投稿日 2024/03/13

その瞬間を見流すな!AI が拓く “One to Moment” マーケティング

#マーケティング #マイクロモーメント #AI

消費者がスマートフォンを手にした瞬間、何を求めているのでしょうか?

人が 「知りたい」 「何かをしたい」 と思ってスマホを使った瞬間がチャンスです。

今回は、AI も活用することで1人ひとりの消費者の行動と心理を汲み取り、マーケティングの効果を高める方法を探ります。

マイクロモーメントとマーケティング


何かを調べたいと思ったときに、まず何をしますか?手元のスマホから検索をするでしょうか?

これこそが 「マイクロモーメント」 です。その瞬間がビジネスチャンスに変わります。

マイクロモーメントとは


マイクロモーメントとは、人が 「何かをしたい」 と思ったときに、反射的にスマートフォンやタブレットなどから検索をする瞬間 (モーメント) のことです。

スマートフォンの普及がもたらした消費者行動に対し、適切なタイミングで生活者に接する重要性を示す概念で、Google が提唱しました (Google による日本語での解説記事はこちら, 英語版はこちら) 。 

4つのタイプ


Google はマイクロモーメントを4つのタイプに分類しました (詳細はこちらの Google の PDF) 。

  1. 知りたい I‐want‐to‐know moments
    人との会話やテレビを見ている中で、知りたい情報や新しい知識を得るために検索をする瞬間

  2. 行きたい I‐want‐to‐go moments
    たとえば食事をするために近くの飲食店を検索したり、何かを購入するために周辺のお店を検索する瞬間

  3. したい I‐want‐to‐do moments
    自宅で料理をするとき、本棚を DIY で作りたい、流行りのメイク方法をやってみたいと思ったときに、その方法を求めて検索する瞬間

  4. 買いたい I‐want‐to‐buy moments
    何かを買いたいと思ったときに、商品やサービスのことを調べたり、口コミやレビューを検索する瞬間

生活者はこれらの瞬間 (モーメント) に情報を求め、ブランドや製品を選択しそのまま購入にまで至ることもあります。

なぜマイクロモーメントは重要なのか


マイクロモーメントが重要な理由は、生活者の購買行動が変化し、従来のマーケティング手法だけでは効果的にマーケティングや販売ができなくなっているからです。

スマートフォンの普及により、生活者はいつでもどこでも情報にアクセスし、必要な情報を得たり買い物をすることが可能になりました。こうした生活者の行動や習慣、それによって生まれるニーズに対し、企業などの事業者はそのタイミングで生活者が必要とする情報やサービスを提供することが求められます。

マイクロモーメントは、生活者を理解し、適切なタイミングで自社製品やサービスの情報を伝えるためのビジネス機会となるのです。


One to Moment マーケティング


実際問題として、1人ひとりのマイクロモーメントに沿ったコミュニケーションをすることに限界があったのも事実です。

マイクロモーメントマーケティングの課題


個々のお客さんのモーメントを捉えようとすると、対応すべきシナリオの数は膨大になります。

マスマーケティングやセグメントマーケティングであれば人の手で対応できるでしょう。しかし、One to One マーケティング、さらには "One to Moment" マーケティングというレベルになると、もはや追いつけない粒度になってしまいます。

従来のアプローチでは、1人ひとりのマイクロモーメントに合わせたコミュニケーションを行うのは、理想論に近いものでした。

AI で解決される未来


マイクロモーメントを捉えるマーケティングのために、これからは AI の有効活用がカギになります。

以下の図をご覧ください。右側のレベル 4 が 「ワン・トゥ・モーメント」 です。


生成 AI を活用することで、膨大な数のクリエイティブを効率的に制作できるようになります。これにより、お客さん1人ひとりのマイクロモーメントに合わせた高度にパーソナライズされた広告配信ができます。

たとえば、ビールの宣伝をするときに、暑い日の日中と休日の夜では消費者のニーズ、心理状態やモードが異なるため、訴求する広告クリエイティブはそれぞれのモーメントに合わせたものが望ましいでしょう。

消費者が 「欲しい」 と思ったその瞬間 (モーメント) を捉えて、適切な広告クリエイティブで訴求できれば、態度変容を促し、購入につながりやすくなります。値引きなどインセンティブの必要性が減ることで、利益率の向上も期待できます。

AI の活用により、従来のマーケティング手法では簡単ではなかったマイクロモーメントに合わせたきめ細かいコミュニケーションが実現し、マーケティングの効率と効果を同時に高めることができるでしょう。


まとめ


今回は、Google が提唱した消費者行動理論のマイクロモーメントを取り上げ、AI を有効活用することでマイクロモーメントをビジネスチャンスにする方法を考察しました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • マイクロモーメントは、人が 「何かをしたい」 と思ったときに、反射的にスマートフォンなどから検索をする瞬間 (モーメント) のこと。知りたい、行きたい、したい、買いたいなどのモーメントがビジネスチャンスになる

  • 従来のマーケティング手法では、個々の消費者のモーメントに細かく対応するのは簡単ではなかった。しかし AI により、お客さんのマイクロモーメントに合わせ、高度にパーソナライズされたマーケティングコミュニケーションが可能になり、One to Moment マーケティングが期待できる


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。