日本語で 「二兎を追う者は一兎をも得ず」 と言いますが、本当にそうでしょうか?
ご紹介する明治ザバスのプロテイン飲料の新商品は、「高たんぱく」 と 「おいしさ」 という二兎を同時に追い求めヒット商品となりました。
トレードオフではなく、トレードオン。あえて2つを追うことからの競争優位のつくり方をぜひ一緒に学んでいきましょう!
ザバス MILK PROTEIN 脂肪 0
出典: 明治
「まれに見るヒット商品」
ご紹介したいのは、明治のプロテイン飲料 「ザバス MILK PROTEIN 脂肪 0」 です。新商品の売上が好調に推移しています。
明治が2022年3月に発売した 「ザバス MILK PROTEIN 脂肪0 フルーツミックス風味」 が好調だ。430ミリリットルの商品に含まれるたんぱく質含有量を従来品より5グラム増やし、運動後にすぐに飲める RTD (レディー・トゥー・ドリンク) タイプのプロテイン飲料として訴求。高強度のトレーニングに取り組む運動ヘビー層からの支持を集めた。22年度の販売金額は計画比3割増を見込んでいる。
(中略)
430ミリリットル入りの希望小売価格は238円。既存品は189円と3割程度高いが、店頭での販売は好調だという。
新商品の回転が速いコンビニエンスストアからも 「まれにみるヒット商品だ」 との声が上がる。22年4 ~ 9月は1日あたり約5万本以上売れ、計画比5割増で推移した。下期は計画を上方修正したほどだ。
高たんぱく質とおいしさの両立
新商品の 「ザバス MILK PROTEIN 脂肪0 フルーツミックス風味」 は、たんぱく質の量を従来品よりも増やし、飲みやすくすっきりとした味わいが特徴です。
ザバス新商品の一番の特徴は、従来品の15グラムから20グラムに増やしたたんぱく質含有量だ。原料水に混ぜる粉末の 「ミルクプロテイン」 の量は多くなるが、原料の混ぜ方や温度などを工夫して既存品と変わらない味やなめらかさを実現した。
(中略)
運動後にすっきり飲める味にもこだわった。藤本氏 (引用者注: スポーツマーケティング部の藤本章太郎氏) は 「消費者調査では購入時に一番重視する点はおいしさだった。ただ、たんぱく質量が15グラムと20グラムでは味の乗り方が全然違う」 と話す。たんぱく質独特の風味はおいしさとは相反するといい、いくつか味を試した結果、フレーバーとしても人気のあるフルーツミックス風味に行き着いた。
学べること
では明治ザバスの事例から学べることを掘り下げていきましょう。
トレードオフとトレードオン
ある特性を追求すると、それとは別の特性が犠牲になることがあります。これを 「トレードオフ」 (trade-off) と言います。たとえば、価格を下げると品質が落ちる、時間をかけて品質を上げるとコストがかさむなどのジレンマです。
このような相反することのどちらか一方を受け入れ、もう片方を諦めるのではなく、矛盾を乗り越えて両方の実現を目指す、つまり 「トレードオン」 (trade-on) を成立させるとブレイクスルーにつながります。
明治の 「ザバス MILK PROTEIN 脂肪0 フルーツミックス風味」 は、トレードオンの好例です。
プロテイン飲料は通常、たんぱく質量を増やすほど風味が損なわれ、おいしさを追求するとたんぱく質量が減ってしまうというトレードオフの関係がありました。しかし、ザバスの新商品は高たんぱくでありながら、おいしさもキープしています。
トレードオンを目指す意義
明治のザバスの事例から見えてくるのは、トレードオンを目指すことで独自性が生まれ、競争優位性を得られるということです。
お客さんにとっては、たんぱく質を多く含みながらもプロテイン飲料をおいしく飲めるという新たな価値がもたらされます。
トレードオンを目指すということは、矛盾する要素をどうやって両立するかという二兎を追うところに難しさがあります。しかし、乗り越えられれば競争優位性が生まれます。難易度が高いからこそ他の競合から差異化され、お客さんへ新しい価値を提供できるのです。
今回の事例から学べるのは、トレードオフをそのまま受け入れるのではなくトレードオンを目指し、あえて難易度の高い挑戦を選ぶことで価値を生み出せるということです。
まとめ
今回は明治の 「ザバス MILK PROTEIN」 を取り上げ、学べることを見てきました。
最後に学びのポイントをまとめておきます。
✓ トレードオンからの価値提供
- どちらか一方が犠牲になる 「トレードオフ」 になるのが常だが、相反する2つを成立させる 「トレードオン」 を目指すことでブレイクスルーを起こせる
- トレードオンの実現は難易度が高いが、達成できればお客さんへ新たな価値を提供し、競争優位となる
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