マーケティング施策を打ち出したものの、活動や成果が一過性に終わっていないでしょうか?
今回ご紹介したいのは、シャトレーゼの 「濃密な体験ツアー」 です。
シャトレーゼの取り組みからは、短期的な成功よりも継続的なお客さんと関係をつくる重要性を学べます。ぜひ一緒にマーケティングへの学びを深めていきませんか?
シャトレーゼの体験ツアー
体験ツアーでの食べ比べ (出典: 産経新聞)
お菓子作り体験 (出典: 産経新聞)
シャトレーゼが、1泊2日の体感ツアーを会員向けに実施していて、応募者が殺到するほど人気になっています。
このツアーは、以前に行われていたアイスクリーム食べ放題の見学会を休止し、新たに始めたものです。参加者はファミリー層を中心に、シニア層も見られます。
ツアー料金は大人が1万5000円 (子どもは1万円, 3歳未満は無料) で、募集人数は40人です。体験ツアー参加の当選倍率は数十倍にもなるとのことです。
濃密なツアー内容
体験ツアーの中身は2日間で濃密な内容です。
シャトレーゼの工場見学、アイスなどの食べ比べ、ワインテイスティング、スペシャルスイーツの提供、お菓子作り体験、契約農園で収穫体験、トレッキング、星空鑑賞会など多岐にわたります。
シャトレーゼグループの社員が自社製品の特徴や品質について説明してくれたり、ホテル事業の従業員も協力し、1泊2日の中で多彩なプログラムが組まれています。
体験ツアーの狙い
シャトレーゼは、なぜここまで体験ツアーに力を入れているのでしょうか?
体験ツアーの狙いは、シャトレーゼのこだわりを多面的に知ってもらい、ファンをつくることです。熱心なファンになってもらえば、シャトレーゼの商品をより購入してもらえることが期待できます。さらには、シャトレーゼの良さを参加者のまわりの人に伝えてくれる 「伝道師」 になってもらうことも目指しています。
体験ツアーの内容は SNS への投稿を OK としているので、参加者が体験ツアーやシャトレーゼのことを SNS で投稿し拡散されれば、シャトレーゼの姿勢がより広く知られるだけでなく、新しいお客さんの獲得も見込めます。
以前の 「見学食べ放題」 ではできなかったこと
実はシャトレーゼでは、13年前から工場での見学会を実施していました。
アイスの食べ放題が売りで、アイスをたくさん食べて、そのまま別の目的地に移動するというものでした。シャトレーゼはアイスのサンプリングの場だと割り切っていました。
シャトレーゼが本来伝えたかったのは、「なぜシャトレーゼのアイスはおいしいのか」 「なぜお買い得な価格で提供できるのか」 などでした。しかし、食べ放題の参加者からは 「シャトレーゼは太っ腹だ」 ということだけが強く印象に残っていました。
体験ツアーの効果
こうした背景から食べ放題ではなく、シャトレーゼの体験を重視する1泊2日の濃密なツアーに切り替えました。
体験ツアーの効果は期待したものになっています。ツアー参加後に、シャトレーゼのお店での購入額が 2 ~ 3 倍になるケースもあるとのことです。
ツアー参加後のアンケートでは、参加したほとんどの人が最高得点を付けているようです。自由記述欄には 「シャトレーゼを好きになった」 「スタッフの対応がよかった」 といった声もあることからも、グループ全体で取り組んでいる成果が出ています。
学べること
ではシャトレーゼの体験ツアーから、学べることを掘り下げていきましょう。
マーケティングの観点で学べるのは、1つ1つの施策を 「点」 ではなく 「線」 で捉えてつなげることの大事さです。
「点」 でしかなかった食べ放題ツアー
シャトレーゼが行っている体験ツアーは、単なるイベントや一回限りの集客手段ではありません。参加者に熱心なファンになってもらい、ツアー参加後もシャトレーゼと関係性が長く続くことを狙っています。
以前に実施していた食べ放題ツアーは確かに人気がありましたが、参加者が抱いた印象はや 「シャトレーゼのアイスが無料で食べられて太っ腹だ」 といったイメージでした。言い換えれば、食べ放題自体がツアーに参加する目当てになり、シャトレーゼの真の価値や商品購入につながるような継続的なお客さんとの関係性が生まれていませんでした。
つまり、食べ放題という施策が 「点」 としてでしかなく、次につながる 「線」 にはなっていなかったわけです。
戦略の見直し
そこで人気だったにもかかわらず食べ放題ツアーをやめ、1泊2日の濃い体験ツアーから熱量の高いファンの方を1人でも増やす方針に変えました。
ツアー参加後の店舗での購入増や、シャトレーゼの良さをまわりにも積極的に伝えてくれるような 「シャトレーゼ伝道師」 になってもらうような体験ツアーにしました。
ここには、戦略的な方針変更があります。
目的から逆算してのストーリー設計
シャトレーゼの事例から学べるのは、施策を独立した 「点」 としてではなく、戦略全体としてどう連動するかという 「線」 で捉えることの重要性です。
そのためには、次のことを順番に詰めていくといいです。
- そもそもの最終的な目的を明確にする
- 目的から逆算して、目的を達成できる戦略をつくり打ち手を考える
- 戦略にストーリーがあるか、各施策が時間をかけてどう展開していくかを把握する。目的実現への布石になっているかを見極める
シャトレーゼは体験ツアーを戦略全体の 「線」 の一部と位置づけました。
点ではなく線で捉えることは、他の企業や業界にも汎用的で、覚えておいて損はない視点です。
まとめ
今回はシャトレーゼの体験ツアーを取り上げ、学べることを見てきました。
最後に学びのポイントをまとめておきます。
- 目的を明確にし、目的から逆算して戦略を立て施策を設計しよう。目的と戦略からのストーリーに落とし込まれた設計になっていることが大事
- 1つ1つの施策を 「点」 でバラパラに捉えず、「線」 でつなげて全体最適を実現しよう。各施策が戦略全体にどう機能し、全ては目的に貢献するかという視点を持つ
マーケティングレターのご紹介
マーケティングのニュースレターを配信しています。
気になる商品や新サービスを取り上げ、開発背景やヒット理由を掘り下げることでマーケティングや戦略を学べるレターです。
マーケティングのことがおもしろいと思えて、すぐに活かせる学びを毎週お届けします。
レターの文字数はこのブログの 3 ~ 4 倍くらいで、その分だけ深く掘り下げています。ブログの内容をいいなと思っていただいた方にはレターもきっとおもしろく読めると思います (過去のレターもこちらから見られます) 。
こちらから無料登録をしていただくとマーケティングレターが週1回で届きます。もし違うなと感じたらすぐ解約いただいて OK です。ぜひレターも登録して読んでみてください!