今回は、冷凍食品の新しいトレンドから、競争優位をどうやってつくり出すかを掘り下げます。キーワードは 「置き換え (リプレイス) 」 です。
ぜひ一緒に学びを深めていきましょう。
ワンプレート冷凍食品
出典: cyzowoman
新型コロナウイルス禍により在宅時間が増え、冷凍食品の利用が広がりました。行動制限がなくなっても今も冷食は拡大傾向にあるようです。
生活リズムが多様になり1人で食事をとる場面が増えるなか、存在感を発揮しているのが主食とおかずを組み合わせた 「ワンプレートの冷凍食品」 です。
東京都に住む会社員の西本日向さん (29) は今春、ニップンの 「よくばりシリーズ」 を購入し、ワンプレート冷食の使いやすさを実感した。「ご飯、野菜がついていて量も多すぎない」 と満足だ。夫婦2人暮らしだが、食事の時間が合わない平日の軽い1人ご飯に利用するようになったという。
ニップンは 「オーマイプレミアム」 などの冷凍パスタで、温めてすぐに1食分の食事になる1人向けの冷食を広げたメーカーの一つだ。家庭用のワンプレート商品は冷食大手の中でも早くから手掛けており、パスタとハンバーグを組み合わせたよくばりシリーズは2015年春に登場。その後、主食を米にした商品も発売した。日経 POS 情報によると、ニップンのよくばりシリーズの23年7月の販売金額は20年同月比で 65% 増えた。
(中略)
ニチレイフーズによると、ワンプレートの冷食はこの5年間で市場が3倍ほどに拡大しているという。スーパーやコンビニエンスストアで冷食を買って当日に食べる人が増えており、まとめ買いして家庭で長期保存するのとは異なる使われ方も広がっている。
学べること
ではワンプレート冷凍食品の事例から、学べることを掘り下げていきましょう。
従来の冷凍食品との違い
従来の冷凍食品は、一般的には一品単位が主流でした。たとえば、チキン南蛮、ギョーザ、ほうれん草などです。
食卓やお弁当などの食事メニューの中で、単品単位で冷食が使われていました。例えば、晩御飯の献立で 「何か一品足りないな」 と感じたときに、冷凍のほうれん草のおひたしを追加するといった使い方です。
一方のワンプレート冷凍食品は一回の食事を丸ごと置き換えます。主食 (ご飯) と複数のおかすがセットになっていて、1袋の冷凍食品だけで1回の献立が完成します。
食事の準備に時間がなかったり、同居家族がいても1人で食事をするシチュエーションでは、ワンプレートの冷凍食品が価値を発揮します。
ご飯を炊いたり、複数のおかずを用意する手間が省けて簡単に用意ができ、それでいてメニューが豊富でボリュームもあります。消費者はこれ1つで、バランスの取れた献立を手軽に満足のいく食事ができます。ここに価値があるわけです。
リプレイスという視点
今回の事例からの学びを一般化すると、自社商品は既存の何をリプレイスするのかを考えることで、商品開発やマーケティングへのヒントが得られるということです。
リプレイスを実現するためには、既存のもの (= 競合商品) に比べて競争優位があることが必要です。お客さん目線になって捉えれば、お客さんにとって利便性やうれしいなどの既存のものよりも高い価値があるかです。お金を払ってでも欲しいと思える価値があれば、リプレイス、すなわち既存の商品やサービスを新しいものに置き換えてもらえるのです。
リプレイスにおいて 「部分的な置き換え」 だけでなく、「全部を丸ごと置き換えられないか」 という視点も持って考えてみるといいでしょう。
ワンプレート冷凍食品の事例では、単品のおかずという従来の冷凍食品とは異なり、一回の食事を丸ごと置き換えるという状況をつくり出しました。
このように、時には一気に勝負をかけ、全取りできないかと挑む姿勢も大事です。市場に新しい風を起こし、お客さんにとっての価値を高めることにつながります。
まとめ
今回はワンプレート冷凍食品を取り上げ、学べることを見てきました。
最後に学びのポイントをまとめておきます。
- 自社商品は既存の何を置き換えるのかという 「リプレイス」 を考えると、商品開発やマーケティングへの着想につながる
- リプレイスには、既存のもの (= 競合商品) に比べて競争優位があることが必要。お金を払ってでも欲しいと思える価値があること
- リプレイスにおいて 「部分的な置き換え」 だけでなく 「丸ごと置き換えられないか」 という全取りに挑んでみよう
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