少なくない数の男性がメイクに興味を持ちつつも、まわりからの他人の視線が気になるなど、複雑な 「オトコ心」 を抱いています。
ここにはマーケティングへのヒントが隠されています。人は理想と現実、建前と本音に揺れる存在です。そうした人間心理を理解することで、マーケティングからお客さんとの関係性を築くことができます。
お客さん目線での顧客理解とマーケティング手法について、ぜひ一緒に学んていきましょう。
メイク男子の複雑なオトコ心
日経の記者が東京の原宿で、メイクをしている男子52人 (10 ~ 30代の男性) にアンケート調査を実施しました。
出典: 日経
原宿メイク男子の素顔を見てみましょう。
「大学でおしゃれを楽しもうとファッション関連のユーチューブを見ていたら、たまたま視聴したメークの解説動画に夢中になっていました」 。ファンデーションやリップを塗って大学に通う吉田有樹さんは 「高校卒業と同時にメークを始めた」 と語る。
(中略)
スマートフォンを通じて手軽にメークの仕方を覚えられるため、興味を持ってすぐ始める男性も多いようだ。
ただ、原宿でアンケートに答えてくれるメーク男子を探していると、パッと見て化粧をしているかどうかを判断できる人は少なかった。
「男なのになぜメークをするのかと親から言われた」 「上司や同僚に知られたくない」 。アンケートに答えていると、家族や同級生、会社の同僚などからメークをすることを理解してもらえないと愚痴をこぼす男性も複数いた。男性のメークがまだまだ認知されていないとも言える。そのためか、メークをしていることを知られたくない男性は少なくないようだ。
「男性がメークをするうえでの壁は」 (複数回答) との質問に対して、「周囲の目が気になる」 (44%) が最多だった。
若者の男性にとって、メイクをすることで外面も内面も自信が増すものの、いざ自分がメイクをした姿で人前に出ると、周囲の目が気になるという複雑なオトコ心がうかがえます。本音と建前の間で気持ちが揺れ動いている印象です。
化粧をしたいけど、自分のことをどう見られるかがちょっと不安。メイクをした自分を見てほしいものの、男性である自分が化粧をしていることをまわりに知られたくない。行動と心理の微妙な関係があります。
学べること
この事例からマーケティングへの学びにつなげると、人間心理の複雑さと奥深さです。
人間心理の複雑さと奥深さ
人は必ずしも合理的な判断から決断をしたり行動をするわけではありません。もし合理的に考えるなら、たとえば化粧で言えば、不安や心配になりストレスに感じるくらいなら、最初からメイクはする必要はないわけです。
しかし実際にはメイクをしたい気持ちは捨てきれず、メイクで自分をもっときれいにしたい、理想の自分に近づけたいという思いがあります。メイクをした自分を他人に見せるのには心理的な抵抗があり、人目を気にしながらメイク男子になっているわけです。
お客さん目線になる重要性
マーケティングでは、こうした行動と心理を1人の人間として理解することが大事です。
相手の言動や考え、価値観に共感し、自分もお客さんと同じような言葉づかいや思考、ものの見方ができるようになると、お客さんに憑依するような棲み込んだ状態になれます。これがお客さん目線になるということです。
メイク男子の葛藤に寄り添うマーケティング
では、前半でご紹介した 「メイク男子の複雑なオトコ心」 に話をつなげます。メイク男子の葛藤にはマーケティングはどんな貢献ができるでしょうか?
最後にこの問いについて考えてみましょう。
男性が持つメイクへの内なる葛藤やプレッシャーを和らげる役割を果たすために、次のようなアプローチがあります。
- メイクの仕方を覚えられるコンテンツの提供。さりげないメイク術など、バレにくいコツを伝授する。上級者へは本格的なメイクにも挑戦できるレクチャーも用意。自分に合ったスタイルを見つけてもらう
- 実際のメイク男子の声やエピソードを紹介し、「自分だけでなく、他にも同じような悩みを持つ人がいる」 と思ってもらう。化粧をするハードルを下げ、メイクをした自分が人前に出る抵抗感を和らげる
- メイクは 「女性だけのものではない」 というメッセージを企業やブランドから打ち出し、多様な価値観を尊重する文化醸成を促進していく。Thought leadership を発揮する
※ Thought leadership とは特定の課題やテーマに対して、企業や個人が解決策となりうる 「主張, 思い, 理念など (= ソートThought) 」 を掲げ、社会や人々からの共感と評判を生み出すこと
メイク男子が抱く 「複雑なオトコ心」 に対して、マーケティングからの多角的なアプローチで照れや不安、ストレスの解消に貢献できます。
お客さんへの深い理解があり、地道な関係構築が大切です。お客さんからの信用があり心理的な受け入れ態勢ができていれば、自社商品の訴求にも目を向けてもらえます。
まとめ
今回はメイク男子の事例を取り上げ、学べることを見てきました。
最後に学びのポイントをまとめておきます。
- 人は必ずしも合理的な判断から決断をしたり行動をするわけではない。理想と現実に悩んだり、建前と本音の両面から、複雑な心理と行動がある
- マーケティングでは、こうした行動と心理を1人の人間として理解することが大事。お客さんに憑依するような棲み込んだ状態になるお客さん目線を目指すといい
- 地道なお客さんへの理解と関係構築から企業やブランドとしての信用があれぱ、自社商品の訴求にも目を向けてもらえる
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