投稿日 2023/11/01

イオン九州のデジタル転換。顧客理解の解像度を高めてのマーケティング PDCA

#マーケティング #顧客理解 #PDCA

今回はイオンの事例を取り上げます。

デジタルを活用し、お客さん1人ひとりに目を向け、ビジネスの新たな可能性を追求しています。

イオンの挑戦を追いながら、「顧客理解」 と 「PDCA」 をキーワードにマーケティングに学べることをぜひ一緒に深めていきましょう。

イオン九州の ID-POS 活用


小売大手のイオングループが積極的なデジタル化から、ビジネストランスフォーメーションを進めています。

イオン九州の事例を詳しく見てみましょう。

複数の販売チャネルの利用データが、iAEON (アイイオン) という共通のプラットフォームに集約されることで、チャネル横断型で顧客データの蓄積が可能になる。それにより、新たにチャネルごとの購買履歴に基づいたプロモーション施策などが可能になった。

 「これまでイオングループでは、事業会社単位では、ほとんど ID-POS 分析 (販売時点情報管理) を行ってこなかった。しかし今後は、iAEON に ID が集約される CDP (カスタマー・データ・プラットフォーム) が実装されることで、事業会社ごとの個別分析ができるようになる」 (イオン九州の上席執行役員 デジタルトランスフォーメーション責任者兼コーポレートトランスフォーメーション推進本部長の岩下良氏) 

従来は、会員に対して一律で同じクーポンを送ることしかできなかった。それが、「節約志向の顧客」 にディスカウント品をお薦めしたり、「健康志向の顧客」 にオーガニック商品を薦めたりするなど、顧客一人ひとりに合わせてパーソナライズしたコミュニケーションができるようになるわけだ。また、店舗でクーポンを利用して飲料を購入した顧客がネットスーパーにログインした際、同飲料のケース買いをお薦めするといったこともできるようになる。

一人ひとりの購買行動が可視化されるようになると、「KPI (重要業績評価指標) の見直しにもつながる」 と岩下氏は言う。現在、同社では 「顧客数」 を KPI として置いている。しかし、ID-POS 分析により顧客分析の解像度が上がると、1人あたりの月間来店回数や来店頻度も精緻に分析可能になる。

 「これまでは顧客数を増やすためにチラシを配布する、テレビ CM を打つといったマスマーケティング思考だった。それが、1人あたりの月間来店回数や来店頻度が見えてくると、顧客の来店頻度を上げるためにはどのような施策を行うべきかに発想が変わる。例えば、『この顧客はしばらく来店していないので、1000円クーポンを送ろう』『この顧客は、来店はしているが頻度が落ちてきているので、来店スタンプ企画を実施しよう』など、打ち手が変わってくる」 と、岩下氏は ID-POS の効果に期待を寄せる。

学べること


ではイオン九州の事例から、学べることを掘り下げていきましょう。

お客さんの解像度と PDCA


今回の話から学べるのは、お客さん1人ひとりのニーズや行動の特徴をより詳細に理解するという 「顧客解像度を上げる重要性」 です。

お客さんの理解への解像度が上がることによって、PDCA の全てにおいてやることがより具体的になります。

PDCA の順番で見ていきましょう。

Plan では、お客さんの解像度を上げることで戦略や施策の設計がより緻密になります。売上を単純に上げるという目標ではなく、「1人当たりの月間来店回数」 を増やすといった、売上を分解した指標でのより具体的な目標設定が可能になります。

Do では、施策の実行内容がお客さん1人ひとりに合わせたものになります。過去の来店や購入履歴をもとに、お客さんの嗜好に沿ったコミュニケーションや施策を行なえます。

Check では、KPI からの施策の評価、示唆だし、次回への教訓の中身が具体的になります。お客さんの来店や購入、心理までを解像度高く理解することにもつながります。

最後に Act では、より明確なフィードバックを戦略に反映し、次回の打ち手に対する明確な方向性を示せます。

顧客理解からのマーケティング


お客さんの解像度を上げるためには、お客さんの情報が必要です。

顧客情報を集め、いつでも使えるようにデータ基盤を整えることで、戦略や施策に活用することができます。

基盤整備からの顧客理解、お客さんの理解にもとづいた戦略をつくり実行し、成果を評価し得られた教訓を次に活かすという PDCA をまわしていくわけですが、中心になるのは顧客理解です。

マーケティングとは、「お客さんを理解を続ける旅」 のようなものです。顧客理解にはじまり、終わりのない顧客理解の旅を続けることが、ビジネスの持続的な成長につながります。


まとめ


今回はイオン九州の ID-POS 活用事例から、学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

  • お客さん1人ひとりのニーズや行動特性を解像度高く理解することで、PDCA の全プロセス (Plan, Do, Check, Act) 、つまり戦略立案、施策の実行、効果検証、得られた教訓からの戦略や施策への反映までを具体的かつ効果的にまわせる

  • マーケティングの PDCA の起点はお客さんの理解。マーケティングとは 「終わりなき顧客理解の旅」 。お客さんの理解にはじまり、終わることのない顧客理解を続けることが、ビジネスの持続的な成長へのカギとなる


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。