#マーケティング #需要 #AI

AI で記事や SNS 投稿を簡単につくれるようになった今、同じようなコンテンツの中に埋もれず、読まれるものをどうつくるか――。

大事なのは、相手が今どんな状況にいて、何を実現したいのかまで捉えることです。

今回は、最近よく届くいかにも AI 生成っぽい営業メールを例に、需要の解像度を高める見方と、そこに AI をどう使えばいいのかを紹介します。営業、提案などのビジネスシーン、他には X への投稿や記事作成、人に何かを伝える際にも応用できる考え方です。

AI でコンテンツの供給が増えている

私は事業戦略やマーケティング、マーケティングリサーチの支援をする会社を運営しています。

AI で機械的につくったような営業メールが増えた

最近、会社の問い合わせフォームに、明らかに AI で機械的につくったように見える営業メールが以前より目立つようになりました。

会社の Web サイトを読み取った形跡はあります。「マーケティング」「事業戦略」「マーケティングリサーチ」といったうちの会社の事業内容が文章に入り、一応は相手企業に合わせようとしています。

ただ、私の状況やニーズと合っていません。なので、こうした営業メールはすべてスルーです。

直近では 2 通、わかりやすい例がありました。

1 通は法人向け生成 AI サービス、もう 1 通はランサムウェア対策などを扱うセキュリティサービスの営業です。

生成 AI サービスのメールには、こんな文章がありました。

マーケティングコンサルティング、事業戦略コンサルティング、マーケティングリサーチなどのコンサルティング業界において、生成AIの活用は急務とされつつも、実際に検討を進めるといくつかの「壁」に直面する企業様が少なくありません。

続いて、

全員にアカウントを渡すとコストが膨大になりませんか?
導入しても、プロンプトを作れる一部の社員しか使わないのでは?

といった課題が並んでいました。

別の問い合わせのセキュリティサービスのメールは、こんな始まりでした。

もし明日、貴社のシステムがランサムウェアに感染し、すべてのデータが暗号化されてしまったら、すぐに事業を復旧できる体制は整っているでしょうか。

さらに、

マーケティングコンサルティング、事業戦略コンサルティング、マーケティングリサーチなどを行われているコンサルティング業界において独自のポジションを築かれている貴社にとって、この問いに対する備えこそが、企業価値を守る最後の砦となります。

と続けられていました。

AI を使った営業メールの典型例に見えます。

Web サイトに書かれている情報を拾い、相手に合わせた文章をつくるところまではできています。私が生成 AI の全社導入に困っているわけでも、セキュリティサービスを探しているわけでもありません。

メールには会社の属性や事業内容は入っていますが、私が今どんな状況にいて、何を実現したいのかまでは捉えられていません。メールの文面は、自社向けの提案には全然見えませんでした。

AI でコンテンツをつくるハードルは劇的に下がった

生成 AI を使えば、営業メールを短時間で大量につくれます。

相手企業の Web サイトを読み、事業内容を把握し、会社ごとに文章を書き分ける。以前なら人が時間をかけていた作業も、かなり短時間で進められます。

問い合わせの新規営業メール以外でも同じです。

商品説明、提案資料、広告、メルマガ、さらには X への投稿、長文記事など、さまざまなコンテンツをつくる負担が AI によって大きく下がりました。

世の中に出てくるコンテンツの量は、これからさらに増えていくでしょう。

供給が増えるほど、需要との適合度が重要になる

確かに AI によりコンテンツをつくる量は増やせます。これが意味するのは、供給は充実するということです。

しかし、受け手が使える時間や向けられる関心には限りがあります。つまり見たり読む時間という「需要」はそう簡単には増えません。

営業メールが 10 倍に増えても、商談したい会社の数まで 10 倍になるわけではありません。X の投稿が 10 倍になっても、読む人の 1 日は 24 時間のままです。

供給が増えれば、一つひとつのコンテンツは埋もれやすくなります。

AI を使えば、読みやすく整った文章も多くの人がつくれます。一定水準の文章をつくれることの希少性は、これからさらに下がっていくはずです。

そこで重要になるのが、需要との適合度です。

需要を見るときには、 2 つの面があります。量と質です。

■ どれくらい多くの人が求めているか (需要の量)

テーマや商品を求める人がどの程度いるのかという、「需要の量」です。

対象となる人が少なければ、良いコンテンツをつくっても広がる範囲は限られます。

■ その人が今、本当に求めているか (需要の質)

もう 1 つは「需要の質」です。

その人が今、本当に知りたいのか。読みたいのか。解決したいのか。商品であれば、お金を払って使いたいと思うほど必要としているのか。

今回の営業メールで扱われていた法人向け生成 AI やセキュリティ対策には、世の中に一定の需要があるでしょう。

私に刺さらなかった理由は、そして多くの人も刺さらないと思いますが、今の自分が求めているものと全くと言っていいほど合っていなかったからです。

需要の解像度を高める

その人の「今」を見る

今回の営業メールは、 Web サイトから会社についての情報を拾っていました。

  • コンサルティング会社
  • マーケティング
  • 事業戦略
  • マーケティングリサーチ

こうした情報は、相手がどんな会社なのかを知る手がかりにはなります。

ただ、人が求めるものは、置かれている状況によって変わります。

同じマーケターでも、新商品の企画を考える人と、既存商品の売上が伸びずに困っている人では、知りたいことが違います。同じ人でも、仕事の状況が変われば求めるものは変わるわけです。

需要をしっかりと見るときには、次の 3 つを順番に考えるとわかりやすいです。

  • その人は今、どんな状況にいるのか
  • その状況で、何を実現したいのか
  • 実現するために、商品やコンテンツにどんな役割を期待するのか

たとえば、「マーケティングに興味がある人向けの記事」では、まだ相手の姿がぼんやりしています。

「AI を使って記事を書く量は増えたが、思うように読まれず、何をすればいいのかわからない人」とすると、その人が今いる状況が見えてきます。

さらに、「AI を使いながら、読者が読みたいと思えるコンテンツをつくれるようになりたい」と捉えれば、より状況が具体的になります。

必要なのは AI ツールの機能紹介なのか、テーマの選び方なのか、読者を理解する方法なのか。相手が実現したいことが見えると、相手への理解が進みます。

AI は、需要を深く考えるためにこそ使いたい

AI には、文章をつくる力だけでなく、相手について仮説を広げたり深めたりすることにも使えます。

たとえば、

  • 相手は今、どんな状況にいる可能性があるか
  • なぜ、その状況になったのか
  • そこで何を実現したいのか
  • 今はどんな方法で対処しているのか
  • どこで困っているのか
  • 自分の商品やコンテンツには、どんな役割が期待されるのか

と AI に問いながら、相手についての仮説を掘り下げます。

最初に返ってきた答えが一般論なら、具体的な状況を追加し、仮説の根拠を訊き、別の可能性も出してもらいます。

AI に文章を書かせる時間だけを増やすより、相手が何を求めているのかを考えるために AI を使うといいです。

AI でコンテンツの供給量が爆発的に増えるほど、需要の解像度が価値を左右します。

相手が今どんな状況にいて、何を実現したいのか。
その前進に、自分の商品やコンテンツがどう役立てるのか。

AI でつくれる時代ほど、 AI を使って需要を深く読むことが大事になります。

まとめ

  • AI によりコンテンツをつくるハードルが下がり、世の中に供給される量はさらに増えていく
  • 供給が増えるほど、需要の量と質を見ながら、相手が本当に求めるものに合わせる重要性が高まる
  • 需要の解像度を上げるために、相手が置かれた状況と実現したいことを捉え、AI も使いながら需要の解像度を高める