投稿日 2024/03/29

順番が大事。あなたの商品が選ばれる POP と POD とは?

#マーケティング #POP #POD

今回のキーワードは 「POP」 と 「POD」 です。

市場における 「入場券」 とも言える POP の必要性と、他とは違う独自の魅力となる POD の打ち出し方を見ていきます。

ぜひ一緒にマーケティングへの学びを深めていきましょう。

POP と POD


出典: MarkeZine

基本要素と差異化要素


マーケティングには、POP と POD という考え方があります。

  • POP (Points of Parity) : カテゴリーにおいて、商品やサービスが最低限で満たすべき基本要素。他社には "負けない" こと
  • POD (Points of Difference) : 自社商品・サービスの差異化になり他とは違うユニークな価値になり得る要素。他社に "勝てる" こと

POP (Points of Parity) は、あるカテゴリーにおいて商品やサービスが最低限として満たすべき基本的な要素を指します。POP は自社だけではなく競合も同じように満たすものです。

POP はお客さんがそのカテゴリーの商品を買うかどうかを考えるときに必須の条件となります。例えば、自動車であれば安全性、食品であれば味が POP に該当します。

一方の POD (Points of Difference) は自社商品を競合から差異化する要素です。その商品が市場においてユニークな特徴を持ち、お客さんにとって独自の価値になるのでお客さんから自社商品が選ばれる理由となります。

たとえば、他には決してないほどの高コスパ、高い技術に裏打ちされた使いやすさ、自分好みに合わせたカスタマイズ性です。

POP があって初めて POD が活きる


POP はカテゴリーに参入するための 「入場券」 のようなものです。

例えば、ネット通販サービスの手数料の 「安さ」 、食品では 「おいしさ」 という基本的な要求を満たさなければ、そもそも人はそのサービスや商品を買うかどうかの選択肢に入れることはないでしょう。

こうした基本的な要求である POP が満たされて初めて、POD という価値の差異化要素に目を向けてもらえます。しかし、少なくないケースにおいて、POP を満たしているかの前に、差別化を追求しようとする傾向があります。

マーケティングで見落としがちなこと


POP が備わっていなければ商品やサービスは市場に受け入れられることはないでしょう。よって、マーケティングでは商品やサービスがそのカテゴリーで絶対的に求められるレベル、つまり POP を満たすかどうかの見極めが重要になります。

POP が確立された上で、POD をつくっていくことが大事であり、POP が10点満点中2点や1点の状態で独自性だけを際立たせようとしても、商品全体ではバランスを欠きます。結局はお客さんから選ばれにくいものとなってしまいます。

マーケティングでは 「差異化」 に重点を置きがちですが、その前に土台にあるべき POP を見落さないように注意が必要です。POP があっての POD ということは忘れてはいけません。


カフェデライトの POP と POD


ではここまで見てきた POP と POD について理解をさらに深めるために、具体的なビジネスのケースに当てはめてみます。

ある架空のカフェ 「カフェデライト」 を例に、先に POP を満たし、他にはない独自性を打ち出し POD を達成するという POP と POD の関係性を見てみましょう。

POP (Points of Parity) 


 「カフェデライト」 は、新しい街に店舗を構えたばかりのカフェ店です。

この街には既に複数のカフェのお店があり、それぞれが特色を打ち出し固定のお客さんがいます。この状況で 「カフェデライト」 は、どのようにして参入し、お客さんからの支持を得ることができるのでしょうか。

まず、カフェというカテゴリーで考えたときの POP は、「おいしいコーヒーを提供する」 ということです。どんなにカフェ店内のインテリアがおしゃれであっても、コーヒーがおいしくなければカフェとしての価値は感じてもらえません。

そこで 「カフェデライト」 は、コーヒーの品質のためにこだわりの豆を選定し、焙煎方法やバリスタの技術を高め、他のカフェと同等か、理想はそれ以上の品質を持つコーヒーを提供することを目指します。これにより、カフェとしての最低限の条件である POP を満たすことができました。

POD (Points of Difference) 


では次に、他にはない独自性となる POD を打ち出すために 「カフェデライト」 は何をするといいのでしょうか。

カフェデライトは、来店したお客さんが自らのブレンドを作ることができる 「カスタムブレンドコーヒー体験」 を導入しました。

来店客は自分の好みに応じて異なる種類のコーヒー豆を選び、自分だけのオリジナルブレンドを作ることができます。この体験は、コーヒーをカフェで飲むという体験の中でも特に印象的で記憶に残るものとなり、カフェデライトの POD として機能しました。

また、カフェデライトは地域社会に貢献するカフェであることを目指し、近隣の地元農園と提携して新鮮な食材を使用したメニューを提供することにしました。社会的責任を果たすという存在意義も人々に訴求します。

他のカフェ店はここまではやっていなかったのでカフェデライトの POD となり、カフェとしての独自のポジショニングを確立する要因になりました。

POP を土台に POD をつくる


カフェデライトはカフェ店としての企業努力を続けた結果、お客さんは品質の高いコーヒー (POP) に満足し、さらにカスタムブレンドの体験や地域社会への貢献 (POD) に魅力を感じるようになりました。他のカフェにはないこれらの要素が、コーヒー好きの人々が 「カフェデライトを選ぶ理由」 となったのです。

このように、カフェデライトは POP をしっかりと満たした上で、POD を通じて独自の体験価値をつくり出したことにより、競争のあるカフェ市場で独自の存在感を発揮することができました。

マーケティングを行う際には、この話のようにお客さんが最初に求める基本的な価値である POP を満たし、その上で独自の価値となる POD を加えることが大切です。


まとめ


今回はマーケティングの概念である POP と POD についてでした。

最後にポイントをまとめておきます。

  • POP (Points of Parity) : そのカテゴリーにおいて、商品やサービスが最低限で満たすべき基本要素

  • POD (Points of Difference) : 自社商品・サービスの差異化になり他とは違うユニークな価値になり得る要素

  • POP はカテゴリー参入への入場券のようなもの。POP というお客さんからの最低限の要求を満たし、その上で POD からの独自の価値をつくり商品が選ばれる理由をつくる


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。