今回は ｢新しい現実｣ と、そこから生まれる ｢新しい問題｣ に目を向け、他にはない解決策から価値をつくる方法を事例から解説します。
商業施設に設置された屋内砂場を取り上げ、この砂場が新たに何の問題を解決し、どのような価値をもたらしているのでしょうか？
ぜひ一緒に学びを深めていきましょう。
商業施設内の屋内砂場
出典: 日経
商業施設内につくられた ｢屋内砂場｣ が人気を呼んでいます。フロアの一角に消毒された砂を敷き詰めた子ども向けの遊戯設備です。
たとえばパルコが運営する横浜の商業施設 ｢カトレヤプラザ伊勢佐木｣ の3階 ｢ラテスト･グリーン｣ の屋内に設置された砂場です。広さは75平方メートルで、抗菌済みの砂のホワイトサンドを使用し、スコップや小型のすべり台などの遊具もあります。子どもは30分500円で遊ぶことができ、大人の入場料は600円です。
白い砂の上を裸足になった子どもが楽しそうに砂のお山をつくり、母親がその様子を写真撮影するといった微笑ましいシーンが見られます。
1歳の子どもと遊んだ横浜市の女性 (31) は ｢まだ公園の砂場デビュー前。公園の砂は口に入れるのが心配だが、ここはきれいなので安心｣ と笑顔で話す。
1日30 ~ 50組が訪れ、SNS (交流サイト) への写真の投稿も多い。パルコの担当者は ｢地域の人が集まれる場所をつくりたかった。『暑い日や雨の日でも遊ばせられる』と好評だ｣ と話す。
学べること
では商業施設の中に設置された屋内砂場から、学べることを掘り下げていきましょう。
マーケティングを進める上で大事なのは、以下の流れで価値をつくっていくことです。
- 生活者環境や生活者の中で新しく起こっている変化や現実を直視する
- 新しい現実の中で生まれている新しい問題を発見する
- その問題への解決策をつくる
- 解決することで他にはない独自の価値を提供する
ではこの順番で屋内砂場を当てはめて見ていきましょう。
新しい現実
マーケティングを考える上で、まず現実に起こっているトレンドやお客さんの行動、価値観の変化に目を向けることが重要です。
ご紹介した屋内の砂場の事例では、子育て環境はより安全で快適な遊びの場を求める傾向が強まっています。
コロナの影響もあり収束後も衛生面への意識が高くなりました。また、日本の夏の暑さは年々厳しくなっているように感じられ、公園での砂場遊びは直射日光にさらされ熱中症のリスクがあります。子どもを外で遊ばせる際に、親は以前よりも心配な点が増えているのが新しい現実です。
新しい問題
次に、新しい現実になったことで生まれる ｢新しい問題｣ を明らかにします。
今回の場合は、公園の砂場では砂が衛生的でないかもしれないという不安、夏場では子どもが熱中症になる危険性があります。また、雨など天候が良くない日には外で遊べません。
さらに、子どもが安全で楽しく遊べる場所は限られることもあり、保護者が子どもを外で遊ばすときの制約が増えている状況です。
子どもを家の中以外で遊ばせたいものの、適切な遊び場が近くにはないという新しい問題が起こっています。
解決策と提供価値
問題が明確になったら解決策を考えます。
商業施設内に設置された砂場は、新しい問題への解決策として機能します。衛生面での安全性に加え、天候に左右されない快適性があります。
屋内砂場はさまざまな遊具やプロジェクションマッピングもあるので、屋外の公園にはないエンターテインメント体験を提供しています。親にとっては、商業施設で砂場で遊んだ前後に、ついでに買い物もできるという便利性もあり、全体として高い価値を親子に提供しています。
* * *
以上のように、新しい現実とその問題を明確にし、解決策を通じて独自の価値を提供することがビジネスを成功させるカギです。
多くの業界や問題に対しても汎用性のあるアプローチです。
まとめ
今回は商業施設内の屋内砂場を取り上げ、学べることを見てきました。
最後に学びのポイントとして、問題設定から価値提供までの流れです。
- 生活者環境や生活者の中で新しく起こっている変化や現実を直視する
- 新しい現実の中で生まれている新しい問題を発見する
- その問題への解決策をつくる
- 解決することで他にはない独自の価値をお客さんに提供する
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