投稿日 2024/03/31

サントリー烏龍茶。定番商品の 「そう言えば最近買ってない」 問題を解決する変化と継続のバランス

#マーケティング #定番商品 #価値訴求

市場は常に変化し、ブランドに愛着を持っていたお客さん (ロイヤルティ顧客) もいずれ離れていくかもしれません。

たとえ定番商品やロングセラーであっても何もせずにいると、その魅力や価値も徐々に薄れてしまうでしょう。

今回はサントリーの烏龍茶の事例から、定番商品をどのように見直し、再活性化させるか、その具体的な方法を紐解きます。

サントリー烏龍茶


サントリーの烏龍茶は1981年に発売されたロングセラー飲料です。

販売量のピークは2000年初頭で、その後はダウントレンドでした。2001年の出荷量は5700万ケースでしたが、その頃から色々なお茶系の飲料が登場したことが要因となり、2021年には2000万ケースを割り込むまでに減少しました (参考記事) 。

しかし2022年からサントリーは烏龍茶の原点に戻り、そもそものところに立ち返ります。

試行錯誤を通して 「このお茶は何をしてくれるのか」 「何を目的に飲むのか」 という点がぼやけていたことに気付いたという。

サントリー烏龍茶を消費者はどう認識していたのか。同社が調査したところ、「過去に飲んだことはあるが、最近飲んだのがいつか思い出せない」 といった回答が多かったという。日常的に選ぶお茶の選択肢から外れていた。

一方、ずっと烏龍茶を飲んでいる人にその理由を聞くと 「健康」 を挙げた。そこで、健康面に改めてフォーカスすることに。烏龍茶の成分であるポリフェノールに注目して調べたところ、「おなかの脂肪を減らす」 と訴求できることが分かった。

22年7月、同社は 「サントリー烏龍茶 OTPP」 を発売。ウーロン茶重合ポリフェノールの働きでおなかの脂肪を減らす機能性表示食品として新たに打ち出した。ちなみに、商品の中身は変えていない。

こうしたリニューアルの効果もあり、22年の出荷量は前年比 1% 増、23年の1 ~ 10月は前年同期比 5% 増となった (黒烏龍茶は除く) 。

学べること


ではサントリーの烏龍茶から、学べることを掘り下げていきましょう。

サントリー烏龍茶から学べるのは、定番商品への適切なテコ入れをする重要性です。

定番商品の衰退可能性


一般論として抑えておきたいポイントは、どんなブランドにも離反してしまうお客さんやユーザーは一定数で存在するということです。

離反と同等以上の新しいお客さんが入ってくる新陳代謝が起こればいいのですが、流入より流出が多くなれば人気に陰りが出ます。たとえ定番商品やロングセラーであっても、何もやらないままでは衰退してしまう可能性があるわけです。

活性化と全体方針


定番商品は全体に占める売上の割合が大きいので、定番商品にこそ継続的な取り組みを続け、お客さんへの適度な刺激を与え、活性化させることが必要です。

長年愛されてきたロングセラー商品であっても、市場の変化や消費者の嗜好の移り変わりに適応していくことが求められます。

そこで大事になるのは、「変えないこと」 と 「変えること」 の線引きです。変えないことを中心に据えて、それ以外は変えていくという全体の戦略方針です。

烏龍茶の原点回帰と新しい訴求軸


ここでサントリーの烏龍茶に話をつなげると、烏龍茶の場合は、原点回帰から発売当初から烏龍茶の軸になっていた 「健康」 にあらためてフォーカスしました。

具体的には、烏龍茶のポリフェノールの含有量に注目し、健康意識の高まりに応える形で 「健康に良いお茶」 「おなかの脂肪を減らす」 というベネフィットの訴求を強化したのです。


注目したいのは、これらの期待できる効能のために新たに出した 「サントリー烏龍茶 OTPP」 は、パッケージや商品名は新しいものの、中身のお茶は従来の烏龍茶と変わっていないということです。

コンセプトやパッケージから、これまでは光を当てきれていなかった健康訴求をあらためて強調したわけです。

マーケティングの役割


サントリーの烏龍茶の事例からは、マーケティングの役割が見えてきます。

マーケティングの役割は、必要性訴求や価値訴求によってお客さんから 「欲しい」 「買いたい」 と思ってもらうことです。

新商品ではないからこそ、いやむしろ、長くある定番商品だからこそマーケティングの役割は大きくなります。

  • お客さんの取り巻く環境やトレンドの変化を察知する
  • その新しい状況下において、お客さんが魅力に思うであろう商品からの提供価値を見出す
  • 発掘したり、新たに捉え直した提供価値をお客さんの文脈に沿って訴求し、お客さんからの買いたい気持ちをつくっていく

ここにマーケターの果たす役割があります。


まとめ


今回はサントリーの烏龍茶の事例を取り上げ、学べることを見てきました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • どんなブランドにも離反してしまうお客さんは一定数で存在する。たとえ定番商品やロングセラー商品であっても、何もやらないままでは衰退してしまう可能性がある

  • 定番商品は全体に占める売上の割合が大きいため、定番商品にこそ継続的な取り組みを続け、活性化させることが必要。大事なのは、「変えないこと」 と 「変えること」 の見極め。変えないことを中心に据えて、それ以外は変えていく

  • マーケティングの役割は、顧客環境やトレンド変化を察知し、その状況下においてお客さんが魅力に思うであろう商品からの提供価値を見出すこと。そしてお客さんの文脈に合わせた価値を定義して訴求することで、お客さんからの買いたいという気持ちをつくる


マーケティングレターのご紹介


マーケティングのニュースレターを配信しています。


気になる商品や新サービスを取り上げ、開発背景やヒット理由を掘り下げることでマーケティングや戦略を学べるレターです。

マーケティングのことがおもしろいと思えて、すぐに活かせる学びを毎週お届けします。

レターの文字数はこのブログの 3 ~ 4 倍くらいで、その分だけ深く掘り下げています。ブログの内容をいいなと思っていただいた方にはレターもきっとおもしろく読めると思います (過去のレターもこちらから見られます) 。

こちらから登録をしていただくとマーケティングレターが週1回で届きます。もし違うなと感じたらすぐ解約いただいて OK です。ぜひレターも登録して読んでみてください!

最新記事

Podcast

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

ブログ以外にマーケティングレターを毎週1万字で配信しています。音声配信は Podcast, Spotify, Amazon music, stand.fm からどうぞ。

名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。