクエリアス NEWATER

#マーケティング #ポジショニング #価値提案


あなたは 「スポーツドリンク」 にどんなイメージを持っているでしょうか?
運動中に欠かせないもの?それともちょっと甘すぎる飲み物?

ご紹介するのは、今までのスポーツドリンクを変えようとしている 「アクエリアス NEWATER」 です。どのように市場の空白地帯を見つけ、ポジションをシフトさせ、新しい価値をお客さんに提案したのでしょうか?

その答えを探し出し、ビジネスに活かすヒントをぜひ一緒に学んでいきましょう。

アクエリアス NEWATER



日本コカ・コーラがスポーツ飲料 「アクエリアス」 の新商品 「アクエリアス NEWATER」 を発売しました (2023年4月) 。

従来のイメージとしてあった 「スポーツ飲料は運動時に飲む」 や 「吸収効率には糖質が不可欠」 から脱却を狙った商品です。

開発の背景


アクエリアス NEWATER の開発背景を見てみましょう。

日本コカ・コーラの 「アクエリアス」 をはじめとするスポーツ飲料の最大の特徴は、お茶やミネラルウオーターなどと比べて、体内での吸収効率が良いこと。そのためテレビ CM などでは、運動して汗をかいたときに、不足した水分を素早く補える水分補給飲料としての機能を訴求してきた。

ところが、日本コカ・コーラが2021年に実施した調査からは、運動時の水分補給のためにスポーツ飲料を飲む人は全体の 5% にすぎないことが判明したという。残りの 95% は運動する・しないに関係なく、日常的にスポーツ飲料を飲んでいたのだ。

そこで 「スポーツ飲料は運動して汗をかいたときに飲むもの」 という固定観念から脱却し、日常の水分補給シーンで飲まれるスポーツ飲料として日本コカ・コーラが開発したのが 「アクエリアス NEWATER (ニューウォーター) 」 だ。

市場の空白地帯でのポジショニング


一般的なスポーツドリンク、ミネラルウォーターやお茶に比べて、アクエリアス NEWATER は飲料市場での 「空白地帯」 を見出しました。


水分補給の効率が良く (横軸の右側) 、それでいて糖質やカロリーが無い (縦軸の上側) というポジションです。

アクエリアスは糖をアミノ酸に置き換え、水分やミネラルの吸収速度を維持しつつ、日常でも飲みやすい味にリニューアルしました。「甘すぎる」 「常温だと飲みづらい」 という今までのスポーツ飲料へのイメージを変え、日常の水分補給シーンで飲まれるアクエリアス NEWATER として進化させたのです。


学べること


ではアクエリアス NEWATER の事例から、学べることを掘り下げていきましょう。

空白地帯での機会発見


日本コカ・コーラが調査をしてわかったのは、想定していたスポーツドリンクの用途 (運動時や直後に飲む) と、お客さんの実際の飲用シーンはズレていたことです。運動時の水分補給のためにスポーツ飲料を飲む人は全体のわずか 5% でした。

そこで日本コカ・コーラは、アクエリアスを日常的に飲むことのできる飲料にシフトさせました。

売り手と買い手で飲みたいシーンの認識にはギャップがあることがわかり、だったらいっそのこと 「お客さんが飲みたいシチュエーションに振り切った商品にしよう」 という発想です。

飲みやすい味にリニューアルしたことで、甘すぎたり常温だと飲みにくいという従来のスポーツ飲料へのイメージを払拭し、日常の水分補給シーンでも飲まれるものとして開発しました。

アクエリアス NEWATER は、飲料市場の 「ホワイトスペース」 を狙った商品です。水分補給が効率よくでき、糖質やカロリーがないという特性を持つため、アクエリアス NEWATER がポジションを取ったのは一般的なスポーツドリンクやミネラルウォーター、お茶、炭酸飲料とは異なるセグメントです。

新しいアクエリアスを今までにありそうでなかった飲料として打ち出したことで、スポーツドリンクを控えていた人だけでなく、日常的な水分補給でお茶や水を選んで買っていた人たちにも魅力だと思える存在になります。

利用シーンと商品をセットにした価値提案


アクエリアス NEWATER の成功事例から学べるのは、従来の固定観念を良い意味で壊し、新しい価値を提案する重要性です。

スポーツ飲料は運動時に飲むものという売り手の想定は、実際の消費者の飲用シーンとはズレていました。にもかかわらず売り手は運動中のシーンでのスポーツドリンクを飲むことを訴求すると、消費者には自分とは関係がないと思われ響かないでしょう。

消費者がスポーツ飲料を選ばず他のカテゴリーの飲料を買う状況を、売り手が意図せずつくり出していたわけです。

こうした 「選ばれにくい理由」 を解消するために、日本コカ・コーラは日常的に飲めるアクエリアスとして新たに開発し、商品と用途を合わせて訴求しました。お客さんの文脈に沿っての魅力的に思ってもらえる価値を提案したわけです。

アクエリアス NEWATER から学べるのは、利用シーンと商品をセットにした価値提案の大切さです。


まとめ


今回は、アクエリアス NEWATER を取り上げ、学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

  • 既存商品の利用シーンや用途にとらわれず、市場ニーズに合わせて商品のポジショニングを変更することで新たなお客さんを開拓できる

  • 商品と利用シーンを一緒に捉え、お客さんにとっての価値として提案することで、お客さんからの 「商品を選ばれる理由」 をつくろう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。