投稿日 2023/11/18

Dole 野菜バナナに学ぶ、新しい価値提案からのお客さんの心をつかむ方法

#マーケティング #価値提案 #パーセプションチェンジ

今回は、Dole のマーケティングを取り上げます。

お客さんからの価値イメージを180度変え、既存のお客さんからの購入量を増やし、新規のお客さんも獲得する秘訣を紐解きます。

ぜひ一緒に学んでいきましょう。

Dole バナナのリブランディング


青果大手の Dole (ドール) のリブランディングがおもしろいです。

ドールは、「もったいないバナナプロジェクト」 という、規格外のバナナをジュースや加工食品にすることを積極的に展開してきました。

そこに新しく、熟成加工していない緑色の状態のバナナを 「Dole グリーンバナナ」 として新発売しました。

この取り組みは 「バナナの野菜化」 です。

生産地で規格外となり、熟成加工をしていない緑の状態のバナナを 「MOTTAINAI (もったいない) バナナ」 ブランドで、野菜として販売しようというものです。これが 「バナナの野菜化」 で、バナナをデザートやお菓子、さらには料理の食材にも使ってもらうことを狙っています。

グリーンバナナを具材に使ったカレーライス (出典: 日経クロストレンド

グリーンバナナは生の状態では食べられませんが、栄養素は通常の黄色いバナナと大きく変わらないとのことです。

風味や香りはほとんどないので、サラダやカレー、味噌汁などの具材として使えることをドールは訴求しています。野菜バナナから、食品ロス削減によるエシカル、さらに収益の安定化を目指します。


学べること


ではドールの 「バナナの野菜化」 から、学べることを掘り下げていきましょう。

今回の事例は 「パーセプションチェンジ」 に学びがあります。

パーセプションチェンジとは?


パーセプションの日本語訳は認識や知覚で、マーケティングの文脈では 「価値イメージ」 です。

パーセプションチェンジとは、商品やサービスへの価値イメージ、こんな価値があるというお客さんから価値認識を変えることを指します。

バナナのパーセプションチェンジ


野菜バナナに当てはめてみると、ドールは消費者のバナナへの価値イメージ (パーセプション) を変えようとしています。

一般的には、バナナは果物としてデザートやスムージーなどで消費されます。しかし、ドールは 「MOTTAINAI バナナ」 と銘打ち、グリーンバナナという野菜として提案しました。

これにより消費者のバナナへの認識が変わります。栄養面では黄色いバナナとほぼ同じで、風味や香りは控えめなので、さまざまな料理に適していることを知ります。サラダやカレー、味噌汁などの食事の具材にバナナが使えるという価値イメージが新たにつくられるでしょう。

バナナの利用シーンが広がり、食品ロスも減らせるというエシカルな側面での気づきも生まれます。

売場での見せ方


とはいえ、消費者の価値イメージを新しくつくるのは簡単ではありません。

バナナに当てはめると、グリーンバナナを野菜として手にとってもらうためには、キャンペーンや広告などでのコミュニケーションだけではない働きかけが必要になります。

ドールは、グリーンバナナをスーパーなどのバナナ売場ではなく野菜売場に並べてもらい、野菜として提案しています。自社だけではなく、お客さんがバナナを買う場所である小売とともにパーセプションチェンジを狙っているわけです。

お客さんが気づいていない価値の提案


では最後にドールの事例からの学びを一般化してみましょう。

商品・サービスの新しい利用用途や使うことでの価値イメージを知ってもらうことで、既存のお客さんの使用量や購入量が増えたり、新規のお客さんが買ってくれることも期待できます。

そのためには、お客さんからの商品やサービスへの認識や価値イメージを新しく書き換えるというパーセプションチェンジが重要です。

価値提案には、お客さんがまだ気づいていない商品の魅力を発掘し、その魅力を効果的に伝えることがポイントです。たとえば店頭での POP からのレシピ紹介、ウェブサイトや SNS での発信も有効です。

決して無理強いするのではなく、お客さんが新しい使い方や価値イメージを知って、「使いたい」 「買いたい」 と思ってもらえる工夫が大事です。

既存商品であってもこうしたアプローチをとることで、市場でのポジショニングを変え、価値を新しく生み出すことができます。


まとめ


今回はドールの 「バナナの野菜化」 というリブランディング事例から、学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

  • パーセプションチェンジとは、商品やサービスへの価値イメージ、こんな価値があるというお客さんから価値認識を変えること

  • 価値提案は、お客さんがまだ気づいていない商品の魅力を発掘し、効果的に伝えるといい。お客さんに新しい使い方や価値イメージを知ってもらい、買いたい気持ちをつくる

  • 商品の新しい価値や利用用途を知ってもらうことで、既存顧客の利用や購入量が増えたり、新規顧客の獲得が期待できる


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。