投稿日 2024/03/10

野球だけじゃない!エスコンフィールド HOKKAIDO が切り開く、マーケットの外にいる新しい顧客獲得への道

画像はイメージです

#マーケティング #新規顧客獲得 #顧客文脈と価値提案

北海道のエスコンフィールドが、野球ファンだけでなく新しい顧客層を獲得し、来場者数を大きく伸ばしました。

今回は、新しいお客さんを増やす秘訣をイベントやエンタメ、スポーツビジネスから探ります。ぜひ一緒に学びを深めていきましょう。

北海道の F ビレッジ



エスコンフィールド HOKKAIDO


2023年3月に、北海道北広島市に北海道日本ハムファイターズの新球場 「エスコンフィールド HOKKAIDO」 (以下エスコン) が開業しました。この新球場を含む複合施設 「北海道ボールパーク F ビレッジ」 (以下 F ビレッジ) が、北広島市を盛り上げています。

新球場のエスコンにはスタジアムを見渡せる飲食店エリア 「七つ星横丁」 をはじめ、サウナ施設やアスレチックなどが出店しています。野球観戦だけではない様々な施設や楽しみが用意され、開業した2023年3月から11月末までの来場者数は340万人に達しました (参考記事) 。

エスコンで特徴的なのは、来場者全体の 40% は 「試合がない日」 の来場者であることです。エスコンにはプロ野球シーズンを問わず1年間にわたって、常に来てもらえる工夫が随所に施されています。

たとえば野球の試合以外の日には、外野を無料で開放しています。ふらっと立ち寄った人が、球場の中で芝生の香りを感じながら、食事やビールを楽しめるような体験をもたらしています。

年間を通して各種イベントを開催


年中さまざまなイベントを実施していることも、F ビレッジならではの取り組みです。

ゴールデンウィーク期間中 (2023年5月3日 ~ 4日) には地元の札幌テレビ放送と組み、大型イベント 「F ビレッジへ GO!GO! 祭り」 を開催し、2日間で総入場者数は7万3516人を記録しました。他にも、全国各地のパン店が出店した 「パンのフェス 2023 in 北海道」 や 「ビアフェスティバル」 などを開催し、多くの来場者が訪れました。

開業以前の目標として 「年間来場者数300万人」 、「そのうち、試合がない日100万人」 を目指していましたが、開業から9ヶ月時点で目標を上回る数字をたたき出しています (参考記事) 。

来場者の滞在時間


F ビレッジへの来場者の数に加えて、注目したいのは来場者がエスコンに滞在する時間が長いことです (参考記事) 。

一般的な野球観戦では、試合のある3時間程度しかスタジアムに滞在しない人が多いでしょう。しかし、エスコンの来場者は滞在時間が長いことが特徴的です。スタジアム内で早めの昼食を取り、午後に試合を観戦、そこから夜もエスコン内で飲んでから帰るという人も多いようです。

家族連れの来場者にとっても、さまざまな要素が1ヶ所に集まっているのはうれしいことです。試合観戦後、そのまま食事や別のアクティビティを楽しめることで、移動の手間が省けます。

エスコン側の想定以上に、たくさんの人たちに朝から晩まで1日中楽しんでいただいているとのことです。


新規顧客の獲得


北海道の新球場 「エスコン」 の事例は、マーケティングの観点から見ても示唆に富みます。従来の野球ファンのマーケット (市場) を超えて、新しい顧客層を獲得した成功例だからです。

従来の球場は野球観戦を主な来場目的としていましたが、エスコンでは野球ファン以外にも魅力的な施設やサービスをいくつも用意し、新たな顧客層を呼び込みました。

未顧客の理解


エスコンは、これまでの 「マーケットの外にいる見込み顧客」 に目を向け、従来のやり方とは異なる新しいアプローチをとったわけです。

具体的には、野球観戦だけでなく、飲食店エリア、サウナ施設、アスレチックなど、さまざまな楽しみを提供しています。これまで球場に足を運ばなかった人々も、エスコンに魅力を感じるようになったことでしょう。

ここで重要なのは、エスコンがただ施設を増やしただけではなく、今までは野球場には来たことがない未顧客層が持つ以下の要素に配慮したことにあります。

  • 置かれた状況: 野球観戦に関心がない、または限定的な興味しか持っていなかった
  • 望んでいること: 多様なレジャー活動を通じての新しい体験
  • 他のレジャーへの隠れた不満: 単一のアクティビティに限定されてしまうことへの不満
  • 価値観: 多様な体験と利便性を重視する

こうした視点から多角的に未顧客のことを理解したわけです。

未顧客理解からの価値提案


エスコンのアプローチは、これらの未顧客層のニーズを理解し、未顧客の心理・価値観に合わせた施設の再構築と価値訴求をとりました。

具体的には、野球の試合がない日にも球場を無料で開放し、食事や飲食を楽しめるようにすることで、訪れる人々に新たな体験機会をもたらしています。

また、ゴールデンウィーク中などのイベント開催は、従来の野球ファンだけでなく、地域住民や観光客も引き付ける内容でした。エスコンは単なる球場から、地域の魅力的なレジャースポットへと存在意義を再定義したのです。


学びの汎用化


新しいお客さんを獲得し増やすためには、従来のアプローチとは異なる取り組みが求められます。

顧客理解


そのためには、これまではスコープ外にいた未顧客層に目を向け、一からの理解からです。

彼ら・彼女らが何を求めているのか、どのような価値観を持っているのかを深く理解することが不可欠なのです。

顧客理解に沿って、自社商品やブランドについてこれまでとは異なる角度から見つめ直し、未顧客の文脈で再解釈することが重要です。

顧客文脈に合わせた価値の再定義


その上で、見出した新しい顧客文脈に合わせた価値提案や訴求を行うことが大事です。

このプロセスは未顧客層が何に価値を見出し、どのような体験を求めているのかを把握し、それを満たすような価値を提案することを意味します。

新しいお客さんに対する提案によって、それを相手が魅力だと思えば結果的にお客さんになってもらえます。新規顧客が増えることで、ビジネスの成長につながのです。


まとめ


今回は、北海道の F ビレッジにある球場 「エスコンフィールド HOKKAIDO」 を取り上げ、学べることを見てきました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • エスコンの事例は、野球ファンを超えた新しい顧客層を呼び込んだ成功例。エスコンのアプローチは新規顧客獲得に示唆がある

  • これまではマーケットの外にいた未顧客層に注目し、未顧客の文脈にフィットするような野球以外の多様なレジャーを提供することで、新たな価値創出によって来場者数を増やした

  • お客さんを増やすためには、これまでスコープの外にいた未顧客の顧客ニーズや価値観までを理解する。顧客文脈に合った価値を再定義し、未顧客文脈に合った顧客体験価値をつくることが大事


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。