投稿日 2024/03/24

広告のセイリエンスとは?消費者の 「買いたい気持ち」 をつくる方法

#マーケティング #広告 #セイリエンス

広告は、消費者の心にどのような影響を与え、それが購買行動にどう結びつくのでしょうか?

今回は、広告を 「セイリエンス (思い出しやすさ) 」 という切り口から掘り下げます。

広告の役割を新たな視点から見直すことで、広告がどのように消費者の購買心理に影響を与えるかを紐解きます。

広告の2つの考え方


Strong Theory と Weak Theory


消費者の広告への捉え方と広告の位置づけについて、次のような2つの考え方があります。

✓ [考え方 1] Strong Theory
  • 現代の消費者は情報感度が高く、ブランドを慎重に見定めて自分向けの商品を選ぶ。よって、広告も説得や理解促進がメインとなる
  • 無関心な人に新しい情報や気づきを与えたり、ブランドに対する評価を変えたりして、購買動機を形成することが広告な主な役割
  • 広告により、これまで買わなかった人が買うようになり、顧客のロイヤルティを向上させる効果も期待できる

✓ [考え方 2] Weak Theory
  • 消費者はこれまでの経験や情報・知識にもとづく判断基準を1人ひとりが持っているので、広告を見て広告に説得されたりはしない
  • ブランド選択はそれまでに培ってきた価値観、習慣やライフスタイルによるところが大きい。ブランドを理解した上で買うというよりも、その時に思いついたブランドを買うほうが実態に即している
  • 従って広告の役割は、既存顧客のプレファレンス (好意度) の維持や購買後の印象や記憶の強化、リマインドなどがメインになる

広告は 「説得」 か 「セイリエンス (思い出しやすさ) 」 か?


Strong Theory の広告は説得を狙います。

それに対して Weak Theory では、広告では説得ではなくという思い出しやすさ、すなわちブランドに関する記憶や連想をリフレッシュすることで購入するシチュエーションでに想起されやすくすることを重視します。

Weak Theory のキーワードはセイリエンス (Salience) でずが、セイリエンスとは 「突出性」 や 「顕著性」 を意味する言葉です。セイリエンスをブランドの文脈で捉えると、ブランドの 「思い出しやすさ」 や 「心の中の存在感」 のようなニュアンスを持っています。


広告の役割


セイリエンス視点での広告の役割


ここからは、広告をセイリエンスの視点で捉えていきます。

セイリエンスを前提した広告の役割とは、広告を消費者が 「自分なりの買う理由」 を思いつくための機会やきっかけを提供することです。広告を見ることで、消費者それぞれが買う理由や意味合いを思い出したり、つくってもらうわけです。

売り手が広告によっては消費者に特定の商品やサービスを説得するのではなく、広告を見たお客さんが顧客文脈で自分自身で意味づけをし、購買動機をつくるきっかけを提供するのです。

広告は自分で意味合いを見出だせるきっかけ


セイリエンスのアプローチでは、広告は売り手側の視点で 「買うべき理由」 を提示するのではなく、消費者がブランドとの関連性を自由に解釈できるようにします。

広告を見てブランドを思い出したときに、消費者が好きな連想と結びつけられ、消費者がブランドに自由に意味づけできることが大事です。広告は購買動機を生むトリガーとして機能し、具体的な購入理由や買うことへの正当化は消費者に委ねられます。

そのために大事なのは、広告には消費者が自らの理由をつくるための 「余白」 があることです。


マーケターの役割


マーケターが注力するべきは、その広告を消費者が見たときに何が起こるか、どんな気持ちになるかを読み解き、その心理が行動にどう影響するかの 「消費者の心理と行動の連鎖反応」 を予測することです。

ここから逆算して広告の役割を決めるといいでしょう。

広告を消費者に買ってもらうことの説得材料に使うのか (Strong Theory) 、それとも商品と消費者との意味づけや関係性を提案するところまでにとどめ、買う理由は自由につくってもらうのか (Weak Theory) 。唯一の正解ではなく、スタンスをどっちにとるかです。

広告は単に商品を売るための伝達手段ではなく、商品とお客さんとの関係性を築く起点となります。想定するお客さんがどんな価値観を持っていて、求めていることや奥にある望みは何かの捉え方などの文脈があって、その顧客文脈に合ったときに広告はその役割を果たすのです。


まとめ


今回は、広告について 「Strong Theory」 と 「Weak Theory」 という2つのアプローチを取り上げ、比較をして考察しました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • Strong Theory では広告は消費者を説得し、新しいお客さんを獲得し顧客のロイヤルティを向上させる役割を担うと捉える。Weak Theory では、広告は既存顧客の好意度維持、リマインドや記憶強化に焦点を当てる

  • Weak Theory に重きを置けば、広告は単なる説得手段ではなく、ブランドのセイリエンス (思い出しやすさ) を高め、広告を見た人が自分なりの購買理由を見つけるきっかけを提供する

  • マーケターは広告が消費者に与える影響を相手の文脈に沿って理解し、その心理が行動にどう影響するかを予測し、広告の役割を定めるといい


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。