投稿日 2023/11/28

2D ケーキに学ぶ、逆張りとランチェスター戦略

#マーケティング #逆張り戦略 #一点集中

新しい製品やサービスで差異化するのが難しくなっている状況で、どうすればお客さんの心をつかめるのでしょうか?

今回は、ユニークな 2D ケーキの事例から 「逆張り戦略」 について掘り下げていきます。資本力が限られている状況で、新しい突破口を開く戦略を紐解きます。

イラストにしか見えない 2D ケーキ


出典: 日経

 「2D ケーキ」 が話題を集めています。

2D ケーキとは、人の錯覚をうまく利用したケーキです。実際は3次元 (3D) の物体のはずなのに、なぜか2次元 (2D) のイラストのように見えますよね。上の写真は本物のケーキですが、絵に描いたイラストケーキにしか見えない実物なんです。

お客さんの反応


2D ケーキを提供するカフェでは、お客さんの前に 2D ケーキが置かれると写真撮影が始まります。

席から立ちあがり、真上から撮ったり、1メートルも離れてかがんで撮ったりです。どの角度から写真を撮れば一番 2D っぽくなるか、お客さんはスマホのカメラを構えて試行錯誤し、だまし絵感覚なケーキを楽しんでいます。

実物は奥行きのある 3D なのに、なぜケーキが平面に見えるのかですが、マンガに通じるところがあります。

マンガでははっきりとした黒線でキャラクターや物体の輪郭を描きます。2D ケーキも同じようにケーキを太い黒い線で縁取ることで、視覚的にマンガの表現に近くなり、平面のように見えるわけです。

出典: 日経

店内全体が 2D のケーキ屋さん


東京のカフェ 「2D Cafe 新大久保」 では、2D ケーキだけでなく、お店の中も 2D デザインになっています。商品と店舗が 2D で統一されています。


2019年にオープンしたこちらのカフェは、白いイスやテーブル、壁まで黒線で縁取り、店内全体が 2D に見えます。2D ケーキは新たな目玉として今年2023年2月に発売されました。週末は200個から300個、平日は100個が夕方ごろには完売になることが多いそうです。


学べること


では 2D ケーキの事例から、学べることを掘り下げていきましょう。

テーマとして 「逆張りの戦略」 に学びがあります。

逆張りの戦略


コンピューターグラフィックでは 3D の表現がますます豊かになっています。世の中の大きな流れは、VR や AR などの仮想デジタル空間もよりリアルに、あるいは現実以上の迫力が再現される方向に向かっていくトレンドです。

VR やメタバースの技術が全盛になっていく時代において人気を呼んでいる 2D ケーキは、逆張りの戦略と捉えられるところにおもしろさがあります。

逆張り戦略とは、市場や業界の主流に対してあえて逆の方向に進む戦略です。

たとえば、高速化や大容量化が一般的な中で遅さや小ささを特徴としたり、テクノロジーが進化する中でアナログの要素を入れた商品にするなどです。

他には、安い商品が多数を占め 「安かろう悪かろう」 というイメージを多くの人が持っている状況で、高価格でも高品質なものを提供する逆張りもあります。

逆張り戦略が有効なケース


では逆張り戦略が有効なのは、どういったケースなのかを考えてみましょう。

すでに市場が飽和しており、多くの提供者が存在し差異化が難しい場合です。他社と同じような今までのアプローチではなく、逆に振ってみると突破口が見出だせるでしょう。

また、お客さん側に目を向けると、お客さんやユーザーが高機能や高価格に付いていけていない状態で逆張りは有効です。お客さんが求めるニーズ以上の高い機能性、多すぎる選択肢があると、お客さんは対応できず宝の持ち腐れになってしまいます。

こうした状況において、シンプルなほうに舵を切った商品・サービスはお客さんの心を捉えることができます。

ランチェスター戦略と逆張り戦略


ところで、ランチェスター戦略という戦略理論があります。

ランチェスター戦略をビジネスに適用すると、企業を 「弱者」 と 「強者」 に分類し、弱者と強者のそれぞれにあった戦い方で事業拡大を目指す戦略です (弱者の戦略と強者の戦略の2つがある) 。

弱者である相対的に資源 (資本, 人員, 技術など) が少ないプレイヤーが取るべきアプローチは、一点集中での戦略です。集中するのは、ターゲットとなるお客さんや利用シーン、ニーズ、展開エリアや販売チャネル、価格帯、販売時間帯です。

このように、お客さんとマーケティング 4P において対象を絞るのがマーケティングの観点での弱者の戦略です。大手企業とは異なる逆張り戦略と見ることができます。

メインストリートに対して逆の方向に展開することで差異化を図るわけです。資本が少ないからこそ、狭くても厚く対応できる範囲で逆張りをし一点集中で資源を投下すれば、その領域では少資本の会社や個人の生きる道ができます。

逆張り戦略は資源が限られた状況で有効な戦い方です。


まとめ


今回は 2D ケーキを取り上げ、戦略やマーケティングに学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

  • マーケティングや商品開発で新しい突破口を見つけたいなら 「逆張り戦略」 が1つの解。逆張りの戦略は市場が飽和している状況や、お客さんが高機能・高価格についていけていない状況などで効果的

  • 資本が限られる企業や組織にはランチェスター戦略の1つ 「弱者の戦い方」 が有効。お客さんやマーケティング 4P において一点集中で絞り、強者にはできない戦い方をしよう


マーケティングレターのご紹介


マーケティングのニュースレターを配信しています。


気になる商品や新サービスを取り上げ、開発背景やヒット理由を掘り下げることでマーケティングや戦略を学べるレターです。

マーケティングのことがおもしろいと思えて、すぐに活かせる学びを毎週お届けします。

レターの文字数はこのブログの 3 ~ 4 倍くらいで、その分だけ深く掘り下げています。ブログの内容をいいなと思っていただいた方にはレターもきっとおもしろく読めると思います (過去のレターもこちらから見られます) 。

こちらから無料登録をしていただくとマーケティングレターが週1回で届きます。もし違うなと感じたらすぐ解約いただいて OK です。ぜひレターも登録して読んでみてください!

最新記事

Podcast

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

ブログ以外にマーケティングレターを毎週1万字で配信しています。音声配信は Podcast, Spotify, Amazon music, stand.fm からどうぞ。

名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。