投稿日 2023/11/12

お客さんの 「買いにくい」 を 「買いやすく」 へ。女性の心を捉えたファミマの丼もの弁当

#マーケティング #顧客インサイト #買いにくい理由

 「お客さんが何を求めているのかはわかるけれど、なぜ自社商品を買ってもらえないのか?」 

こんな状況になっていないでしょうか?

今回は、おもしろいと思ったファミリーマートの事例から、見過ごされがちなマーケティングの役割を解説します。

ファミマがチルド丼を強化



ファミリーマートが、プライベートブランド 「ファミマル KITCHEN」 からチルド丼商品を4種類発売しました。

8月に投入した第1弾は 「ぶた丼のとん田監修 炙り焼豚丼」 (680円) 、「醤の旨味きわだつ!麻婆豆腐丼」 (430円) の2種類。第2弾は 「三元豚のロースかつ丼」 (598円) 、第3弾は 「7種野菜の中華丼」 (568円) です。

チルド丼のお弁当のラインアップを強化し、女性需要の取り込みを狙うとのことです。

丼ものが女性に人気という発見


女性をターゲットに丼ものに注力したのは、ある発見がきっかけでした。

購入データを分析したところ、ファミマで女性が買うお弁当のトップ10の中に3つもガッツリ食べる丼ものが入っていました。ちなみに男性のランキングでトップ10に入った丼ものは1つのみでした。

ファミリーマートで女性はどんな弁当を買っているのか?

同社が調査したところ、意外な事実が分かってきた。女性は弁当の中でも 「丼もの」 をよく買っているのだ。ファミリーマートで販売数の多い弁当ランキングをみると、トップ10のうち男性が選んだ丼ものは1商品だが、女性は3商品がランクイン。その上、かつ丼、麻婆豆腐丼、親子丼と、ガッツリメニューを選ぶ傾向にあるのだ。この結果を受けて、社内からは 「女性がかつ丼食べるとは」 と、驚きの声も聞かれたという。

ファミマはここにまだ伸びしろがあると捉えました。

食べたいのに買いにくい要因 (顧客インサイト) 


丼ものが女性に人気の理由は、コンビニの丼もの弁当の 「食べやすさ」 にありました。

幕の内弁当などの他の弁当に比べ、カツ丼や麻婆豆腐丼などのコンビニの丼もの弁当はサイズがコンパクトです。女性にとってはここに価値がありました。 オフィスで大きい弁当を食べると周囲の目が気になってソワソワして食べるという 「不」 がなく、コンビニの丼ものは人の目を気にせずしっかり食べたいというニーズをかなえてくれます。

コンビニの丼もの弁当は、サイズとボリュームが他のお弁当にはない選びやすさがあり、女性の消費者心理をうまく汲み取った存在だったわけです。


買いにくい要因の解消を


お客さんが 「 (ほしいのに) 買いにくい理由」 を把握し、つぶすことで売れる仕組みをつくるのがマーケティングの役割になります。

マーケティングで目指すのは、お客さんから選ばれる状況をつくることです。

今回のファミリーマートの事例からの学びは、見込み客や未顧客へのマーケティングとして、「 (実は) 欲しいのに選びにくい理由」 をなくす重要性です。この観点は見過ごされがちだったりします。

せっかく欲しいと思ってもらえているのに、買うための物理的・心理的ハードルがあると、結局は買ってもらえません。そこで自社商品やサービスが選ばれにくい要因を見極め、買いにくい理由を消していくことが大事なのです。

具体的には、次のように1つ1つ解きほぐしていきます。

  • 買いたいのに何かしらの要因で買うのをあきらめている人を見つける
  • 本心では欲しいのに、買っていない物理的な阻害要因を把握する
  • 奥にある心理的な購入ハードルも理解する

買いにくい理由について、習慣や行動、心理から解像度を高く理解し、「本当は欲しいと思っているのに買いにくい障壁」 をいかに解消できるかがポイントです。


まとめ


今回はファミマの丼もののお弁当の事例から、学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

  • マーケティングは、お客さんが何が欲しいかを理解するだけでなく、本当は欲しいのに買っていない物理的な阻害要因や心理的障壁を理解し、解消する役割も担う

  • お客さんの 「買いにくい理由」 をつぶし、売れる仕組みをつくる。マーケティングで目指すのは、お客さんから選ばれる状態をつくること


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。