投稿日 2023/11/02

サウナ専用メガネ JINS SAUNA (ジンズサウナ) 。一点集中からの顧客拡大のマーケティング

#マーケティング #ターゲット設定 #顧客獲得

新しい商品やサービスをローンチする際、どこに焦点を当て、どのようにお客さんを獲得していけばいいのでしょうか?

今回は JINS のユニークなメガネの事例から、この問いを掘り下げます。ぜひ一緒にマーケティングへの学びを深めていきましょう。

サウナ専用のメガネ


出典: PR TIMES

ご紹介したいのは、「JINS SAUNA (ジンズ サウナ) 」 というメガネです。

サウナ愛好家 (サウナー) をターゲットにしたメガネで、"サ陸両用メガネ" というユニークなコンセプトで人気を集めています。

発売前には、入浴時にも使えるという幅広い用途からの訴求も検討されましたが、サウナに特化して発売されました。

ネーミングは、用途が広い風呂を押し出すか、過酷な環境でも使用できる機能を打ち出すか、いくつか候補があった中で、結局 「サウナ」 を選んだ。顧客の嗜好が細分化している時代にあっては、マスを取りに行くコミュニケーションは効きづらい。むしろ、発想の原点であったサウナに絞って、コアな人たちに満足してもらうことを優先させた。

晴れて、2023年2月6日の風呂の日に、全12種類のデザイン・カラーから自分の度数でオーダーできる、120度耐熱、曇り止め加工レンズ、ぬれてもさびにくいフレームの、求められるニーズ全てに応えた 「JINS SAUNA」 がデビューした。

JINS SAUNA のマーケティング


では JINS SAUNA から学べることを掘り下げていきましょう。

初期ターゲット顧客の明確化


注目したいのは、サウナ好きの人に一点集中をして初期のコアターゲット顧客を絞ったことです。

打ち出した施策はサウナーに向けてのものでした。

まずは、サウナーのために JINS が作ったサウナ用眼鏡であることを前面に打ち出すコミュニケーション戦略がスタートした。

全国約160カ所のサウナ施設に協力を仰ぎ、JINS SAUNA のポスターを貼ってもらい、希望する施設スタッフや 「熱波師」 (サウナの中でタオルで仰いでくれる人) の方に使用してもらうサンプリングキャンペーンを行った。

このような一点集中型のアプローチは、特定のお客さん層からの認知を高め、その界隈 (今回の場合はサウナ愛好家の人たちのコミュニティ) で話題を集めます。

新しく市場を切り開くような商品は、コアターゲットとするお客さんの課題感、望みや不満にフォーカスし解決することが、初期の成功につながります。

顧客拡大への打ち手


商品が市場で認知され、一定の評価を得て当初想定したお客さんを獲得できたら、次に重要となるのが顧客拡大です。

JINS SAUNA の事例では、サウナ愛好家に買ってもらったあとに、より広い範囲の顧客層に向けて訴求対象を広げていきました。

反響や売れ行きからコアターゲットの獲得に手応えを感じた1カ月を経て、3月7日のサウナの日を境に、コミュニケーションの仕方を変えた。より広い一般層に向け、サウナだけでなくお風呂など日常のシーンでの用途も多いことをメッセージで強調した。

発売当初に絞ったサウナ専用としてだけでなく、サウナ以外の日常生活の中で曇らないメガネを必要とする人たちへと訴求対象を拡大しました。JINS SAUNA の利用シーンをさらに広げることができたのです。

価値を発揮する利用用途の広がり


JINS SAUNA は、発売初期のころは商品名の通り 「サウナ専用」 を特徴として打ち出しました。

その後は、サウナ以外でも 「耐熱性がありレンズが曇りにくく、錆びにも強い」 という特徴が活きる様々な利用用途でユーザーは使っています。

JINS が JINS SAUNA ユーザーへ行ったアンケートでは、使用シーンにサウナを上げた人は 62% で、残りの 38% はサウナーではないユーザーということになる。そうした 「非サウナー」 は、銭湯・旅先の風呂や自宅の風呂で使う他、子供の入浴の世話や介護での入浴介助にも使われていることが明らかになった。

さらに、マスクをする際、熱いものを食べる時、梅雨の時期など、眼鏡が曇らないことで助かることはとても多く、しかも普段からかけられるデザインのため、シーンによって掛け替える必要もなくシームレスに使えることが支持を得た理由と考えられる。

JINS SAUNA は、理想とも言える発売から顧客拡大の道を歩みました。

学びとして一般化すると、次のようなプロセスです。

✓ 顧客拡大への流れ

  • 発売当初はコアターゲットとなるお客さんと利用シーンを一点集中で絞った (サウナ愛好家のためのサウナ専用のメガネ) 

  • お客さんを増やすために、価値を発揮でき使ってほしい用途を広げるコミュニケーションを展開 (サウナだけでなく、お風呂など日常のシーンでの用途にも便利に使えることをメッセージで強調) 

  • 商品特徴を変えることなく捉えれる様々な利用ニーズに応え、当初の絞ったお客さん以外も獲得した (JINS SAUNA は4割弱がサウナー以外の人たち) 


まとめ


今回は、サウナ専用のメガネとしてデビューした 「JINS SAUNA」 を取り上げ、学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

✓ 一点突破から顧客拡大

  • 発売当初はお客さんと利用シーンを一点集中で絞る (コアターゲット設定) 

  • お客さんを増やすために、価値を発揮できて使ってほしい用途を広げ商品を訴求をする

  • 商品特徴を変えることなく様々な利用シーンとニーズに応えることで、当初の絞ったお客さん以外も獲得していく


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。