投稿日 2024/03/02

桃鉄と Google の共通点に学ぶ、戦略的マネジメント術 - 70 : 20 : 10 の法則

#マーケティング #ゲーム #挑戦

新しいプロジェクトや商品の戦略を立てる際、どのようにすれば効果的なリソース配分になるでしょうか?

ゲームの桃太郎電鉄と Google のプロジェクトマネジメントには、おもしろい共通点がありました。

今回は、桃鉄と Google の方法をマーケティングや個人のキャリアに応用する方法を解説します。

桃鉄の新シリーズの変更点



1988年に初代の作品を発売した 「桃太郎電鉄」 は、今も根強い人気を誇っています。

販売元のコナミによれば、2020年発売の前作の 「桃太郎電鉄 ~昭和 平成 令和も定番!」 の2023年7月までの累計販売本数が、400万本を突破したとのことです (パッケージ版とダウンロード版 / リリースはこちら) 。

2023年11月には最新作の 「桃太郎電鉄ワールド ~地球は希望でまわってる!~」 が発売されました。

ゲームの 「桃鉄」 の生みの親である、さくまあきら氏と、初代からシリーズ制作に携わる監督の桝田 (ますだ) 省治氏が、桃鉄のシリーズを新しく出すことについて、興味深いことを言っていました。

―― 前作のサブタイトルは 「昭和 平成 令和も定番! 」 でした。あえて 「定番」 と打ち出す狙いは何ですか。

さくま氏 「意識してきたのは、取扱説明書がいらないゲームです。ルールがわかりにくいと、みんな途中でやめてしまいますよね」 

桝田氏 「タイトルは僕が付けました。『定番』という言葉には安心感があります。(新作の制作時に) さくまさんがよく言うのは、7 ~ 8割は前作と一緒にしようと。1割は大きく変え、2割くらいはちょっとしたセリフやテンポの変更です」 

桃鉄が新しくシリーズ作品を作る際の変更点、おもしろいですね。7 ~ 8割は前作と一緒にし、1割は大きく変え、2割くらいはちょっとしたセリフやテンポの変更であると。

この話につながるのは、Google の プロジェクトリソース配分の考え方です。


Google のプロジェクトリソース配分


Google には経験則から導かれたプロジェクトのリソース配分があり、次のように3つに分けます。

  • コアビジネス: 70%
  • 成長プロダクト: 20%
  • 新規プロジェクト: 10%

詳しくは、How Google Works - 私たちの働き方とマネジメント という本から引用します。


2002年の時点で、グーグルはまだプロジェクトを重要な順に並べた 「トップ100リスト」 をもとに、リソースの配分やプロジェクトのポートフォリオを決めていた。

だが成長にともなって、このシンプルな仕組みではスケールすることが難しいという懸念が強まった。忌まわしき 「ノー」 の文化 (引用者注: 新しい挑戦に保守的になり No を言う社風) がじわじわと広がるのではないかという不安もあった。

そこである日の午後、セルゲイ (引用者注: Google の共同創業者) はトップ100リストを見直し、プロジェクトを三つのグループに振り分けた。

プロジェクトのほぼ 70% はコアビジネスである検索と検索連動型広告に関するもので、約 20% が成功の兆しが見えはじめた成長プロジェクト、残りの約 10% が失敗のリスクは高いが、成功すれば大きなリターンが見込めるまったく新しい取り組みだった。

それを叩き台に長い議論を重ねた結果、「70対20対10」 をリソース配分のルールにするという結論に達した。リソースの 70% をコアビジネスに、20% を成長プロダクトに、10% を新規プロジェクトに充てるのである。

桃鉄と Google から学べること


桃鉄の最新作への変更点の割合、そして Google のプロジェクトマネジメントを整理すると、次のようになります。

✓ 桃鉄の新シリーズの変更点
  • 前作と一緒: 70%
  • ちょっとしたセリフやテンポの変更: 20%
  • 大きく変える: 10%

✓ Google のプロジェクトリソース配分
  • コアビジネス: 70%
  • 成長プロダクト: 20%
  • 新規プロジェクト: 10%

では共通点から、学べることを掘り下げていきましょう。

挑戦することへの時間配分


これから挑戦したりチャレンジをするときに、同じような配分を目安にするといいでしょう。

✓ 挑戦することへの時間配分
  • 70% は今までやってきたメインの活動 [コアビジネス]
  • 20% は少しズラした新しいこと (既存活動に関連するもの) [成長プロダクト]
  • 10% は全く新しいこと [新規プロジェクト]

新しく何かをやることに、自分のリソースの 30% を使ってみます。

たとえば、自由に使える時間が3時間あるとしたら、1時間くらいが新しい行動です。さらに1時間の中も2つに分け、少しズラした新しいことは40分、全く新しい挑戦は20分です。

新しいことは3割にとどめるという考え方は、リスクを少しずつとることです。一気に大きなリスクはとらず、最大でも 30% 、最低でも 10% は新しいチャレンジに使うというアプローチです。

定番商品と限定商品のバランス


70 : 20 : 10 の配分方法は、他にも応用できます。

例えば商品ラインナップです。

まず大きく3つに分類すると、

✓ 商品の3つの分類
  • 定番商品 (売上の大半を占めるもの) 
  • 季節ごとに毎年出す商品
  • 売り切れ御免の短期間での限定商品

桃鉄では新しいシリーズ作においては 7 ~ 8 割は変更しない、また、Google のプロジェクトマネジメントでのリソース配分は、コアビジネスに 70% を使うというものでした。

変更しない点やコアビジネスとは、先ほどの商品の3つの分類では 「定番商品」 とみなせます。そうすると、定番商品と限定商品の割合を次のようにするというのが桃鉄や Google からの示唆です。

✓ 定番と限定商品のバランス
  • 定番商品: 70% [コアビジネス]
  • 季節ごとに毎年出す商品: 20% [成長プロダクト]
  • 短期間での限定商品: 10% [新規プロジェクト]

定番商品に比べて、新鮮さや話題性を出しやすいのは限定商品でしょう。

限定商品に力を入れたくなりますが、大事なのは定番商品です。一般的に全体の売上に占める貢献が高いからです。

限定商品に注力するのは前提として定番商品の力を強くしてからがいいでしょう。定番商品を強化し、新鮮さや話題性がある新商品も出していくという順番です。

自分の 「定番商品」 を強化しよう


もう1つ最後に、さらに着想を広げると、個人のレベルでも学びがあります。

自分の専門スキルや能力において 「定番商品に当てはまるものは何か」 という視点です。あるいは、今やっている仕事や持っているタスクの中で 「コアビジネスはどれか」 です。

桃鉄が新しいシリーズ制作で変更点は3割程度にし残りは変えないように、また Google がリソース配分で 70% をコアビジネスに充てているように、「自分にとっての定番商品」 に注力できているでしょうか?

自分の定番商品は何かをぜひ棚卸ししてみるといいです。キャリアや取り組む仕事で新しい視点が得られるはずです。

自分の 「定番商品」 には意識して時間やエネルギーを注ぎ、磨いているか。これをあなたへの問いかけとして残しておきます。


まとめ


今回は桃鉄と Google の話から、共通点に学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

  • リソース配分: 桃鉄の新シリーズ制作と Google のプロジェクトリソース管理には 70 : 20 : 10 の配分をする共通点がある

  • ビジネスへの応用: 商品ラインナップに応用すると、定番商品に重点を置き 70% 、季節ごとに毎年出す商品が 20% 、短期間での限定商品を 10% とする

  • 個人のキャリア: 個人のレベルでも挑戦することへの時間配分に活用できる。70% は今までやってきたメインの活動、20% は少しズラした新しいこと (既存活動に関連するもの) 、10% は全く新しい挑戦


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。