ご紹介したい本は、まんがでできる 営業の見える化 (長尾一洋) です。
この本のテーマは、日報を有効活用することで営業を 「見える化」 し、いかに組織の風通しや業績を上げるかです。
まんがのストーリー
主人公は中小の菓子メーカーの営業部に所属する女性です。営業部は売上が上がらず、目標は未達でした。
適切でなかった日報導入
営業会議で社長が厳しく指適し、売上目標の未達は 「営業のがんばりが足らないから」 という決めつけのような状態になりました。
もっとがんばるために、営業メンバーの1人ひとりが 「日報」 を毎日書いて提出することになりました。
しかし、この対策は空回りします。メンバーの中でやらされ感が満載し、すぐに日報へは嫌々と取り組む雰囲気になっていきます。会社は日報をちゃんと見ていないという理由で誤魔化した内容、例えば実際は訪問していないのに訪問したと虚偽の報告をするなどを記載するメンバーまで出てきました。
そこで、日報を使えるものに
主人公は大学時代から憧れだった他社の先輩のアドバイスをもとに、日報を有効活用することを会社に提案します。
主人公は日報を抜本的に改善するプロジェクトのリーダーに選ばれ、日報を営業の業績を上げるツールに変えていきました。
✓ 取り組んだこと (日報の進化)
- 日報の目的と役割の明確化
- 会社の今期の経営方針とリンクさせた。日報を経営方針を実行し PDCA をまわすツールに
- 記載項目の変更し3つで統一した。事実、(顧客の) 反応、今後の予定
※ 事実・解釈・行動という 「空雨傘」 のフレームになっている - 営業部だけではなく商品企画部と製造部に日報内容を公開し共有
- 日報情報をデータベース化。属人知を組織知に変えた
新しい日報からの変化
日報は様々な波及効果を生み出しました。日報が本来の役割を果たしたことで、営業部だけではなく商品企画や製造部、そして社長までも会社全体が変わったのです。
営業メンバーはそれぞれが主体的に動き、自ら率先して日報を書くようになりました。
日報の記載項目が統一されたことで他の営業メンバーとの情報共有がしやすくなりました。お客さんと競合の情報が社内にもたらされ、営業部内だけではなく商品企画や生産部とも情報が共有されます。
日報内に 「今後の予定」 が詳しく入っていることで、企画や製造の人たちは営業の次の動きに合わせ、あらかじめ動いてくれるようになりました。
また、会社の経営方針と日報が結びついたことからも変化が起こりました。
それまでは現場に全く浸透していなかった経営方針の存在に気づいただけではなく、経営方針の内容が自分ごと化され、どうすれば体現できるかを1人ひとりが考えるようになりました。
経営方針を実現するための営業戦略や仮説を各メンバーがお客さんにぶつけ、その反応を日報に書くことで経営と現場が一体となった PDCA がまわりはじめたのです。
PDCA が個々人の中だけではなく組織全体でもまわることで、社内に情報と経験・知識が還元され、組織知として蓄積していきました。
経営と現場が戦略と実行、そして振り返りの全てでつながり、営業・商品企画・製造・経営の皆がお客さんと競合に目を向けるという大きな変化が起こりました。以前の内向き姿勢で、売上目標未達の原因を他人や他部署のせいにし犯人探しする状況から、お客さん目線になるという 「外向き姿勢」 に日報は変えたのです。
問題設定と問題解決
まんがのストーリーでは当初、売上目標の未達が常態化し、問題解決の体裁をなしていませんでした。
営業会議では立場が上の人間が現場メンバーに対して 「ちゃんとやっているのか」 や 「がんばりが足りない」 と決めつけ、だから 「もっとがんばって営業をするために行動を管理すべき」 という精神論を振りかざすだけでした。解決策として決まったのは、社長命令での頭ごなしでの日報の導入です。
売上未達の真の原因を追求することなく、つまり本当に解くべき問題が設定されないまま、売上未達の解決策として 「営業担当者は毎日日報を書いて提出する」 という方針になったわけです。
これでは問題の解決にはなっていません。
望ましいのは解決策に入る前の適切な問題設定です。営業のがんばり云々よりも (これも問題を発生させている要因としてゼロではないが) 、以下のような本当の問題まで掘り下げるべきです。
✓ 売上未達の原因
- お客さんの置かれた状況やニーズを理解できていない
- 競合についても理解していない
- 経営方針が現場に浸透していない
- 営業・商品企画・生産の各部署がバラバラな動きをし、連携していない
- 事業戦略や営業戦略がない。何をどう具体的にやるかの方針がないため、各組織と組織内の各メンバーがそれぞれ勝手に動いているだけの状態
お客さん (Customer) 、競合 (Competitor) 、そして社内 (Company) と戦略のフレーム 3C の全てにおいて構造的な問題がありました。要因が複合的にからまり、最終的な事象として売上がふるわないという状況に陥っていたわけです。
よって、根っこから改善しないと問題解決にはならないわけですが、まんがのストーリーでは 「営業のがんばりが足りない」 という決めつけで、日報を毎日提出するという安易な解決策になりました。
当初は日報は機能しませんでしたが、日報を新しくする過程で上記のような問題原因を順番につぶしていき、問題を解決する手段として日報が有効活用されはじめます。
日報の位置付けや使い方をブラッシュアップし改善を続け、問題解決の精度を高めていったのです。
まとめ
今回は、まんがでできる 営業の見える化 (長尾一洋) をご紹介しました。
最後にポイントをまとめておきます。
- 当初の日報導入は失敗した。社員にはやらされ感しかなく、虚偽の報告も出た。適切な問題設定をせず、問題解決になっていなかった
- 主人公たちは日報の 「形式」 ではなく 「本質」 に焦点を当てて改善を進めた。日報の目的と役割を明確にし、経営方針と連動。営業だけでなく商品企画や製造部との情報共有も促進した
- 日報は単なる報告ツールから組織知を生み出す PDCA をまわすエンジンに。市場やお客さんを見ない内向きから、お客さん中心の外向きの姿勢に変わった。組織全体の業績向上につながった
この本は、情報を言語化し共有するという 「日報の見える化」 の方法、期待できる効果をまんがでわかりやすく解説してくれます。
おもしろい本だったので、よかったらぜひ読んでみてください。
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